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新規カリウムポンプの機能異常に着眼した肺高血圧の病態生理基盤の創出

研究課題

研究課題/領域番号 23K06330
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分48020:生理学関連
研究機関富山大学

研究代表者

藤井 拓人  富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 講師 (50567980)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
キーワードカリウムポンプ / 肺動脈性肺高血圧症 / P型ATPase / Ca2+シグナリング / 肺動脈血管平滑筋
研究開始時の研究の概要

本研究では、肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者で遺伝子変異が報告され、我々がカリウム(K+)ポンプとして機能することを見出した「PAH-ATPase(投稿前のため仮称)」に着目する。PAH-ATPaseのK+輸送機構や機能制御機構、肺動脈血管平滑筋におけるPAH-ATPaseの生理機能、PAH-ATPaseのK+輸送機能の異常が引き起こすPAH発症機構について細胞レベルから個体レベルまで多階層的に研究を行う。また、PAH-ATPaseを標的とした新規PAH治療法の開発を目指した研究として、PAH-ATPaseの発現やK+輸送機能を改善(増強)することで、PAH病態を改善する化合物の同定を行う。

研究実績の概要

本研究では、肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者で変異が報告されている膜タンパク質(PAH-ATPase; 仮称)に着目する。我々はこれまでに、PAH-ATPaseが、K+を輸送するK+ポンプ(K+-ATPase)として機能することを見出した。そこで本研究では、肺動脈血管平滑筋細胞におけるPAH-ATPaseのK+輸送の生理学的および病態生理学的役割、またPAH-ATPaseのK+輸送機能異常が関与するPAH発症メカニズムを明らかにすることを目的とする。さらに、PAH-ATPase変異体の発現や機能を改善する化合物を同定し、PAH病態に対する効果を検証することでPAH-ATPaseを標的とした新規治療法開発を目指す。
本年度はまず、ヒト肺動脈血管平滑筋細胞における、PAH-ATPaseの発現分布を検討した。平滑筋細胞において、PAH-ATPaseは原形質膜に加えて小胞体にも発現していた。平滑筋細胞においてPAH-ATPaseをノックダウンし、変動するPAH関連分子の遺伝子発現を検討したところ、小胞体および細胞内カルシウム動態に関連するイオン輸送分子の遺伝子発現が変化することを見出した。Fura-2-AMを用いて、様々な実験条件下で細胞内遊離カルシウム濃度解析を行ったところ、PAH-ATPaseノックダウン細胞では、小胞体内および細胞質内のカルシウムレベルが有意に増加していた。以上の結果より、PAH-ATPaseは、原形質膜および小胞体においてK+-ポンプとして機能し、その機能異常がカルシウム輸送タンパク質の発現を亢進させることで細胞内カルシウムの恒常性異常を引き起こす可能性が示唆された。
また、癌細胞においてPAH-ATPaseの発現異常が報告されたことから、癌細胞におけるK+-ATPaseの機能解析を行い、Na+K+-ATPaseの関連分子としてTHADAを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の研究において、ヒト肺動脈血管平滑筋細胞におけるPAH-ATPaseの詳細な細胞内分布を明らかにし、PAH-ATPaseノックダウン細胞により、細胞内カルシウムシグナル関連分子の発現が異常となり、小胞体内および細胞内カルシウムレベルの上昇が引き起こされることを見出した。細胞質内カルシウムレベルの上昇は、PAH病態発症に関与することが報告されていることから、本年度の研究で明らかとなった成果は、PAH-ATPaseのK+輸送機能が平滑筋細胞のカルシウム恒常性を維持していること、その異常により恒常性が破綻し、PAH病態が引き起こされる可能性を示唆している。本年度の研究成果を基に、PAH-ATPaseが細胞内カルシウム恒常性を維持する分子メカニズムの解析を進める予定である。研究は計画通りに実施されており、予想された結果が得られている。従って、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

