研究課題/領域番号 |
23K06258
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
湯浅 博昭 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (20191471)
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研究分担者 |
保嶋 智也 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 准教授 (50753555)
山城 貴弘 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 助教 (20826614)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | コリン / トランスポーター / 薬物送達 / 創薬標的 |
研究開始時の研究の概要 |
コリンは多様な生理機能を持つことで知られるが、その腸管吸収等に働くとみられる類縁の2種の新規トランスポーターが見い出された(novel choline transporter 1(NCT1)及びNCT2と仮称)。本研究では、NCT1/2の分子機能の解明のため、遺伝子導入発現系細胞を用いた輸送機能解析等を行う。そのうえで、生理的及び薬物動態的役割の解明の観点から、小腸モデル(ヒト小腸上皮細胞モデル及びラット小腸組織)での機能検証に取組む。さらに、小腸以外での局所動態への関与の可能性を考え、各種臓器細胞モデルでの機能の検証にも取組む。これらにより、関連の医療応用に向けた基盤情報の収集を図る。
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研究実績の概要 |
本研究は、コリン輸送機能が見出された類縁の2種の新規トランスポーター(novel choline transporter 1(NCT1)及びNCT2)について、分子機能と生理的及び薬物動態的役割の解明を目指すものである。なお、NCT1/2は、feline leukemia virus subgroup C receptor 1/2(FLVCR1/2)として知られていたもので、これまで機能未知であった。 遺伝子導入安定発現系MDCKII細胞でのNCT1/2の分子機能の解析において、飽和性輸送の特徴から、NCT1のコリン認識部位(ミカエリス定数(Km)= 4.9 uM)は単一である一方で、NCT2は高親和性(Km = 0.7 uM)及び低親和性(Km = 850 uM)の2種のコリン認識部位を持つことが示唆された。これらは、Km値が大きく異なるため、相互に識別可能とみられる。また、阻害剤感受性に関して、NCT1/2は共に強いエタノールアミン感受性を示す点で、代表的な既知コリントランスポーターで、非感受性であるcholine transporter 1 (CHT1)と大きく異ることが明らかとなった。一方で、CHT1特異的阻害剤として知られるヘミコリニウム-3はNCT1/2に対しても弱い阻害活性を示したが、そのIC50はCHT1に対するIC50の1000倍以上に達していたことから、CHT1との相対比較では、NCT1/2のヘミコリニウム-3感受性は無視できるレベルであるとみられる。 各種臓器細胞モデルでのNCT1/2の機能の評価では、コリン輸送の速度論的特性及びNCT1/2の発現抑制の影響の検討により、HeLa(子宮)、HepG2(肝臓)、A549(肺)、PC-3(前立腺)、MCF-7(乳腺)、HaCaT(皮膚)、T24(膀胱)、DLD-1(結腸)といった各種細胞株でのコリン取込において、NCT1が主要な役割を担っていることが示唆された。また、Caco-2(結腸由来小腸様細胞)においてのみ、NCT1とNCT2が同等レベルで主要なコリントランスポーターとしての役割を担っていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NCT1/2の分子機能の解析を進展させることができた。代表的な既知コリントランスポーターであるCHT1の特性とも比較しながら、速度論的特性及び阻害剤感受性の特徴を把握することができた。 小腸モデル及び各種臓器細胞モデルでのNCT1/2の機能の評価の取組みでは、小腸上皮細胞モデル(Caco-2細胞)において両トランスポーターの関与が大きいとみられる結果が得られ、小腸でのコリン吸収における役割が示唆された。一方、その他の諸臓器由来細胞では、NCT1の役割が主であることが示唆された。 計画に沿って着実に成果を挙げることができており、概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
NCT1/2の分子機能の領域では、引き続き機能調節物質(阻害物質等)の探索を行い、各NCTの機能変動要因として留意を要するもの(生体内因性物質等)、あるいは機能調節剤(阻害剤や活性化剤)の候補の把握に取組む。また、基質探索にも取組む。さらに、基質、阻害物質(非基質)、活性化物質のそれぞれに関して、構造-活性相関的観点から、各NCTによる認識の要件を探る。ラットNCT1/2についても、ヒトの各NCTと比較しながら一連の輸送機能解析等を行い、その特性を確認する。 小腸モデルでのNCT1/2の機能の領域では、引き続き、ヒト小腸上皮細胞モデル(Caco-2細胞)での解析を行い、各NCTの機能・役割の検証に取組む。また、ラット小腸組織での解析も行い、刷子縁膜での腸管腔側からの取込に働くとみられるNCT2の機能を中心に検証に取組む。 各種臓器細胞モデルでのNCT1/2の機能の領域では、両トランスポーターが高発現しているとみられ、神経伝達機能との関わりの点で注目される脳(神経細胞等)でのコリンの局所動態へのNCT1/2の関与の可能性等を探る。
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