研究課題/領域番号 |
23K06295
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
岡田 亮 産業医科大学, 産業保健学部, 准教授 (70633105)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | TRPC6 / P-糖タンパク質 / ポドサイト / 巣状分節性糸球体硬化症 / ステロイド抵抗性 / Ca2+依存的不活性化機構 |
研究開始時の研究の概要 |
蛋白尿を主な症状とするネフローゼ症候群では、ステロイド抵抗性を示し、薬物治療が奏功せずに症状が進行するケースが知られている。ステロイド抵抗性獲得に至る詳細なメカニズムは不明である。 応募者らはネフローゼ症候群の原因遺伝子であるイオンチャネルTRPC6の機能解析を行い、チャネル活性を負に制御するCa2+依存的不活性化機構(CDI)の破綻が疾患発症に繋がることを新たに提唱した(Polat, et al. 2019, JASN)。本研究では、変異型TRPC6におけるCDI破綻が、細胞外へ薬剤等を排出するポンプとして働くP-糖タンパク質活性亢進を招き、ステロイド抵抗性の獲得に繋がるとの仮説を検証する。
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研究実績の概要 |
本年度はP-gp活性亢進の分子メカニズムを明らかにする足掛かりを得た。 まず,ポドサイトにおけるP-gp遺伝子発現にTRPC6不活性化の破綻が及ぼす影響について検討した。すでに所属する研究グループで不活性化破綻につながる変異TRPC6を発現するマウスポドサイト細胞株 (TRPC6ΔCC) ,およびTRPC6欠損ポドサイト細胞株 (TRPC6 KO)を樹立している。野生型細胞株,TRPC6ΔCC,TRPC6 KOの3系統の細胞株についてRT-PCRを行い,マウスP-gp遺伝子 (Abcb1a) を特異的に検出した。Gapdh遺伝子を内部標準として相対的なAbcb1a遺伝子発現量を評価したところ,3系統の細胞株間で有意な差はみられず,TRPC6の不活性化破綻がAbcb1a遺伝子発現に大きな影響を及ぼしているとは言えなかった。 また,TRPC6の不活性化が破綻した細胞における遺伝子発現パターンに関して網羅的な情報を獲得するため,以上3系統の細胞株のRNA-seqを実施した。野生型細胞株において検出された19055遺伝子において,2083遺伝子が野生型細胞株と比較してTRPC6ΔCC株で発現量が増加し,TRPC6 KO株で低下していた。また,3162遺伝子では野生型細胞株と比較してTRPC6ΔCC株で発現量が低下し,TRPC6 KO株で増加していた。これらの2083遺伝子および3162遺伝子について焦点を当てて分析したところ,P-gp細胞内領域をリン酸化することで同分子の細胞表層への移行を促進するPim-1をコードする遺伝子のmRNA発現量がTRPC6ΔCC株で発現量が増加し,TRPC6 KO株で低下していた。 以上より,細胞表層への移行を制御するPim-1発現量の増加により細胞表層におけるP-gp発現量が増加し,P-gp活性が亢進している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的であるステロイド抵抗性獲得の分子基盤解明の足掛かりとして,TRPC6不活性化が破綻したポドサイトにおいてP-gp遺伝子mRNA発現量に大きな変動はないものの,細胞表層への移行を制御するPim-1発現量の増加により細胞表層におけるP-gp発現量が増加し,P-gp活性が亢進している可能性を見出したことから,着実に研究を前進させることができたと考える。 一方,当初予定していた,FSGS患者より同定された変異を導入させた新規細胞株の樹立には至らなかったことから,当初の計画以上に順調に進行しているとは言えない。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況の欄に記述した通り,本年度は当初予定していたFSGS患者より同定された変異を導入させた新規細胞株の樹立に至らなかった。したがって次年度は,FSGS関連変異型TRPC6を一過性に発現させた細胞を代替的に使用した解析を検討するなどの対応をとる。 また,本研究の目的としていたP-gp活性亢進の分子メカニズムを明らかにする重要な足掛かりを得たことから,キャピラリーベース全自動イムノアッセイ機器 (シンプルウエスタン) を駆使した細胞表層のP-gp発現量の評価など,見出された可能性の検証を引き続き継続する。
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