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環境・遺伝相互作用に着目した胎生期バルプロ酸曝露による自閉症発症分子基盤の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K06367
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分48030:薬理学関連
研究機関山陽小野田市立山口東京理科大学

研究代表者

中川 直  山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 講師 (30707013)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
キーワード自閉症 / バルプロ酸 / 神経細胞 / Setd5 / Kap1 / Krab / 遺伝子発現変化 / SETD5
研究開始時の研究の概要

自閉スペクトラム症(自閉症)は遺伝要因と環境要因の相互作用で発症すると言われている。特に環境要因の一つとして妊婦のバルプロ酸(抗てんかん薬)摂取が出生児の自閉症リスクを高めることが知られているが、発症メカニズムは解明されていない。申請者は予備的な研究において、バルプロ酸処理により自閉症関連遺伝子Setd5が減少することを見出した。申請者はSetd5遺伝子の発現減少はマウスレベルで自閉症を発症することを既に報告しているため、本研究では、バルプロ酸とSetd5の減少を繋ぐ分子メカニズムの解明し、「Setd5の発現減少がバルプロ酸摂取による自閉症発症の原因である」ことをマウスレベルで検証する。

研究実績の概要

本研究ではバルプロ酸曝露による自閉症発症機構の解明を目的としている。バルプロ酸の薬理作用の一つとして遺伝子発現制御が報告されているため、神経細胞(マウスNeuro-2a細胞)へのバルプロ酸処理により発現が変動する自閉症関連遺伝子を網羅的に同定したところ、バルプロ酸により有意に発現減少する遺伝子として、申請者が解析してきたSetd5が同定された。SETD5遺伝子のヘテロ欠損が自閉症患者で同定されており、Setd5ヘテロ欠損マウスは自閉症様症状を発症することを申請者らが既に報告済みである。これらのことから、Setd5の発現減少がバルプロ酸による自閉症発症に寄与する可能性が示唆された。
Setd5の発現を抑制する転写関連因子を探索するため、マウスNeuro-2a細胞における既存のChIP-Seqデータを解析したところ、Setd5遺伝子のエンハンサー領域に結合する転写抑制因子としてKap1が同定された。Kap1遺伝子を破壊すると、バルプロ酸によるSetd5の発現減少がほとんど観察されないことから、Kap1はバルプロ酸とSetd5の発現減少を繋ぐ分子と考えられた。
バルプロ酸によりKap1の発現は変動しないことから、Kap1はバルプロ酸存在下、何らかのメカニズムでSetd5遺伝子に誘引されると考えられた。このようなKap1の誘引は、およそ400種類存在するKrabタンパク質によって担われていると考えられている。解析対象とするKrabタンパク質を絞り込むため、バルプロ酸により発現誘導されるKrabタンパク質の同定を網羅的遺伝子発現解析により行ったところ、バルプロ酸によってRNAが誘導される44個のKrabタンパク質候補を抽出できた。このうち14タンパク質をコードするmRNAについて、RT-qPCRにより発現誘導されることを確認した。これらの遺伝子を破壊するためのCas9ベクターを作製した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

バルプロ酸処理によりSetd5遺伝子の発現が減少すること、また、それを仲介するタンパク質としてKap1を同定できた。さらに、Kap1タンパク質をSetd5遺伝子領域に誘引する可能性のあるおよそ400種類のKrabタンパク質のうち、バルプロ酸によるSetd5発現減少に関わると考えられる候補を44個まで絞りこむことに成功した。また、このうち14個についてはバルプロ酸により有意に発現が誘導されることを確認した。加えて、これら14個の遺伝子を破壊するためのCas9ベクターの作製も行った。
当初の計画では、解析対象とするKrabタンパク質について、これらを個別にsiRNAによって発現抑制し、バルプロ酸によるSetd5の発現抑制が回復するか検討する予定であったが、研究の過程で、ネガティブコントロールとして用いるランダム配列のsiRNAによってSetd5の発現が変動してしまうこと、またこの変動は製品のロットによって大きな差があることがわかり、急遽Cas9による遺伝子破壊に変更する必要が生じたが、研究の進行には影響がなった。

