研究課題/領域番号 |
23K06337
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48020:生理学関連
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研究機関 | 高崎健康福祉大学 |
研究代表者 |
下川 哲昭 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 教授 (90235680)
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研究分担者 |
鯉淵 典之 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (80234681)
宮崎 航 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (90512278)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | ネグレクト / オキシトシン / 母乳 |
研究開始時の研究の概要 |
育児放棄(ネグレクト)の原因に関して申請者らは育児行動の発現には胎児期に母体からの下垂体前葉ホルモンであるプロラクチン (PRL) シグナルが必要であると報告した。さらに最近、下垂体後葉ホルモンであるオキシトシン (OXT)が母乳中にも存在し、OXT量の低下した母乳で哺育されたマウスは次世代への育児行動をネグレクトすることを見出した。 本研究はこの発見に基づき、血中OXTの母乳への移行とその分子メカニズム、さらに 哺乳した仔の消化器から脳への経路と育児神経回路への影響を明らかにすることで、OXTの ネグレクト予防(抑制)効果と作用機序の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
これまでに申請者らは下垂体後葉ホルモンであるオキシトシン (oxytocin, OXT)が母乳中にも存在し、OXT量の低下した母乳で哺育されたマウスは次世代への育児行動をネグレクトすることを見出した。本研究はこの発見に基づき、血中OXTの母乳への移行とその分子メカニズム、さらに 哺乳した仔の消化器から脳への経路と育児神経回路への影響を明らかにすることで、OXTの ネグレクト予防(抑制)効果と作用機序の解明を目指す。 2023年度は、以下の2点について解析を行なった。 1. マウス母乳中のオキシトシン濃度の経日的変化を解析した。野生型マウスの母乳中のOXT濃度は、分娩後3日目に高値を示した。その後、基礎レベルまで低下し、分娩後8~12日に再び上昇する二峰性が観察された。分娩後3日目の母乳中のOXT濃度が高値を示したのは、分娩時の子宮筋収縮のための大量分泌によるものだと思われる。分娩後8~12日の上昇は、OXTが母乳中に外分泌される生理的意義の一つであり、次世代の育児行動の発現に必要な上昇だと考えている。一方、OXTヘテロ欠損マウスの分娩後7~12日における母乳中のOXT濃度は野生型に比べ平均19.4%に減少していた。 2. OXTヘテロ欠損マウスの低オキシトシン母乳による育児行動の解析を解析した。母乳中のOXT含量の少ないOXTヘテロ欠損マウスの母乳で哺育された雌マウスを成熟させ、妊娠・分娩後の育児行動を観察した。分娩後5日目の仔の生存率は驚くべきことに0%であり、極めて強いネグレクト様行動を示した。この結果は、将来の育児行動の発現は母乳中のOXTが制御しており、その摂取の低下は将来のネグレクトを招くことを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
母乳中のOXT含量の少ないOXTヘテロ欠損マウスの母乳で哺育された雌マウスは将来自らが親になった際、育児行動を全く示さないことを見出した。この発見によりネグレクトマウスの新たなモデル系が確立できた。しかし、OXTヘテロ欠損マウスの作出から交配、妊娠維持、分娩、授乳、仔の離乳、成熟、交配、分娩、育児行動の観察と実験の1サイクルが6ヶ月にも及ぶ。これらの作業により当初予定していた研究の進展が「やや遅れている」となった。
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今後の研究の推進方策 |
ネグレクトマウスの選定とそのモデル化に成功した。今後は当初の予定通り、まず、視床下部/下垂体由来のOXTがいかなる経路と仕組みで母乳へと外分泌に至ったのか?をエクソソームを中心に解析する。さらに、新生仔が摂取した母乳中のOXTが消化管から体内へ吸収される経路を明らかにする。また、低OXT母乳へのOXT添加によるネグレクト回避の実際に向けてOXT濃度や母乳の組成、授乳のタイミングなどを詳細に明らかにする。
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