研究課題/領域番号 |
23K06290
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
尾関 法子 (小川法子) 愛知学院大学, 薬学部, 准教授 (80409359)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 脳への薬物送達 / シクロデキストリン / 薬物遊離体の製剤化 |
研究開始時の研究の概要 |
認知症や精神疾患などの中枢神経系疾患の克服は極めて重要である。しかし、中枢神経系薬は血液脳関門を通過して脳内の細胞間液中に移動できなければ、治療効果が得られない。したがって、「いかに中枢神経系薬を効率よく脳に送達させるか」が課題である。そこで本研究では、中枢神経系薬の遊離体を用いた、脳への薬物送達を可能とするシクロデキストリンナノ粒子・超分子配合製剤の設計を企画する。
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研究実績の概要 |
認知症や精神疾患などの中枢神経系疾患の克服は極めて重要である。しかし、中枢神経系薬は血液脳関門を通過して脳内の細胞間液中に移動できなければ、治療効果が得られない。薬物の脳内への送達には、血液脳関門のトランスポーターや受容体を介した取り込み輸送系を利用するよりも、薬物が血液脳関門を受動的に拡散するように、薬物の物理化学的な特性に工夫を加える方が効率的な戦略であることが知られている。そこで、薬物の受動拡散に有用である、脂溶性の高い「薬物遊離体」の形で、中枢神経系薬を用いることが有用と考えられる。一方で、脂溶性の高い薬物は著しく水に溶けにくいため、いかに薬物の物性を制御するかということが薬物の製剤化の可否に大きな影響を与える。 本研究では、中枢神経系薬の薬物遊離体に対して、環状糖類であるシクロデキストリン(CD)類を用いてナノ粒子化等を行うことで物性制御し、脳への高効率な薬物送達を可能とする製剤設計を企画することを目的としている。薬物とCD類は非共有結合性の相互作用を示すことから、CD類を用いた製剤化において包接平衡の把握と制御が重要である。そこで本年度は、中枢神経系薬物モデルとしてクエチアピンを用い、CD類によるクエチアピンの物性制御を行うことを目的として、クエチアピン遊離体とクエチアピンフマル酸塩に対するCD類の包接強度の解析を行った。解析の結果、クエチアピン遊離体とCD類の包接複合体では、クエチアピンフマル酸塩とCD類の混合物と比較して包接強度が強いことが示された。また、クエチアピン遊離体とCD類の包接複合体からの薬物放出性を評価した結果、水溶性のβ-CD誘導体との包接複合体からは、薬物は速い放出性を示し、β-CDとの包接複合体からは薬物が徐放化されることが分かった。これらの知見は、今後のCD類によるクエチアピン遊離体の製剤化に有用であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、これまでに中枢神経系薬の薬物遊離体モデルとしてクエチアピン遊離体の調製を行い、各種シクロデキストリンとの包接複合体の調製、ならびに基礎物性を得ている。また、クエチアピンフマル酸塩との比較を行うことで、クエチアピン遊離体とシクロデキストリンの包接強度に関する知見を得ることに成功し、クエチアピン遊離体とβ-シクロデキストリン類との包接複合体からの薬物放出性についても、基礎的知見を得ている。 一方で、薬物の血液脳関門透過性への包接複合体利用の影響評価や、包接複合体を利用したナノ粒子化、超分子の調製には、成功していないことから、進歩状況はやや遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、これまでに中枢神経系薬の薬物遊離体モデルであるクエチアピン遊離体と各種シクロデキストリンとの包接複合体の調製、ならびに基礎物性を得ている。また、クエチアピン遊離体とシクロデキストリンの包接強度に関する知見を得ることに成功し、クエチアピン遊離体とβ-シクロデキストリン類との包接複合体からの薬物放出性についても、基礎的知見を得ている。 そこで今後は、調製したクエチアピン遊離体とシクロデキストリン類との包接複合体を利用したナノ粒子を設計・評価するとともに、包接複合体を用いた際のin vitroでの薬物の血液脳関門透過性を評価し、シクロデキストリン類利用の有用性を評価する。また、シクロデキストリンによる超分子を設計し評価することで、温度応答性や粘膜付着性を図る。 新規シクロデキストリン類を用いたナノ粒子の調製に成功し、in vitroでの薬物の高い血液脳関門透過性が得られた際には、血液脳関門を回避できる投与経路である経鼻投与と血液脳関門透過を介する全身性投与である静脈内投与を行い評価する。 なお、研究が当初の計画通りに進まないときは、実験の順番や使用物質、方法の逐次変更を適宜行うことで研究を進める。
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