研究課題/領域番号 |
23K06308
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48010:解剖学関連
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
植田 高史 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (90244540)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | イオンチャネル / オーファン受容体 / 腸管 / 筋間神経叢 / 大腸炎モデル / 神経免疫関連 / 神経炎症 |
研究開始時の研究の概要 |
腸管神経叢は、消化管壁内で神経ネットワークを構築し、腸管の運動・分泌機能を制御するとともに、種々の免疫細胞とクロストークすることで、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)の病態にも関与している。本研究では、この腸管神経系に発現している機能不明なイオンチャネル型受容体を詳細に解析することで、この受容体の生理機能ならびに病態機能の解明を目指す。本研究の成果は、健常人の便通の理解や、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)で苦しむ患者さんの新たな治療戦略に結びつく可能性がある。
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研究実績の概要 |
腸管神経叢は、消化管壁内で神経ネットワークを構築し、腸管の運動・分泌機能を制御するとともに、種々の免疫細胞とクロストークすること で、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)の病態にも関与している。本研究では、この腸管神経系に発現している機能不明なイ オンチャネル型受容体を詳細に解析することで、この受容体の生理機能ならびに病態機能の解明を目指す。本研究の成果は、健常人の便通の理 解や、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)で苦しむ患者さんの新たな治療戦略に結びつく可能性がある。 我々は、2017年より消化管運動の調節に関わる新規イオンチャンネルの探索を行なっており、これまでにマウス消化器系に発現する酸感受性イオンチャネル4(ASIC4)に着目し、その生理機能について以下の知見を得ている。ASIC4は空腸から遠位結腸にかけて筋間神経叢の一部の細胞に強い発現を認めた。ASIC4ノックアウトマウスと野生型マウスで腸管運動測定装置を使用してマウス摘出腸管(回腸)の収縮・弛緩を測定した。刺激を加えない条件下の自発電気活動に2群間で大きな差はみられなかったが、アセチルコリンに対する腸管収縮や高濃度のニコチンに対する収縮に続く」弛緩反応の程度はASIC4ノックアウトマウスの方が野生型に比べ小さい傾向にあった。これらの結果からASIC4は筋間神経叢の抑制性神経と興奮性神経の両者でその活動性を調整する役割の一端を担っている可能性が示唆されているが、その詳細と近年注目されている神経免疫連関における役割については不明なため、本研究ではこれらの点について解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はまず野生型マウス(C57BL/6J)、ASIC4-lacZマウス、ASIC4ノックアウト(ASIC4-KO)マウスを用いて、ASIC4の詳細な発現分布(特に消化管神経細胞の実験でよく実施されている頻度)について、様々な実験法を試みた。具体的には、ASIC4-lacZマウスにおけるGal活性と各種マーカー(NF-H、ChAT、nNOS、TRPV2など)との二重染色、同マウスにおける腸管伸展標本での同二重染色、同マウスにおける抗Gal抗体を使用した二重免疫染色、野生型マウスとASIC4-KOマウスにおけるASIC4市販抗体や独自に作製したASIC4精製抗体を用いた二重免疫染色を実施した。その結果、これまで以上の詳細な解析は困難であり、発現頻度のデータを得るまでには至らなかった。一方、病態におけるASIC4の役割を検索するため、野生型マウスとASIC4-KOマウスを用いてデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)による大腸炎モデルを作製し、その炎症の度合い等を観察した。1回目の解析では、野生型マウスとASIC4-KOマウスにおいて3% DSS飲水による体重減少に大きな違いはなかったものの、大腸のHE染色標本では、ASIC4-KOマウスの方が野生型に比べ、炎症細胞の浸潤の程度が弱かった。2回目の解析では、体重減少の程度にも両マウス間で違いが出ており、2回行なった実験の結果ともにASIC4の炎症への関与が示唆される結果となり、さらに詳細を解析すべく現在ASIC4-KOマウスを繁殖させている状況である。ASIC4-KOマウスの繁殖に時間を要しており、進捗状況はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果より、ASIC4は腸管神経叢で興奮性および抑制性の神経細胞に発現し、特にその弛緩反応については大きな役割を担っている可能性がある。実験がほぼ終了している生理学的な研究については起草して論文にまとめる。次に大腸炎モデルマウスにおける炎症が果たしてASIC4-KOマウスで減弱しているか、さらに実験を重ねる。さらに腸管アウエルバッハ筋間神経叢の神経細胞は炎症時に免疫細胞とクロストークすることが知られており、具体的にどのサブタイプの免疫細胞が、どのようなクロストーク因子により相互作用を行なっているかについて、分子生物学的手法や形態学的手法に加え、免疫細胞の解析法を習得して、FACSなどで明らかにしていく予定である。Chuらの総説によれば、アセチルコリン、ノルアドレナリン、NMU、サブスタンスP(SP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)などがクロストーク因子の候補であり、マクロファージ、肥満細胞、ILC2細胞が免疫細胞の候補と考え(Chu C et al, Immunity, 2020)、実験を進める。一方、腸管機能におけるASIC4の役割を決定する上で重要な点はASIC4のアゴニストを投与した時の2群間の応答差を解析することであるが、ASIC4のアゴニストは未だ不明であるため、本研究室の別の研究者が取り組んでいるASIC4強制発現系によるASIC4チャネルの特性やアゴニストを探索する実験にも関与し、引き続き進めていく予定である。
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