研究課題/領域番号 |
23K06248
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
渡邊 正知 福山大学, 薬学部, 准教授 (30306203)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | SUMOylation / 虚血再灌流障害 / 血液脳関門 / SUMO化修飾 |
研究開始時の研究の概要 |
脳温下降が脳組織に対して保護的に作用することは明確である。しかし、全身の体温低下は様々な合併症の原因となることから、その臨床応用は限定的である。本研究では、低体温によって誘導されるSUMO (small ubiquitin-related modifiers) 化修飾機構に着目し、血液脳関門の機能制御を介した脳保護作用の分子メカニズムを解明し、虚血再灌流障害の新たな治療法開発に貢献することを目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は、低体温によって誘導されるSUMO化修飾と血液脳関門(blood-brain barrier, BBB)の機能制御の関連性について以下の点を明らかにした。 0、本研究は、低体温誘導SUMO化修飾と虚血再灌流時のBBBの機能制御機構の解明を目的とするため、低体温耐性動物(シリアンハムスター)を用いた一過性両側頸動脈閉塞術(tBCCAO術)による虚血再灌流障害モデルを確立し、以下これを用いて解析した。1、脳内SUMO化修飾レベルは体温低下レベルに依存して亢進する(強い負の相関が認められる)ことを明らかにした。2、tBCCAO術による海馬CA1及びCA3領域における遅発性神経細胞死は、体温を30℃に維持し脳内SUMO化修飾レベルを亢進させると認められないが、SUMO化修飾阻害剤(anacardic acid: E1-SUMO化活性化酵素阻害剤, 2-D08: E2-SUMO結合酵素阻害剤)を併用すると低体温の保護作用が減弱することを明らかにした。3、脳梗塞モデルにおけるBBBの透過性は、虚血時および再灌流後に二相性(第一相: 再灌流3-8時間後, 第二相: 再灌流18-96時間後)に亢進する。低体温は、虚血時や再灌流後第一相のBBBの透過性には影響を与えず、再灌流後第二相の透過性亢進のみを有意に抑制した。さらに、BBBに対する低体温の保護(透過性亢進抑制)作用はSUMO化修飾阻害剤で減弱することが明らかとなった。 これらの知見は、低体温によって誘導されるSUMO化修飾が、BBBの保護機能を介した脳保護作用発現に寄与していることを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究仮説である「脳梗塞後の虚血再灌流障害に対する低体温による神経保護作用は、SUMO化修飾を介したBBBの保護に起因する」ことを、tBCCAOモデルを用いたBBBの機能評価と組織学的評価をもとに、SUMO化修飾阻害剤を用いた薬理学的検討により明らかにすることができた。一方、残念ながらSUMO化標的分子の網羅的同定には至っていないが、SUMO化修飾を介したBBB保護機構に関与する候補分子の一端を見出すことができた。以上より順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
低温によって誘導されるSUMO化修飾を介したBBB保護機構に関与する分子メカニズムを明らかにするために、BBB保護における候補分子の機能解析をするとともに、SUMO化修飾を介した候補分子の発現制御機構を明らかにする。また次年度は、網羅的な低温誘導SUMO化修飾標的分子同定のための持続的な高SUMO化修飾誘導系(低温耐性細胞を用いたin vitro実験系)の確立を目指す。
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