研究課題/領域番号 |
23K06366
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48030:薬理学関連
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
陳 以珊 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (40757770)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | イオンチャネル病 / イオン選択性 / イオンチャネル |
研究開始時の研究の概要 |
イオンチャネルの異常は様々な先天性疾患の原因となる。例えば、Keppen-Lubinsky症候群や原発性アルドステロン症は、G蛋白質活性型内向き整流性カリウム(GIRK)チャネルの変異が原因であり、通常は通過しないナトリウムイオンやカルシウムイオンの細胞内流入によって細胞死が惹起される。しかし、どのような構造変化によって、どのようにカリウムイオン以外のイオンが透過するかは不明であり、また変異したGIRKチャネルを標的とした治療薬は無い。本研究の目的は、変異したGIRKチャネルの構造変化に基づく異常なイオン透過性の形成メカニズムの解明、およびそのチャネル変異体の機能を是正する薬物の探索である。
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研究実績の概要 |
GIRK2 チャネルの遺伝子変異による異常なイオン選択性は、過剰な Na+ 流入による細胞機能障害を引き起こす。最近我々はマウス GIRK2 G156S 変異体では、選択性フィルターが構成した従来の K+ 透過経路のほかに、第二のイオン透過経路が形成され、そこをNa+と Li+ が透過するという電気生理学的エビデンスを得た。 本研究の目的は、変異した GIRK2 チャネルの構造変化に基づく異常なイオン選択性の形成メカニズムの解明、およびそのチャネル変異体の機能を是正する薬物の探索である。そのため、以下の実験計画を行った。 (1)GIRK2 野生型におけるイオン透過の再現:イオンポア形成ドメイン全体を用いたシミュレーションでは、イオンポアの細胞内出口が閉じたままであり、イオン透過を再現できなかった。領域を検討し、ポアドメインの Leu89-Met191 のアミノ酸領域を用いて K+ イオンの透過を再現した。現在はこの領域にて変異導入を行い、G156S 変異体と野生型での K+ と Na+ の共存環境での長時間シミュレーションを進めている。 (2)G156S変異体の第二のイオン透過経路のみ阻害する薬物の探索:AMED-BINDS から約2000 個の化合物を含むライブラリーを取得して、アフリカツメガエル卵母細胞の高効率 in vitro 解析系を利用して、変異体の異常 Li+ 電流に対する化合物の抑制効果を測定した。化合物ライブラリーの約4割を占める天然物のスクリーニングを完了し、複数の植物性アルカロイドが Li+ 電流を阻害することを見出した。 (3)上記以外に、GIRKチャネルの新規作用薬に関する論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子動力学的解析によるイオン透過の再現および電気生理学的解析による異常イオン透過経路阻害薬のスクリーニングは滞りなく途中まで進めている。そのため、2024年度以降に研究を発展させることができると考えている。そのため、概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
(1)G156S 変異体におけるイオン透過の再現と透過機構の解析:G156S 変異体と野生型での K+ と Na+ が単独で存在する条件と共存する条件のイオン透過の長時間計算を行い、各イオンのイオンポア内での自由エネルギーの分布を計算する。自由エネルギーが低い領域に存在するアミノ酸残基を同定し、該当残基の追加変異による候補化合物の結合力の変化を評価し、第二のイオン透過経路の形状を確定する。また、分子動力学計算の結果を基に、第二のイオン透過経路を形成するアミノ酸残基の役割を変異体等の電気生理学的手法より解析する。 2)候補化合物の効果の検証と最適化:提供をうけた化合物ライブラリー全体について、G156S変異体の第二のイオン透過経路のみを阻害する化合物のスクリーニングを完了する。同定された Li+ 電流阻害薬が、G156S変異体の異常なイオン透過による細胞死に対しての抑制効果を細胞レベルで検証する。
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