研究課題/領域番号 |
23K06383
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48040:医化学関連
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
石倉 周平 福岡大学, 医学部, 准教授 (40336631)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | セントロメア / DNA損傷修復 / 相同組み換え / 非相同末端結合 / Single-strand annealing / びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 / びまん性大細胞型リンパ腫細胞 / RAD52 / ZFAT |
研究開始時の研究の概要 |
セントロメアは細胞分裂時の染色体の均等分配において中心的な役割を担っている。一方で、セントロメアはDNA損傷が生じやすい脆弱なゲノム領域であり、セントロメアにおけるDNA損傷が適切に修復されない場合は、染色体異常やゲノム不安定性の原因となり、ガンや遺伝性疾患の発症につながる。本研究により、セントロメアに特有なDSB修復機構の分子メカニズムが解明されることにより、セントロメアの異常が関係するガン・遺伝性疾患等の発症メカニズムの理解や治療法開発のための分子基盤の構築が進み、新しい研究領域の創成に貢献できる。
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研究実績の概要 |
セントロメアはDNA損傷が生じやすい脆弱なゲノム領域であるが、セントロメアにおけるDNA損傷の修復機構については不明な点が多い。本研究課題では、転写因子であるZFATによるノンコーディングRNA(ncRNA)の転写制御のセントロメアにおけるDNA損傷修復における役割を明らかにする。また最近、ZFATの遺伝子異常が、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の発症・進展に関連することが報告されたことから、ZFATによるセントロメアにおけるncRNA転写制御とDLBCLとの関連を明らかにすることを目指す。 2023年度には、CRISPR-Cas9を用いてセントロメア特異的にDNA損傷を誘導すると、相同組み換え(HR)、Single-strand annealing(SSA)、非相同末端結合(NHEJ)に関わる様々な因子が、セントロメアにおけるDNA損傷部位に集積することが明らかになった。さらに、NHEJ修復に関わる因子群は、セントロメアおよびその周辺に集積するのに対して、HRおよびSSA修復に関わる因子群は、セントロメアの端に集積することが明らかになり、これらの因子のセントロメアDNA損傷部位へのリクルートが空間的に別々に制御されていることが示された。 また、DLBCL細胞におけるZFATの機能解明においては、ヒトDLBCL細胞株であるSUDHL-4、Toledo、Pfeiifer細胞において、レンチウィルス感染系を確立し、ドキシサイクリン誘導型Cas9ヌクレアーゼと特異的sgRNA発現によるZFAT発現抑制細胞株を樹立した。SUDHL-4およびPfeiifer細胞では、ZFAT発現低下により細胞増殖が抑制されたが、Toledo細胞では、ZFAT発現低下は細胞増殖速度に影響を与えなかった。これらのDLBCL細胞株において、ZFATの生理的役割が異なっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画初年度において、セントロメア特異的にDNA損傷を誘導し、集積する因子を同定することにより、HR、SSA、NHEJ、いずれの経路もセントロメアにおけるDNA損傷修復に関与することが明らかになった。また、これらの因子群のセントロメアDNA損傷部位へのリクルートが空間的に別々に制御されていることが示されたことから、セントロメアにおけるゲノムまたはエピゲノム状態が、これらの修復経路の選択に重要であることが示唆された。 また、ZFAT発現低下が、SUDHL-4、およびPfeiffer細胞の細胞増殖を抑制したことは、DLBCL細胞におけるZFATの機能的重要性を示唆するものであり、その意義は大きいと考える。 これらのことから本研究課題は、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
NHEJとHR/SSA因子のセントロメアDNA損傷部位への集積が空間的に別々に制御されていることが明らかになったことから、その制御メカニズムを解明していく。さらに、HRとSSA修復因子群の集積部位についても、詳細に解析し、HRとSSA経路の使い分けについても明らかにする。また、細胞周期と各修復因子群の集積と関連についても、検討していく。これらの解析を通じて、セントロメアDNA損傷修復おけるHR、SSA、NHEJの経路選択の分子機序を明らかにする。 DLBCL細胞株におけるZFAT発現低下による細胞増殖抑制の機序について、アポトーシス、細胞周期、DNA損傷修復の視点から、検討を進めていく。また、ヒトDLBCL患者において同定されたZFAT遺伝子変異を導入したDLBCL細胞株を樹立し、その影響を明らかにする。
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