研究課題/領域番号 |
23K06231
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
山口 浩明 山形大学, 医学部, 教授 (80400373)
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研究分担者 |
千葉 康司 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (30458864)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 薬物乳汁移行 / 安全性 / 母乳育児 |
研究開始時の研究の概要 |
薬物療法を必要とする多くの授乳婦が授乳に対する不安を抱き、授乳を断念するケースが多くみられる。本研究では、乳腺上皮における薬物挙動の解明に加え、乳汁中および乳児血液中の薬物濃度測定、乳汁中への薬物移行シミュレーション解析を実施することで、安全に授乳実施できるためのエビデンスを構築する。本研究により、薬剤服用授乳婦による安全かつ安心な授乳率の向上に貢献できるとともに、添付文書改訂に向けた有用な情報提供につながるものと考える。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、正常ヒト乳腺上皮細胞株MCF12Aにおける精神疾患治療薬の輸送解析と臨床サンプルの測定に向けた薬物定量系の確立を行なった。 まず、正常ヒト乳腺上皮細胞株MCF12Aにおける輸送解析を行うために、経細胞輸送の観察ができる条件を検討した。トランズウェルを用い、培地を含めた種々培養条件、播種する細胞数等について検討したが、上皮膜間電気抵抗値がバリア機能として不十分であることから、継続して条件検討を実施する。プレートに播種した細胞を用いた取り込み実験も並行して実施し、抗うつ薬であるミルタザピンについて評価した。LC-MS/MSにて測定した細胞内ミルタザピン量は、37℃の条件下で4℃での細胞内量に比べ有意に大きく、何らかの薬物トランスポーターの関与が示唆された。 臨床サンプルの測定に向けて、8種の代表的な向うつ薬の一斉定量系の構築を行なっている。イオン化条件、MS/MS条件検討、分析カラムや移動相をはじめとするHPLC条件について精査した。血液サンプルを用い、簡便な前処理法によって良好な直線性と再現性が得られており、母乳サンプル使用時の前処理条件を検討中である。 また、乳汁中薬物濃度推移のシミュレーション解析ならびに授乳の可否を決定するための乳汁中薬物濃度の閾値を設定に向け、市販ソフトウエアを用いて、予測値と実測値の適応性について検討中である。市販ソフトウエアに搭載されている化合物について脂溶性およびpKaなどの物理化学的定数からの予測値と、文献調査により得られた実測値とを比較し、その乖離について情報収集をしている。カフェイン、エストラジオール、ゾルピデムでは実測値は予測値の予測区間を超えた分布を示し、個体間変動を考慮した予測が必要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
正常ヒト乳腺上皮細胞株MCF12Aにおける経細胞輸送解析系の構築に時間を要していること、母乳中濃度測定系に関して、炎症性腸疾患(IBD)治療薬に着手できていない。IBDに用いられるバイオ医薬品については入手済みである。また、臨床検体の収集が計画より少ない状態である。全国規模の学会を主催したこともあり、研究の時間の確保が困難であったことも要因の1つである。これらを総合的に評価し、「遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト乳腺上皮細胞株MCF-12Aを用いた薬物輸送解析を進め、薬物毎に、Km値等のパラメータを算出するとともに、薬物輸送に対する阻害薬感受性から寄与するトランスポーターを絞り込む。代謝物も同時にモニタリングすることで、乳腺上皮細胞における薬物の代謝についても併せて評価する。 臨床検体の測定については、母乳に限らず、母体や乳児の血液・尿等採取可能なサンプルについて、それぞれ測定系を構築し定量する。検体のリクルートについても、研究協力者と都度連絡をとりながら進めていく。 乳汁中薬物濃度推移のシミュレーション解析について、これまでに入手した情報とともに、引き続き既報の生理学的薬物速度論(PBPK)モデルおよび母集団薬物動態(PPK)モデルの情報を収集し、本研究において得られた血漿中薬物濃度データがモデルによる予測範囲内にあるか確認後、血漿中濃度を予測可能な既報モデルを用いて乳汁中濃度推移の予測モデルを構築する。また、細胞実験の結果を参考にM/P比の変動要因を明らかにし、母体由来の薬物および薬物以外の成分による乳汁分泌に対する阻害および誘導効果の予測性についても検討する。 上記の検討結果を、これまでの論文報告等を勘案した、乳児に毒性が生じない安全な濃度としての閾値設定に活用し、授乳の可否を決定するための乳汁中薬物濃度の閾値を設定する。
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