研究課題/領域番号 |
23K06328
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48010:解剖学関連
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
湯川 和典 名城大学, 薬学部, 教授 (20301434)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 細胞体トランスロケーション / 放射状グリア細胞 / アストロサイト / 脳梁 / プレキシンA3 / 灰白層グリア / セマフォリン / 脳梁形成 |
研究開始時の研究の概要 |
胎生期脳の発生過程で様々な神経系細胞に分化する放射状グリア細胞(RGC)は、脳室面から突起を離し大脳正中線皮質表層への細胞体の移動を経て集結し、アストロサイトに分化・成熟後に灰白層グリア(IG)が形成される。IGは神経軸索の成長を導く分子を分泌し、左右大脳をつなぐ脳梁を形作る軸索の正中線交差を誘導する。軸索伸長制御因子セマフォリンの受容体プレキシンA3の欠損マウスで見出したIG形成不全と脳梁欠損は、IG形成性のRGC細胞体移動の障害に起因する可能性がある。そのため、IG形成性RGC細胞体移動と脳梁形成におけるプレキシンA3の役割を解明する本研究は、脳梁形成機構と脳梁欠損症の病因の解明に役立つ。
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研究実績の概要 |
軸索ガイダンス分子セマフォリン(Sema)の受容体であるプレキシンA3を欠損するマウスでは、脳梁軸索が伸長するための道標となる灰白層グリア(IG: indusium griseum)の形成不全と脳梁欠損が発生する。IGは、神経系前駆細胞の放射状グリア細胞(RGC)の細胞体が線維芽細胞増殖因子(FGF)の作用で脳室帯(GW)から皮質表層へと移動し(細胞体トランスロケーション)、アストロサイトに分化することで完成される。この細胞体トランスロケーションに異常があるかどうかを検証するため、RGCをGFPで可視化するBLBP-GFPとコントロールベクターのCAGGS-RFPを調整した。R6年度はRGCの細胞体移動の実態解明のため、子宮内胎仔脳への遺伝子導入実験を完遂する。 胎生17.5日齢プレキシンA3欠損マウスのIG領域でのSOX9陽性細胞及びGFAP陽性細胞の有意な減少に加え、GWでSOX9陽性細胞が減少傾向を示した。そのため、R6年度は、SOX9陽性細胞の増殖能の測定を行う。 RGCでのFGFとプレキシンA3シグナルのクロストーク検証のため、FGFで活性化する細胞内分子を抗リン酸化抗体で検出した結果、胎生16.5日齢プレキシンA3欠損胎仔でリン酸化ERK;SOX9共陽性細胞とリン酸化Elk-1;SOX9共陽性細胞が、GW及びGW→IG領域で野生型よりも有意な減少を示した。FGFシグナルのERKからElk-1の経路がプレキシンA3シグナルの影響を受けることが示唆され、FGFと共にプレキシンA3がRGC細胞体トランスロケーションに関わる可能性が高まった。 BLBP陽性RGCにおけるプレキシンA3 mRNAの発現が判明した。R6年度以降は、RGCでのプレキシンA3の細胞内局在解明のため、細胞体移動中のBLBP陽性RGC内のプレキシンA3の局在を、抗プレキシンA3抗体を用いて解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究実施計画では、放射状グリア(RGC)特異的にGFPを発現するベクターを胎仔マウス脳に遺伝子導入し、RGC細胞体トランスロケーションの解析を行い、令和5年度中に灰白層グリア(IG)形成不全の実態を明らかにする予定であった。米国のNeuroscience 2023で学会発表を行い、帰国後の11月中旬に新型コロナウイルス感染症に罹患し、研究室に完全復帰するまでに約3週間を要した。その間、動物施設で飼育中のマウスの遺伝子型判定ができず、充分数の実験用マウスの確保が困難となり、この遺伝子導入実験の進行に遅れが生じた。そのため、RGC細胞体トランスロケーションにどのような異常があるかについては、未だ十分な結果が得られていない。 DNAヌクレオシドのチミジンアナログを胎仔マウスに投与し、脳室帯(GW)、GWとIGの間、IGの3領域におけるSOX9陽性細胞の増殖能の測定についても、上記と同等の理由により結果が得られていない。 GW→IG方向で発現レベルが変化しプレキシンA3のリガンドとなる可能性があるセマフォリン(Sema)を同定するため、Sema3F mRNAの発現分布について解析することを計画していたが、未だ解析ができていない。 以上の理由で、令和5年度の研究の進捗状況については、やや遅れていると判断をした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進のため、以下の方策を遂行する。 1. プレキシンA3欠損RGCのGW→IG細胞体トランスロケーションを解析するため、RGC特異的にGFPを発現するベクターを遺伝子導入し、GFPで可視化されたRGC細胞体の移動を評価することでIG形成不全の実態を解明する。さらに、プレキシンA3mRNAノックダウン(KD)の効果検証のため、野生型胎仔脳にRGC特異的にGFPを発現するベクターとmCherry含有プレキシンA3mRNAノックダウン用ベクターを遺伝子導入し、GFP;mCherry共陽性RGCの細胞体移動を評価し、時期・部位特異的にプレキシンA3の役割を明らかにする。 2. プレキシンA3欠損RGC及びアストロサイト系細胞が減少しIG形成不全に至る可能性の検証のため、脳室帯(GW)、GWとIGの間、IGの3領域でのSOX9陽性細胞数を測定する。さらにチミジンアナログEdUを胎仔に投与し、3領域におけるSOX9; EdU両陽性細胞数を野生型胎仔と比較し増殖能を評価する。 3. GW→IG RGC細胞体トランスロケーションが起きる時期の正中線領域において、GW→IG方向に発現が変化しプレキシンA3のリガンドとなるセマフォリン(Sema)同定のため、Sema3F、Sema6A等のmRNAの発現分布を、in situ ハイブリダイゼーションで解析する。 4. RGC細胞体におけるプレキシンA3の局在解析のため、GW→IG細胞体トランスロケーション中のRGCにおけるプレキシンA3とpFGFR1の局在について、免疫染色を行い共焦点レーザー顕微鏡により確認する。次に大脳正中線領域のタンパク抽出液中で、プレキシンA3とpFGFR1の複合体形成の有無を明らかにする。以上の結果をもとに、RGC細胞体トランスロケーションによりIG形成と脳梁形成が進む細胞・分子表現型モデルを構築し論文発表する。
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