研究課題/領域番号 |
23K06199
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47050:環境および天然医薬資源学関連
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
三巻 祥浩 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (90229790)
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研究分担者 |
松尾 侑希子 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (70434016)
井口 巴樹 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (90847120)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | PARP阻害活性 / 天然物 / 特定外来生物 / ナガエツルノゲイトウ / 構造決定 / トリテルペン / トリテルペン配糖体 / 細胞毒性 / PARP阻害薬シーズ / 抗がん剤 / 特定外来植物 / 併用効果 |
研究開始時の研究の概要 |
天然物からPARPを分子標的とし、プラチナ製剤感受性の膵臓がん細胞や卵巣がん細胞、トリプルネガティブを含む乳がん細胞、前立腺がん細胞に対して細胞死(アポトーシス)を誘導する化合物を網羅的に探索する。 さらに、得られたPARP阻害活性物質と、細胞傷害性抗がん剤であるプラチナ製剤やトポイソメラーゼ阻害薬との併用効果、DNAの修復および細胞周期調節において必須の役割を担っているWee1の阻害薬との併用効果を検討する。 最終的には、マウス移植腫瘍細胞に対するin vivoでの有効性を評価する。 天然資源としては、薬用植物のほか、特定外来植物にも着目して研究を展開する
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研究実績の概要 |
ポリ(アデノシン二リン酸(ADP)-リボース)ポリメラーゼ(PARP)を分子標的とする天然物由来新規抗がん剤シーズ化合物の探索を目的に、特定外来生物に指定されているヒユ科ナガエツルノゲイトウAlternanthera philoxeroides地下部の成分探索を実施した。 ナガエツルノゲイトウ地下部から調製したメタノール抽出エキスについて、順相および逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー、分取逆相高速液体クロマトグラフィーなどの手法を用いて分離・精製を繰り返し行い、新規2種を含む計9種のオレアナン型トリテルペン配糖体、1種のノルオレアナン型トリテルペン、および4種のノルオレアナン型トリテルペン配糖体を単離した。 これらの化学構造を、1次元ならびに2次元核磁気共鳴スペクトルを中心とした各種スペクトル解析、加水分解により明らかにした。単離された化合物のうち、10種の化合物はアグリコン部の3位にβ-D-glucuronopyranosyl基を、28位にβ-D-glucopyranosyl基を有するビスデスモシド型トリテルペン配糖体である。 また、単離された14種の化合物について、SBC-3ヒト小細胞肺がん細胞に対する細胞毒性を評価した結果、4種の化合物がIC50 1.2-16μMの範囲で中程度の細胞毒性を示した。 構造活性相関について考察した結果、3-[(β-D-glucuronopyranosyl)oxy]-30-noroleanane-12,20(29)-dien-28-oic acidを基本骨格とするノルオレアナン型トリテルペン配糖体においては、28位のカルボキシ基がβ-D-glucopyranosyl基に置換されることで腫瘍細胞毒性が大幅に減弱することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、PARPを分子標的とする天然物由来新規抗がん剤シーズ化合物の探索を目的として、ナガエツルノゲイトウ地下部の成分探索を実施した。ナガエツルノゲイトウは高い繁殖力を有するとともに、生態系などへの被害をもたらす可能性があることから、特定外来生物に指定されている。ナガエツルノゲイトウ地下部から調製したメタノール抽出エキスについて、各種クロマトグラフィーを用いて詳細に成分探索を行った結果、新規2種を含む計9種のオレアナン型トリテルペン配糖体、1種のノルオレアナン型トリテルペン、および4種のノルオレアナン型トリテルペン配糖体が単離された。それらの化学構造を、2次元核磁気共鳴スペクトルを中心としたスペクトル解析および加水分解により明らかにした。ナガエツルノゲイトウ地下部から単離された化合物について、SBC-3細胞に対する細胞毒性を評価したところ、研究実績の概要の項で記した結果と構造活性相関に関する若干の知見が得られた。 これまでに当研究室で見い出してきた天然物由来化合物と、ナガエツルノゲイトウ地下部から得られた化合物を基盤とし、PARP阻害活性を評価する化合物ライブラリーの構築が進んでいる。現時点において、PARP阻害活性の評価には至っていないが、当研究室が保有している化合物ライブラリーの各種腫瘍細胞に対する細胞毒性は評価済みである。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、以下の項目について重点的に研究を実施する予定である。 1)市販のキット製品を用いて、PARP阻害活性の評価方法を確立する。使用を予定しているキット製品はELISA法によってPARP阻害活性を評価するものであり、操作の工程が比較的少なく、さらに96ウェルフォーマットのため、ハイスループットスクリーニングに適している。PARP阻害活性の評価手法を確立した後、ナガエツルノゲイトウ地下部から単離された細胞毒性トリテルペン系化合物、ならびに当研究室が保有している細胞毒性ライブラリー化合物について、PARP阻害活性を評価する。 2)当研究室が保有する植物抽出エキス、特定外来生物に指定されている植物抽出エキスについて、PARP阻害活性を評価する。阻害活性が認められた植物については、PARP阻害活性を指標に各種カラムクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィー等を用いてPARP阻害活性化合物の単離を行う。単離された化合物の化学構造を、核磁気共鳴スペクトルを中心とした各種スペクトルの解析により明らかにする。さらに、単離された化合物の細胞毒性とPARP阻害活性を評価するとともに、構造活性相関について考察する。 3)細胞毒性とPARP阻害活性が認められた天然物由来化合物について、既存の抗がん剤との併用効果を検討する。天然物由来化合物と抗がん剤のいずれもが腫瘍細胞に対して細胞毒性を示さない濃度で併用し、単独投与時と併用時の腫瘍細胞の増殖率を比較する。なお、併用効果は、combination indexにより評価する。
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