今後の研究の推進方策

解析対象とするKrabタンパク質について、これらを個別にCas9によって発現抑制し、バルプロ酸によるSetd5の発現抑制が回復するか検討する。ネガティブコントロールとして用いる空ベクターでは、siRNAとは異なり、Setd5の発現に影響しないことを確認済みである。
網羅的遺伝子発現解析から、バルプロ酸によって発現誘導される44個のKrabタンパク質候補を同定したが、一年目の研究でmRNAの発現誘導が確認できたのは14個にとどまった。他の30個についてはRT-qPCRで用いるプライマーの設計がうまくいかず、解析が出来なかったため、今後はこれらに対するプライマーをさらに複数用意し、発現誘導を確認したい。発現誘導が確認でき次第、それらに対するCas9ベクターを作製し、同様の実験を行ることで、責任Krabタンパク質の同定につなげる。
責任Krabタンパク質が同定でき次第、それらのノックアウトマウスを入手し、マウスレベルで当該Krabがバルプロ酸によるSetd5の減少に必要であること、およびこれらのノックアウトマウスはバルプロ酸による自閉症様症状の誘導に抵抗性があることを明らかにする予定である。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (16件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (14件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Recent progress on action and regulation of anorexigenic adipokine leptin2023

    • 著者名/発表者名
      Nakagawa Tadashi、Hosoi Toru
    • 雑誌名

      Frontiers in Endocrinology

      巻: 14

    • DOI

      10.3389/fendo.2023.1172060

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] アルデヒド代謝酵素ALDH2の機能不全によるエピジェネティック制御の破綻2024

    • 著者名/発表者名
      中川 直、森 光平、下垣 和香、城田 真輝、山脇 洋輔、北川 恭子、川上 英良、小澤 孝一郎、細井 徹
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] クロルプロマジンによって誘発される肥満病態のメカニズムの解明―レプチン抵抗性の関与の可能性―2024

    • 著者名/発表者名
      小谷 恭介、中川 直、細井 徹
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] HDACとレプチンシグナルの関係―抗肥満因子の細胞内制御機構の解明―2024

    • 著者名/発表者名
      松尾 菜々子、中川 直、細井 徹
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] TDP-43によるSETD5 Cryptic Exon 発現抑制2024

    • 著者名/発表者名
      柴田 凜太郎、中川 直、渡辺 靖章、中山 啓子、細井 徹
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 遺伝および環境要因による腸内細菌叢の変化と自閉症への関与2024

    • 著者名/発表者名
      飯野 幸恵、中川 直、水上 洋一、細井 徹
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 自閉症の遺伝的素因を持つマウスに対する炭素系微小粒子の妊娠期曝露が仔の脳発達に及ぼす影響2024

    • 著者名/発表者名
      小野田 淳人、福 梨紗、中川 直、立花 研、武田 健
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] マスト細胞の活性化におけるIRE1αの役割解明2024

    • 著者名/発表者名
      松嶋 剛志、岡本 花乃、松井 優里、梅田 渚、中川 直、柳瀬 雄輝、細井 徹、吉井 美智子、小澤 光一郎
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ヒストン脱アセチル化酵素 HDAC3 による神経突起制御2024

    • 著者名/発表者名
      松原 永佳、中川 直、細井 徹
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ヒストン脱アセチル化酵素HDAC3 による神経突起制御2023

    • 著者名/発表者名
      松原 永佳、中川 直、細井 徹
    • 学会等名
      第75回日本細胞生物学会大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] KBG症候群関連タンパク質ANKRD11は翻訳効率を介して細胞増殖を促進する2023

    • 著者名/発表者名
      指山 祥子、中川 直、細井 徹
    • 学会等名
      第75回日本細胞生物学会大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ALS関連RNA結合タンパク質は転写調節因子としてUNC13A mRNAの合成を促進する2023

    • 著者名/発表者名
      渡辺 靖章、鈴木 直輝、中川 直、青木 正志、中山 啓子
    • 学会等名
      第46回日本神経科学大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Setd5欠損型自閉スペクトラム症モデルに対する炭素系ナノ粒子の胎仔期曝露が脳機能に及ぼす影響2023

    • 著者名/発表者名
      福 梨紗、小野田 淳人、中川 直、立花 研、武田 健
    • 学会等名
      フォーラム2023 日本薬学会 環境・衛生部会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] IgE受容体を介したマスト細胞活性化におけるIRE1αの役割解明2023

    • 著者名/発表者名
      岡本 花乃、松嶋 剛志、中川 直、細井 徹、柳瀬 雄輝、吉井 美智子、小澤 光一郎
    • 学会等名
      第62回日本薬学会・日本薬剤師会・日本病院薬剤師会中国四国支部学術大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] アルツハイマー病モデル細胞の作成と評価2023

    • 著者名/発表者名
      長尾 理那 、中川 直 、山下 あつき 、山苗 広夢 、中野 百花 、東 真帆 、細井 徹 、小野 浩重
    • 学会等名
      第40回日本薬学会九州山口支部大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [備考] 山口東京理科大学教員紹介

    • URL

      https://www.socu.ac.jp/departments/faculty/tadashi-nakagawa.html

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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