研究課題/領域番号 |
23K06232
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
石田 奈津子 金沢大学, 薬学系, 助教 (70794220)
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研究分担者 |
中村 博幸 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30542253)
荒川 大 金沢大学, 薬学系, 准教授 (40709028)
嶋田 努 金沢大学, 薬学系, 教授 (90409384)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 経皮製剤 / 唾液 / コリン作動薬 / ピロカルピン / 抗コリン薬 / スコポラミン / 副作用 / 流涎 / よだれ / 口腔乾燥症 |
研究開始時の研究の概要 |
唾液は口腔衛生に非常に重要な役割を果たしており,唾液分泌量の減少や過多により生じる口腔乾燥症や流涎症は生活の質の低下につながるため,唾液分泌量を制御する治療が行われる。唾液分泌量の制御には主としてコリン作動性神経に作用する薬剤が使用されるが,吐き気や下痢や便秘,動悸などの全身性副作用のために治療を継続できないことが少なくない。 本研究では,唾液腺上部皮膚に塗布した薬剤が経皮的に唾液腺に局所作用を示すことに着目し,この新たな作用発現経路を持つ製剤である「経皮的唾液腺局所作用型外用剤」による唾液分泌への影響を検証する。
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研究実績の概要 |
我々はこれまでの研究において,院内製剤スコポラミン軟膏の唾液腺近傍皮膚への塗布が効果的に唾液分泌を抑制すること,さらに全身性副作用を軽減しうる可能性を有することを示した。この知見からその他の薬剤でも唾液腺近傍皮膚に塗布することにより同様の効果を得られるのではないかと考えた。そこで,口腔乾燥症治療薬であり,経口薬で発汗や下痢等の全身性副作用が問題となることが多いコリン作動薬のピロカルピンを候補薬とし,ラットを用いてピロカルピンの唾液腺上部皮膚への経皮投与の有効性と安全性の検討を行った。有効性評価では,ピロカルピン軟膏を唾液腺上部皮膚に塗布したラットおよびピロカルピンを経口投与したラットにおいて投与前後に唾液量を測定した。経口投与ラットでは投与後0.5時間で,軟膏塗布ラットでは0.5, 3, 12時間の時点で投与前と比較して唾液量が有意に増加した。したがって,ピロカルピン軟膏は唾液腺上部皮膚に塗布することで唾液分泌を促進させ,その効果は経口投与より持続することが示唆された。これは唾液腺近傍皮膚にピロカルピン軟膏を塗布することにより,唾液腺組織へのピロカルピン移行性が高まり,効率的に唾液分泌を促進したためであると考えられた。一方,安全性検討のため,排便と発汗の評価を実施したところ,経口投与ラットでは投与後1時間において排便量と汗滴数の有意な増加がみられたが,軟膏塗布ラットでは変化はみられなかった。このことからピロカルピンの唾液腺上部皮膚への経皮投与は,経口投与と比較して全身性副作用が少ない可能性が考えられた。 これらのことから,新たな作用発現経路を持つ製剤である「経皮的唾液腺局所作用型外用剤」「経皮的唾液腺局所作用型外用剤」は全身性副作用が少なく,安全性の高い口腔乾燥症や流涎症に対する治療薬となることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究である日本における流涎の有症率や関連因子を調査した臨床研究と院内製剤スコポラミン軟膏に関する基礎研究が2023年度に論文掲載された。 また,スコポラミンとは逆に唾液分泌を促進させるピロカルピンの唾液腺上部皮膚への経皮投与の有効性と安全性に関する研究は現在論文投稿中であり,2024年度に学会発表も予定している。今後はこれらの基礎検討を踏まえて,臨床研究の準備を行っていく予定である。 上記の進捗より,概ね予定通りの進行と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
①臨床で用いられているスコポラミン軟膏は患者に合わせた用量調整が難しいことが問題となっている。したがって,スコポラミン・ピロカルピン両薬剤について,軟膏濃度と薬効・安全性との関連についてin vitroやin vivoで検討を行う。 ②臨床現場においてスコポラミン軟膏を使用している患者において,経時的に唾液および血液を採取する。採取された唾液中および血液中の薬物濃度をLC-MS/MSを用いて測定し,唾液中濃度/血液中濃度比を求める。なお,新規治療開始の場合は治療前後の比較を行う。また,ピロカルピン軟膏について臨床研究を実施するための準備を行う。
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