研究課題/領域番号 |
23K06362
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48030:薬理学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
藤原 章雄 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (70452886)
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研究分担者 |
西東 洋一 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 特任助教 (20783567)
菰原 義弘 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (40449921)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 腫瘍関連マクロファージ / リンパ節マクロファージ / CD163 / CD169 / 天然化合物 / 腫瘍免疫 / マクロファージ / 炎症性疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、マクロファージ(Mφ)の活性化制御が様々な病態治療に有効であると考えられている。我々はMφに特異的に発現するCD163やCD169が腫瘍微小環境や所属リンパ節において腫瘍進展に寄与する機能分子であることを解明したことから、 CD163/CD169をがん治療の新たな標的分子と考えている。しかし、未だMφの活性化におけるそれらの機能性は未解明な点が多いため、本研究ではCD163/CD169の機能性を様々な病態で解明すると同時にCD163/CD169を標的とした化合物を同定することで将来的にがんのみならず慢性炎症に対するMφ活性化制御に基づく新たな治療薬の開発ならびに再生医療への応用を目指す。
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研究実績の概要 |
近年、マクロファージの活性化制御が様々な病態治療に有効であると考えられている。我々はマクロファージに特異的に発現するCD163やCD169が腫瘍微小環境や所属リンパ節において腫瘍進展に寄与する機能分子であることを解明したことから、 CD163/CD169をがん治療の新たな標的分子と考えている。しかし、未だマクロファージの活性化におけるそれらの機能性は未解明な点が多いため、本研究ではCD163/CD169の機能性を様々な病態で解明すると同時にCD163/CD169を標的とした化合物を同定することで将来的にがんのみならず慢性炎症に対するマクロファージ活性化制御に基づく新たな治療薬の開発ならびに再生医療への応用を目指している。本年度は CD163抑制化合物として同定したOnionin Aがマクロファージによる間接的な作用を介した小細胞肺癌のSTAT3の活性化に対して抑制的に作用することで小細胞肺癌の進展を抑制することを明らかにした。また、本年度はリンパ節に存在するCD169陽性マクロファージの腫瘍免疫における機能についても詳細に解析したところ、CD169陽性マクロファージが抗癌剤として知られる免疫チェックポイント阻害剤の作用発現に重要な役割を果たしていることを明らかにした。加えて、CD169促進化合物として同定したナリンジンがリンパ節におけるCD169陽性マクロファージを増加させることで、腫瘍移植モデルマウスにおいて腫瘍免疫を活性化することで腫瘍進展を抑制することを明らかにした。さらに、ナリンジンと免疫チェックポイント阻害剤との併用効果も認められたことから、がんに対しては、リンパ節におけるCD169陽性マクロファージを標的とした治療法が新たな治療法として有効である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実験計画における大きな目標としては、免疫療法におけるリンパ節洞マクロファージの意義をマウスモデルにて評価することであった。免疫チェックポイント阻害剤による治療は、免疫原性の高いがん細胞(MC38およびE0771細胞)の移植モデルでは皮下腫瘍増殖を抑制したが、免疫原性のないがん細胞(MB49およびLLC細胞)の移植モデルには有効ではなかった。また、それらマウスモデルでの腫瘍組織における細胞傷害性Tリンパ球(CTL)浸潤およびCD169陽性リンパ節洞マクロファージの減少は、MC38およびE0771細胞の移植モデルと比較して、MB49およびLLC細胞の移植モデルにて観察された。MC38およびE0771細胞の移植モデルに対する免疫チェックポイント阻害剤の抗腫瘍効果は、リンパ節洞マクロファージを枯渇させると消失したことから、リンパ節洞マクロファージが免疫チェックポイント阻害剤の治療効果に関与していることを明らかにした。 また、CD169誘導化合物として同定したナリンジンはMB49およびLLC細胞移植モデルマウスにおいて腫瘍進展を抑制し、その腫瘍組織ではCTLの浸潤およびCTLの活性化が誘導され、それらナリンジンによる免疫賦活化作用はリンパ節洞マクロファージの枯渇により消失することも明らかにした。加えて、ナリンギンと免疫チェックポイント阻害剤の併用効果も証明した。つまり本研究にて、CD169陽性リンパ節洞マクロファージは抗腫瘍免疫応答に重要であり、ナリンギンはCD169陽性リンパ節洞マクロファージと抗腫瘍CTL応答を活性化することにより腫瘍増殖を抑制することを明らかにし、これらの実験結果は学術論文にて報告した。さらに、CD163抑制化合物であるOnionin Aの小細胞肺癌に対する抗腫瘍効果についても学術論文にて報告したことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、まずはCD169誘導作用を有する候補化合物(ナリンジン等)のリンパ節への効率的な送達を可能とするPLGAナノ粒子(ナリンジン含有ナノ粒子)を作製し、腫瘍移植モデルマウスにおける単剤ならびに既存の抗腫瘍療法(化学療法薬や免疫チェックポイント阻害剤)との併用効果を検討する。 具体的には、マウス由来がん細胞株(肺がん・大腸がん・膀胱がん・乳がん等)を移植したモデルマウスにナリンジン含有PLGAナノ粒子単独投与もしくはナリンジン含有PLGAナノ粒子と既存の抗腫瘍療法薬とを併用投与し、腫瘍の発育・転移ならびにマウスの生存率を比較する。また、リンパ節ならびに腫瘍における免疫細胞の活性化状態を評価することで、ナリンジンのリンパ節洞マクロファージを介した抗腫瘍メカニズムを明らかとすると共に、DDSの観点からもリンパ節洞マクロファージを標的としたがんに対する新たな治療戦略の可能性を提案する。さらに、マクロファージにおけるCD169発現を誘導することが知られているIFN-aにマクロファージ指向性を持たせたマンノース修飾アルブミン-IFN-a(Man-MSA-IFNa)を作製し、腫瘍移植モデルマウスにおける単剤ならびに既存の抗腫瘍療法(化学療法薬や免疫チェックポイント阻害剤)との併用効果も検討する。 また、マクロファージにおけるCD163が腹膜癒着の形成に促進的に機能している可能性を示唆するマウスモデルでの予備的検討結果が得られているため、CD163の腹膜癒着における機能解明に向けた研究も今後実施する予定である。
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