今後は、PAH-ATPaseの輸送機能や病態生理機能、PAH治療薬を目指した化合物探索についての研究を行い、PAH-ATPaseのK+輸送機能異常が関与するPAH発症メカニズムの解明、またPAH-ATPaseを標的とした新規のPAH治療法開発を目指す。
PAH-ATPaseのイオン輸送機能の全容解明に向けて、K+結合部位、K+と対向輸送する輸送基質、リン酸化実験においてPAH-ATPaseの酵素サイクルについて詳細に検討を行う。また、PAH-ATPaseの過剰発現HEK293細胞もしくはPAH-ATPaseをノックダウンした平滑筋細胞における細胞内K+濃度、膜電位変化、同定した輸送基質の細胞内濃度変化を検討する。
PAH-ATPaseのイオン輸送機能異常がPAH病態を引き起こす機構を明らかにするため、平滑筋細胞においてPAH-ATPaseをノックダウンすることで、PAH患者において変異や機能異常が報告されているK+チャネルやCa2+チャネルの発現変化を検討し、PAH-ATPaseとの機能連関について電気生理学的手法等を用いて詳細に検討する。PAH-ATPaseと機能連関する分子を明らかにするため、PAH-ATPaseをノックダウンした平滑筋細胞において、PAH-ATPaseの発現低下(消失)により発現変動する分子をプロテオーム解析により探索し、PAH-ATPaseと機能的に関連する分子を同定する。同定した候補分子の過剰発現もしくはノックダウン細胞を作製し、PAH-ATPaseの発現や機能、細胞内K+動態の変化を検討し、PAH-ATPaseとの機能連関機構の詳細を明らかにする。
さらに、遺伝子改変マウスやPAHモデル動物を用いたin vivo解析、PAH-ATPaseの発現や機能をレスキューし、PAH病態を改善する化合物の探索についても、研究計画に従い、順次研究を進める。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (10件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Negative regulation of thyroid adenoma-associated protein (THADA) in the cardiac glycoside-induced anti-cancer effect2024

    • 著者名/発表者名
      Katoh Mizuki、Fujii Takuto、Tabuchi Yoshiaki、Shimizu Takahiro、Sakai Hideki
    • 雑誌名

      The Journal of Physiological Sciences

      巻: 74 号: 1 ページ: 23-23

    • DOI

      10.1186/s12576-024-00914-7

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] がん細胞におけるNa<sup>+</sup>/K<sup>+</sup>ポンプとCl<sup>-</sup>チャネルの新しい病態生理機能2023

    • 著者名/発表者名
      Fujii Takuto、Shimizu Takahiro、Sakai Hideki
    • 雑誌名

      日本薬理学雑誌

      巻: 158 号: 6 ページ: 465-468

    • DOI

      10.1254/fpj.23057

    • ISSN
      0015-5691, 1347-8397
    • 年月日
      2023-11-01
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] 強心配糖体によるα3NaKを介した胃癌血中循環腫瘍細胞(CTC)の抑制2024

    • 著者名/発表者名
      沼田佳久, 藤井拓人, 奥村知之, 田中晴祥, 白井祥睦, 真鍋高宏, 三輪武史, 平野勝久, 橋本伊佐也, 酒井秀紀, 藤井 努
    • 学会等名
      第96回日本胃癌学会総会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Physiological and Pathophysiological functions of intracellular ATPases2024

    • 著者名/発表者名
      Takuto Fujii, Takahiro Shimizu, Hideki Sakai
    • 学会等名
      第101回日本生理学会大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] リソソームに発現する新規H+,K+-ATPaseの病態生理機能.2023

    • 著者名/発表者名
      藤井拓人,永森收志,Wiriyasermkul Pattama,田渕圭章,清水貴浩,竹島浩,酒井秀紀
    • 学会等名
      2023年度生理研研究会「上皮膜輸送と細胞極性形成機構の統合的理解を目指して」
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 神経細胞のリソソーム膜におけるATP13A2(PARK9)のイオン輸送機能と酸分泌抑制剤(P-CAB)の効果2023

    • 著者名/発表者名
      藤井拓人,永森收志,Wiriyasermkul Pattama,田渕圭章,清水貴浩,奥村知之,藤井努,竹島浩,酒井秀紀.
    • 学会等名
      第44回 生体膜と薬物の相互作用シンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 脳に発現するオーファンATPaseの局在および機能の解析.2023

    • 著者名/発表者名
      南拓磨,藤井拓人,清水貴浩,酒井秀紀.
    • 学会等名
      日本薬学会北陸支部第135回例会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 神経細胞リソソームに発現する新規H+,K+-ATPaseであるATP13A2の生理・薬理学的特性.2023

    • 著者名/発表者名
      藤井拓人,永森收志,Wiriyasermkul Pattama,清水貴浩,田渕圭章,奥村知之,藤井努,竹島浩,酒井秀紀.
    • 学会等名
      第97回日本薬理学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 小胞体(ER)に発現する新規K+ポンプの分子生理機能2023

    • 著者名/発表者名
      藤井拓人,三浦基,矢後亜沙佳,池田瞬,清水貴浩,酒井秀紀.
    • 学会等名
      2023年度生理研研究会「細胞環境のシグナリングと計測」
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [備考] 富山大学 薬物生理学研究室ホームページ

    • URL

      http://www.pha.u-toyama.ac.jp/phaphy1/index-j.html

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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