研究課題/領域番号 |
23K06307
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48010:解剖学関連
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
八木沼 洋行 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (90230193)
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研究分担者 |
本間 俊作 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (20261795)
向笠 勝貴 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (60706349)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 運動神経 / プログラム細胞死 / 頸髄 / マウス / 胎仔 / 運動ニューロン / 細胞死 / 頚部 / 哺乳類 |
研究開始時の研究の概要 |
発生早期の鳥類の上肢を支配しない上部頚髄において、上肢を支配する運動神経細胞への分化を示す細胞群が一過性に現れたのち細胞死によって除去される。これは、上肢が後方に移動し頚が形成されていく進化的過程を反映したものと考えられている。本研究では、マウスやラット胎仔において、発生早期の上部頚髄に運動神経細胞死が起こることを確認後、分化マーカーの発現解析を行い、死ぬ細胞のサブグループを特定する。さらに運動神経不死化マウスにおいて、このサブグループが残存するか確認する。これらの結果を鳥類と比較検討し、頸髄の早期運動神経細胞死が、頚を持つ脊椎動物に共通に起こる現象であるか明らかにする予定としている。
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研究実績の概要 |
鳥類胚の上肢を支配しない頸髄上部では、他の脊髄領域より早い時期に起こるプログラム細胞死(PCD)によってFoxp1陽性の運動神経細胞群が消失する。 Foxp1は四肢筋を支配する外側運動神経核に分化する運動神経細胞に発現される転写因子で、このPCDは頸髄上部に不要な外側運動神経核を取り除くために起こると考えられている。本研究では、この細胞死が哺乳類(マウス)にも起こる現象であるのかについて検討している。 2023年度は、3年計画の1年目として(1)マウスの上部頚髄の運動神経細胞群の構成と発生過程の解明、(2)マウス頚髄運動神経の早期PCDで死んでいる運動神経サブグループの同定を行うことを目的に研究を行った。 これまで、マウス胎仔の頸髄上部(C2-3)におけるPCDが起こる時期、死ぬ細胞における分化マーカー転写因子の発現、PCDが起こる前後における運動神経サブグループの構成について調べた。TUNEL法でPCDを計数したところ、頸膨大部(C5)ではE13がPCDのピークであったのに対し、C2-3ではE11がピークであった。C2-3において死ぬ細胞における分化マーカーの共発現を調べたところ、体性運動神経のマーカーであるMnx1は常に発現しているのに対し、内側運動神経核内側部のマーカーであるLhx3は発現が認められなかった。Foxp1は死ぬ細胞の65%に発現されていた。PCDの前後でFoxp1陽性細胞数の割合を調べたところ、PCD前のE10.5では21%であったものが、PCD後のE12では4%に減少していた。これらの結果は、ほ乳類でも頸髄上部においてFoxp1陽性細胞の多くが早期PCDによって排除されていることを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、(1)マウスの上部頚髄の運動神経細胞群の構成と発生過程の解明、(2)マウス頚髄運動神経の早期PCDで死んでいる運動神経サブグループの同定、(3)運動神経を不死化したマウスの上部頚髄に、早期PCDの時期後に通常は存在しない新規の運動神経サブグループが出現(残存)しているか確かめる、(4)死ぬ細胞が特定のサブグループに属することが判明した場合、このサブグループの決定や、細胞死の決定の分子的な機序に関して入手可能な遺伝子改変マウスを用いた研究を行う、という4つの研究目標について3年計画で取り組んでいる。初年度の2023年度には、(1)と(2)のついて研究を進め、研究実績の概要に示したような研究実績が上がっている。さらに、2023年度末には、(3)の研究を行うための、BaxーKOマウスの導入について手続きが完了し、2024年度前半に実験を開始する予定となっており、研究の進捗状況は概ね順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、(3)運動神経を不死化したマウスの上部頚髄に、早期PCDの時期後に通常は存在しない新規の運動神経サブグループが出現(残存)しているか確かめること、(4)死ぬ細胞が特定のサブグループに属することが判明した場合、このサブグループの決定や、細胞死の決定の分子的な機序に関して入手可能な遺伝子改変マウスを用いた研究を行うことを予定している。 Bcl2の強制発現によって頚髄早期PCDが抑制されるのでBax-KOによって、マウスの頚髄早期PCDも抑制されることが期待される。ゲノム編集技術によって作成されたBax-KOマウスはすでにCyagen社に発注し、現在入荷待ちとなっている。胎生11-11.5日で上部頚髄でPCDが抑制されているか確かめ、抑制されていることが判明したら胎生12.5日で運動神経サブグループの構成を各種マーカーの発現を調べて、ヘテロの個体と比較し、新規のサブグループの出現を確認する。さらに他のサブグループマーカー(例えば外側運動神経核であればRaldh2やLhx1)の発現で確認した後、逆行性標識法で投射先などを調べて同定する。これらの研究は2024年度から25年度に行う予定としている。 さらに、上記の解析結果、死ぬ細胞が特定のサブグループに属することが判明した場合、このサブグループの決定や、細胞死の決定の分子的な機序に関して入手可能な遺伝子改変マウスを用いた研究を、2025年度中に着手したいと考えている。候補となる分子としては、そのサブグループに特異的に発現される転写因子(Foxp1など)や頚髄のidentityを決定するHox遺伝子(Hox5, 6のparalog)などを想定している。
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