研究課題/領域番号 |
23K06257
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
真川 明将 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (20827670)
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研究分担者 |
家田 直弥 北海道大学, 薬学研究院, 准教授 (00642026)
前田 康博 藤田医科大学, オープンファシリティセンター, 准教授 (60275146)
日比 陽子 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (70295616)
堀田 祐志 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (90637563)
川口 充康 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 准教授 (10735682)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 薬剤性腎障害 / 尿細管上皮細胞 / スーパーオキシド / ミトコンドリア / ケミカルバイオロジー / 腎細胞がん / がん代謝 / 解糖系酵素 / 薬物動態 |
研究開始時の研究の概要 |
がんゲノム医療が推進され、分子標的薬が様々ながんの治療に利用されているが、標的分子への作用から予測できない副作用の報告も散見される。ベムラフェニブはBRAF変異を有する悪性黒色腫の治療薬であったが、がんゲノム医療の推進によりBRAF変異は様々ながん種で検出され、適用が拡大している。その一方で、ベムラフェニブは腎毒性を有することも明らかになってきたが、その詳細な原因は明らかではない。 本研究では、ベムラフェニブを一例として、その腎毒性の発現機序を明らかにすることで、医薬品開発における低分子化合物の腎毒性を予測・回避するために利用可能な情報を得る。
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研究実績の概要 |
2023年度は、ベムラフェニブにO-NBDを結合することでTurn-on型蛍光プローブVEM-NBDを作出した。ヒト近位尿細管上皮細胞(RPTEC)とラットをもちいて、細胞内・腎組織内の動態解析を試みたが、細胞のライブイメージングでは蛍光が検出できなかった。また、ラットではマウスで確認されているベムラフェニブによる腎障害が再現できなかったため、VEM-NBDによる動態解析は困難であると判断した。次に、VEM-NBDをもちいてRPTEC抽出物からベムラフェニブの標的分子の候補を探索した。これまでの研究ではベムラフェニブ結合磁気ビースをもちいて膜/オルガネラ画分のなかに標的候補分子が2つほど挙げられたが、本研究では、細胞質画分にVEM-NBDの結合により蛍光標識された蛋白質のバンドが確認できた。現在、それらの標的分子の候補を質量分析によるプロテオーム解析で同定を進めている。いくつかは解析を終えており、想定していなかった解糖系酵素が標的分子の候補として挙げられた。ベムラフェニブが実際にこの酵素の活性を阻害し、尿細管毒性に関与するかはこれからの検討が必要である。 さらに、電子顕微鏡や蛍光顕微鏡をもちいて細胞内微細構造とその機能に着目して毒性発現機序の解析おこなったところ、ベムラフェニブによりミトコンドリア由来の活性酸素種スーパーオキシドの産生が高まっていることが明らかになった。現在、ミトコンドリア特異的アンチオキシダントをもちいてベムラフェニブによる尿細管毒性にスーパーオキシドが関与するか解析をおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初の計画通り、ベムラフェニブにO-NBDを結合することでTurn-on型蛍光プローブVEM-NBDを作出することができた。このプローブを細胞内動態や腎組織内の動態の解析にもちいることは困難であることも予備検討の結果から明らかになった。その一方で、RPTECの抽出物と直接反応させた場合に蛍光標識された蛋白のバンドがいくつか確認できることからプロテオーム解析による同定に関しては利用可能であると考え、解析を進めている。この点において、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。 その他、電子顕微鏡や蛍光顕微鏡をもちいて細胞内微細構造とその機能に着目して毒性発現機序の解析おこなったところ、ベムラフェニブの尿細管毒性にスーパーオキシドが関与する可能性が見出されたため、この点についても検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究においては、VEM-NBDの結合により蛍光標識された蛋白質のバンドがポリアクリルアミドゲルのなかに複数存在していることを確認した。したがって、質量分析によるプロテオーム解析を継続し、ベムラフェニブの尿細管毒性に関連がある分子を絞りこんでいきたい。 既にプロテオーム解析から同定された標的分子候補の1つに解糖系酵素が挙げられた。尿細管上皮細胞のエネルギー産生は解糖系以外の寄与が大きく、この解糖系酵素の阻害は尿細管上皮細胞において強い細胞毒性を生じるとは考えにくい。しかしながら、この解糖系酵素を阻害した際の尿細管毒性に関する研究はこれまでに報告がないため、この酵素の選択的阻害剤をもちいて毒性評価をおこないたい。 この解糖系酵素は腎臓がん細胞において過剰発現が確認されている。腎細胞がんは尿細管上皮細胞を発生母地としており、今回見出された解糖系酵素の阻害剤は尿細管上皮細胞には毒性が低く、腎細胞がんには毒性が高い可能性もある。したがって、腎細胞がんの細胞における毒性評価についても検討をおこなっていきたい。思いがけず発見したこの解糖系酵素の阻害剤が尿細管毒性とは真逆で、正常な腎細胞に「優しく」・腎がん細胞にとっては「厳しい」という特徴を有する化合物であれば、副作用の少ない腎細胞がんの新規治療薬の開発につながる可能性がある。
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