研究課題/領域番号 |
23K06170
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47040:薬理学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
上窪 裕二 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80509670)
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研究分担者 |
石田 良典 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (10937684)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | GPCR / 膜タンパク質 / 超複合体 / シナプス / シグナル伝達 / Gタンパク質共役型受容体 / ライブセルイメージング / 神経変性疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、GPCRが形成する超複合体を人為的に操作する手法を確立し、その動態と機能を網羅的に解析することで神経伝達における役割の解明と操作を目的とする。本研究では以下の4つの目標を達成することで超複合体の実態を明らかにする。 (1) 超複合体を標識し操作ができる低~中分子化合物を複数種類の方法で作製する。 (2) 作製した化合物を用いて超複合体の時空間ダイナミクスを解明する。 (3) 超複合体を作製した化合物を用いて操作し、そのシグナル伝達機構を網羅的に解析する。 (4) 超複合体による神経伝達の調節機構の解明と操作を行う。
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研究実績の概要 |
本研究は、細胞膜受容体であるGタンパク質共役型受容体(GPCR)が細胞膜上で形成する巨大な複合体(超複合体)を人為的に操作し、超複合体の機能や動態を解明することを目指すものである。 単一分子を標的とする従来の手法では、膜タンパク質同士の超複合体の実態を明らかにすることは非常に困難である。そこで本研究では、超複合体を特異的に認識し、人為的に操作できる新奇の分子マニピュレータの作製を試みた。 報告者はこれまでに、2種類のアプローチでGPCR超複合体を認識し、操作できる分子マニピュレータの作製を目指してきた。1種類目の分子マニピュレータは、DNAライブラリから選別と増幅を行い作製したアプタマー型分子マニピュレータである。標的GPCR単体または超複合体を誘導発現する細胞株を作製し、その細胞を用いてDNAアプタマーライブラリから約100種類のクローンを選別した。さらに生理活性を利用した選別とPCRによる増幅を繰り返した結果、数種類のDNAアプタマーを選出した。その中から最も有望であると思われるクローンを選出し、GPCR結合能、生理活性などをライブセル・イメージングによって評価を行った。 もう1種類の分子マニピュレータは、特定のタンパク質に共有結合するリガンドを組み合わせて合成した共有結合型分子マニピュレータである。2種類の共有結合リガンドを特定の長さのリンカーでつないだ分子マニピュレータを合成し評価を行ったところ、超複合体を構成する各GPCRと融合したタグタンパク質を特異的に認識することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、細胞膜上で形成されるGPCR超複合体の分子動態と生理機能を明らかにすることを目的としている。該当年度においては、標的となるGPCR単体もしくは複合体を認識する分子マニピュレータの作製を実施した。DNAアプタマー型の分子マニピュレータは、生理活性による選別とPCRによる増幅を繰り返し、有望な約100クローンを選出した。選出したクローンのDNA配列の確認を行った。作製したDNAアプタマー型の分子マニピュレータのうち、単体GPCRを標的としたものでは従来の作動薬と同程度の生理活性を持つ可能性が示唆されたため、ライブセル・イメージングによる詳細な解析を進めている。GPCR超複合体を認識するDNAアプタマー型分子マニピュレータは、細胞上の標的を認識することをライブセル・イメージングによって確認しており、細胞を用いた生理活性の解析を進めている。 共有結合型の分子マニピュレータは有機合成が完了し、細胞を用いた評価を行った。標的とするGPCR超複合体を構成するGPCRと融合した各タグを認識し標識化することが確認された。一方、超複合体の標識化や生理活性については未確認のままである。 GPCR超複合体を認識する分子マニピュレータの作製は遅れているが、GPCR単体を認識し生理活性を示す分子マニピュレータが作製できたため全体としては順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに作製した分子マニピュレータの評価と改良を行い、標的GPCR超複合体の標識と人為的な操作を目指す。 GPCR単体を標的として作製したアプタマー型のマニピュレータは、既存薬と同等以上のアゴニスト活性を示す可能性が示された。そこで、候補マニピュレータの生理活性についてより詳細な評価を行う。培養細胞を用いた生理活性の評価は、三量体Gタンパク質によるシグナル伝達の評価を行う。三量体Gタンパク質を介したGPCRシグナル伝達は、細胞内のカルシウムイオンまたは環状アデノシン一リン酸(cAMP)の濃度変化を引き起こすため、それぞれをライブセル・イメージングによって評価する。さらに、下流のシグナル伝達については、免疫ブロット法やELISA法によって網羅的に解析する。本研究では神経伝達に関わるGPCRを標的としているため、初代培養神経細胞を用いた評価を行う。さらに、分子マニピュレータの生理機能については野生型マウスに投与し、行動解析を行うことで評価する。 超複合体を認識するアプタマー型マニピュレータは、超複合体の構成要素を操作した細胞で解析を実施し、特異性や生理機能について評価を進める。さらに、神経組織中での超複合体の分布について組織学的な評価を行う。さらに単体GPCRを認識するDNAアプタマーを組み合わせることでGPCR超複合体を認識する人工抗体型分子マニピュレータの作製を目指す。 共有結合型分子マニピュレータは、超複合体を共有結合によってクロスリンクできているか否かについて評価を行う。さらに、共有結合リガンド間のリンカーの長さの異なる分子マニピュレータを作製し評価を行う。
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