研究課題/領域番号 |
23K06187
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47050:環境および天然医薬資源学関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
羽田 紀康 東京理科大学, 薬学部薬学科, 教授 (70296531)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 漢方薬 / 生薬間相互作用 / 補中益気湯 / 陳皮 / ヘスペリジン / 当帰 / リグスチリド / 生薬 / 煎じ液 / 配合意義 / 相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
漢方薬は長い使用経験を基に医薬品として用いられてきており、その効果が臨床的には確認されてはいるものの、多成分系であるが故に新薬で解明されているような薬効に関する作用メカニズムは未知な点が多い。本研究は漢方薬の有効性が複数の成分の協同作用という観点に着目し、漢方薬を構成する生薬を一緒に煎じる事で起こりうる成分量の変化を明らかにすることで、品質管理や有効性に新たな知見を加える事を目標としている。
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研究実績の概要 |
漢方薬は複数の生薬の組み合わせで成り立っており、煎じる過程で生薬間相互作用が生じ、それが薬効に影響を及ぼしている可能性がある。そのため、生薬間相互作用を成分レベルで解明することは、品質管理の指標や生薬間の協力作用の科学的根拠に繋がると考えられる。 本研究では補中益気湯の構成生薬の1つである陳皮成分に着目した。先行実験において補中益気湯を煎じる過程で、陳皮成分の1つであるヘスペリジンの抽出量が増加する事を見出しており、この現象について精査した。その結果、陳皮単独で煎じたヘスペリジンの抽出量と比較して補中益気湯の構成生薬9種を陳皮とそれぞれ一緒に煎じることでヘスペリジンの抽出量が増大し、特に蒼朮と黄耆は一緒に煎じることで3倍程度ヘスペリジンの抽出量を増大させていることを突き止めた。一方、当帰に含まれるリグスチリドの成分変動にも着目した。当帰と任意の26種の生薬と1:1の割合で煎じてリグスチリドの抽出量変化率を、定量TLCを用いて評価し、1.5倍以上変化率を増加させた組み合わせについて、HPLCにて再度精査した。その結果、山梔子、黄ゴン、黄連、陳皮、黄柏との組み合わせにおいてリグスチリドの抽出効率を1.5倍以上増加させ、特に山梔子は2.5倍以上の増加率を有することを明らかにした。また、当帰芍薬散構成生薬を一緒に煎じてもリグスチリドの抽出量は増加しないが、山梔子、黄ゴン、黄連、黄柏を含む温清飲では約1.4倍と二味の組み合わせほどではないが、増加させることを見出した。さらに、当帰芍薬散でリグスチリドの抽出量を増加させない理由として、構成生薬の1つである茯苓がリグスチリドの抽出量を減少させていることも見出した。これは当帰と茯苓の二味の煎じでリグスチリドの抽出効率を減らしていること、及び当帰芍薬散から茯苓を除いた処方を煎じることで、リグスチリドの抽出量が減少しないことにより明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
著者らはこれまでに、複数の生薬を一緒に煎じたエキスと、単味で煎じて得たエキスを混ぜたものを定量TLCでスポットの濃さを比較し、いくつかの生薬成分が煎じる過程において抽出量が増減する事を見出しており、本年度は、補中益気湯構成生薬である陳皮の1つの成分であるヘスペリジンと、当帰の特徴的な成分であるリグスチリドに焦点を当て、HPLCにより、それらの抽出量変化率を求めてきた。その後、これらの成分を増減させる相手の生薬を追求する第一弾の目的は達成され、概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は補中益気湯中を煎じる過程における陳皮含有の他の処方についても精査すると共に、同様の柑橘系生薬である枳実におけるネオヘスペリジンの挙動についても新たに調査する。また、新たに、漢方における駆お血作用の1つのモデルである抗トロンビン活性を指標に治打撲一方中の抗トロンビン活性成分を成分間相互作用の観点から調査する。すなわち、先行実験において治打撲一方の構成生薬7種を二味の組み合わせ21通りについて一緒に煎じて得られたエキス(CFエキス)と、別々に煎じたエキスを後から混ぜたもの(BFエキス)で抗トロンビン活性を比較し、その中でCF/BFで有意に活性差が出たものについて、成分の含量の異なるものの化合物を特定し、抗トロンビン活性の活性本体を追求する。今後、多くの生薬成分で一緒に煎じる事により抽出量に変化を与える成分を追求し、漢方薬の品質管理につなげると共に、漢方薬中での活性成分の役割をより明白に出来ればと考えている。また、学術的には、目標となる変動成分がどのような作用機序で変動するかを解析できれば、化学的な視点で煎じのメカニズムを追求でき大変興味深い。
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