研究課題/領域番号 |
23K06262
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
鈴木 小夜 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (90424134)
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研究分担者 |
中村 智徳 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (30251151)
金 倫基 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (00620220)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 移植片対宿主病 / GVHD / 和漢薬 / 桔梗湯 |
研究開始時の研究の概要 |
移植片対宿主病(GVHD)は、造血器悪性腫瘍や血液悪性疾患等に対する同種造血幹細胞移植後に発生する最も重篤な合併症であり、その制御は治療成功に不可欠である。申請者はこれまでに和漢薬・桔梗湯がGVHD発症との関連が注目されているマクロファージの生存・増殖・分極化に影響する可能性を見出している。 本研究では、マクロファージ細胞を用いたin vitro実験、及び急性/慢性GVHDマウスモデルを作製することにより桔梗湯及び抗炎症作用を有する和漢薬によるGVHD抑制効果及び作用機序を明らかにし(in vivo実験)、新規GVHD予防・治療法の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
移植片対宿主病(GVHD)は、造血器悪性腫瘍や血液悪性疾患等に対する唯一の根治療法である同種造血幹細胞移植後の重篤な合併症である。標準一次治療(ステロイド)抵抗性の難治性GVHDは30~70%に及び、重症例は致死的である。ステロイド抵抗性の機序は明確ではない。 我々は、抗炎症作用を有する和漢薬・桔梗湯に着目し、桔梗湯が、近年GVHDとの関連が注目されているマクロファージ細胞の増殖や分極化に影響することを見出しており、本研究課題では、和漢薬・桔梗湯、さらに抗炎症作用を有する他和漢薬(半夏瀉心湯、黄連湯等)のGVHDに対する有効性及び作用機序を解明し、GVHD新規治療法を開発することを目的としている。 初年度の2023年度は、まず和漢薬のGVHDに対する有効性のin vivo評価のための急性/慢性GVHDマウスモデル作製に取り組んだ。同種 (allogeneic)移植群(GVHD発症群)は、レシピエントマウス(BALB/c)にX線照射後、ドナーマウス(急性:C57BL/6、慢性:B10.D2)の骨髄細胞と脾臓細胞を投与して作製し、急性は3週間、慢性は4週間を観察期間として評価する。同系 (syngeneic)移植群(コントロール群)も作製し、臨床所見(GVHD clinical score)、GVHD主要臓器(腸管、皮膚、肝、肺、涙腺等)の病理組織学的評価を比較することによりGVHD重症度及び有効性を評価し、X線照射強度、移植細胞数などのモデル作製条件について検討した。並行して、マウスマクロファージ由来細胞株RAW264.7及びK562(ヒト慢性骨髄性白血病由来細胞株)を用い、半夏瀉心湯及び黄連湯煎液の曝露後細胞生存率を評価し、いずれもRAW264.7の細胞生存率を低下させるが、黄連湯ではK562細胞生存率に影響せずにRAW264.7の細胞生存率を減少させる傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、急性および慢性GVHDマウスモデル作製に注力しており、慢性モデルについては、臨床所見の評価(GVHD clinical score:体重減少、姿勢、活動性、毛並み、皮膚所見の評価)に加え、小腸、大腸、皮膚、肝、肺、涙腺の病理組織学的検討によるGVHD重症度評価、さらに骨髄の病理組織学的評価による造血状態の評価も併せて検討し、X線照射強度及び移植細胞数などのモデル作製条件、薬剤投与条件などをほぼ決定することができている。急性GVHDについても現在同様に実施しており、positive controlとなるステロイド投与群との比較も行いながら重症度評価を行い、モデル作製条件を検討中である。現在、ステロイド投与群と非投与群とで臨床所見の異なる条件が得られてきており、近々に急性モデルの作製条件も決定できるものと考える。さらに並行して、マウス骨髄からのマクロファージ採取とフローサイトメトリー(FACS)による評価、GVHD関連組織の候補標的分子の免疫組織化学染色による評価、採取糞便からのDNA抽出と分析など、GVHD標的臓器等の採取サンプルを用いたGVHD抑制作用メカニズム検討のための各種分析・解析方法についての予備検討も進めている。 以上より、本研究課題の進捗状況はおおむね順調と考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず急性及び慢性GVHDマウスモデルを用いた和漢薬(桔梗湯、黄連湯、半夏瀉心湯)の有効性評価を第一に進める。具体的には、Syngenic(コントロール)群、allogeneic群についてはさらに非薬剤投与群、ステロイド投与群(positive control)、和漢薬投与群、およびステロイドと和漢薬併用群を作製し、臨床所見(GVHD clinical score)、GVHD主要臓器(大腸、小腸、皮膚、肝、肺、涙腺等)の病理組織学的評価によりGVHD重症度を評価し、和漢薬の有効性を評価する。 次に、有効性の異なるマウスそれぞれから組織等(GVHD標的組織、マクロファージ、リンパ球、便等)を採取し、候補標的分子の免疫組織化学染色、FACSによるマクロファージサブタイプのポピュレーション、Treg細胞、Th17細胞など、和漢薬による有効性とGVHD関連分子との関連について検討する。採取した糞便により、近年GVHDとの関連が注目されている腸内細菌と治療反応性との関連について解析する。 さらに、一部の慢性GVHDマウスモデルにおいて、マウスのステロイド反応性に個体差があることが報告されていることに着目し、ステロイド投与後にステロイドに対する反応性の違いに基づきマウスを群分けして和漢薬を投与することにより、ステロイド抵抗性GVHDマウスに対する和漢薬の有効性を評価する。前述と同様に採取組織等を用いたGVHD関連分子の評価も行う。また、通常マウスにリポ多糖(LPS)を投与してマクロファージ及びリンパ球を採取し、GVHDに対するステロイド作用メカニズム関連候補分子(TLR、NLRP-3、IL-6、TNF-αなど)について、ステロイド/和漢薬/ステロイド+和漢薬(併用)曝露後の遺伝子及び蛋白質発現変化を評価し、作用メカニズムについて検討する。
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