研究課題/領域番号 |
23K06332
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48020:生理学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
山田 充彦 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (10263237)
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研究分担者 |
中田 勉 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 准教授 (70452141)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | レニン・アンジオテンシン系 / I型アンジオテンシンII受容体 / 心筋細胞 / G蛋白質 / バイアス信号 / 発達薬理学 / アンジオテンシンII / AT1受容体 / 細胞内情報伝達機構 / 発達生理学 |
研究開始時の研究の概要 |
血圧などの生体機能を調節するレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)は、成人では高血圧、心肥大、心不全、腎不全などの原因ともなり、これらを抑制する多くの薬がこれまでに開発され心血管腎疾患治療に用いられてきた。しかし一方で、RAASは小児の発達や生命維持に極めて重要な役割を果たす。本研究は、RAASがこのような発達段階依存的機能変化を遂げる分子機構を明らかとし、成人治療薬開発とは異なる視点からの新しい小児創薬のヒントを得ることを目指す基礎研究である。
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研究実績の概要 |
レニン・アンジオテンシン系(RAS)は、成人では種々の循環器・腎疾患の原因因子として悪名高いが、ヒトを始めとする哺乳類の誕生前後には、循環、腎、体液調節を担う極めて重要な生命維持機構としての役割を果たしている。具体的には、マウスでは誕生から離乳期(20-28日齢)の期間に限り、アンジオテンシンII(AngII)は、心筋細胞のI型AngII受容体(AT1R)を介して、陽性変力作用と抗アポプトーシス作用を発揮する。研究代表者は、この反応がAT1Rと共役するG蛋白質ではなくβアレスチン2を介して生じることを見出した。しかし離乳期以降は、この反応が徐々に消退し、AngIIによるAT1R刺激はもっぱらG蛋白質を介する病的作用に変換される。このことは、心筋細胞のAT1Rの情報伝達のバイアス性が発達依存的に変化することを意味する。 本研究は、AT1Rのバイアス性が発達依存的にどのように変化するか、つまり種々の細胞内トランスデューサーとの連関が発達依存的にどのように変化するか、その分子機構は何かを明らかにすることを目的とする。具体的には、G蛋白質やβアレスチンの蛋白発現量の変化に加えて、AT1Rの両経路に対するエフィカシーを調節するG蛋白質受容体キナーゼ、AT1Rのアロステリック調節蛋白質などの年齢依存的発現変化を解析する予定である。実験にはマウスを用い、初年度はまず胎児期、2年度は成体で上記解析を行い、この2つの発達段階の間で何が大きく変化するかを明確化する。3, 4年度は両者の中間の種々の年齢のマウスで解析を行い、変化が起こる時期、その分子機序、その生理的意義を明らかにする。初年度である今年度は、胎児期のマウスで解析を行い、胎児心筋細胞のAT1Rは、成体よりβアレスチンにバイアスした信号を生じる可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス胎児(胎生15日)の心室筋細胞を酵素的に単離し、オーバーナイトで培養、アッセイに用いた。培養メディウムに添加したAngIIは、これらの細胞の活動電位に伴うカルシウムトランジエントを有意に上昇させた。この反応は、AngII投与後1分以内から数分に起こる一過性反応と、投与後2時間をピークに数時間続く持続的反応の2相からなった。薬物やsiRNAを用いた解析から、前者はAT1Rと共役するGq/11蛋白質、後者はβアレスチン2が仲介する反応であることが判明した。後者は、βアレスチン2が種々の過程を経てカゼインキナーゼ2’を活性化し、細胞膜のL型Ca2+チャネル活性を亢進することにより生じた。また前者はピークカルシウムトランジエントを~1.2倍増強したのみであったが、後者は2倍以上増加させた。 一方成体マウスでは、AngIIはAT1R/Gq/11蛋白質経路を介して心肥大を生じることが知られている。事実AngIIは培養マウス胎児心室筋細胞でIP1の集積を誘導したが、そのエフィカシーは10% FBSの~1/4と低かった。また培養細胞表面積の増加誘導効果を比較すると、最大有効濃度のAngIIの効果は、α1アドレナリン受容体アゴニストであるフェニレフリンのそれより有意に弱かった。 以上より、マウス心室筋細胞ではAT1Rの細胞内情報伝達機構は、胎児期には成体期より、Gq/11蛋白よりβアレスチンにバイアスされていると考えられた。しかし、AT1Rが共役する他のG蛋白質(Gi/oおよびG12/13)に対する作用は、今年度内には検討できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、成体心筋細胞で同様の検討を行い、胎児期と異なるバイアス性が認められれば、①各種発達段階のマウスを用いて、この遷移が生じる時期を特定し、②その分子機構を明らかにしてゆく。
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