配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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研究開始時の研究の概要 |
ビタミンC(Asc)は過剰な炎症応答を抑制し敗血症治療に有効である。しかしマクロファージの遺伝子発現や代謝にAscがどのように作用するか詳細は明らかでない。本研究はAsc合成不全を示すアルデヒド還元酵素遺伝子(Akr1a)欠損マウスを用いてAscによる敗血症改善の分子機構解明を目指す。Akr1a欠損マウスと野生型マウスについてLPS刺激後の肝臓・肺・血漿の代謝物・タンパク質について定量比較解析し,変動タンパク質のパスウェイ検索を行う。候補代謝経路遺伝子について欠損・ノックイン細胞を作製し,細胞生物学的検討を実施する。Ascによる保護機構の解明は,他の炎症性疾患の治療にも貢献すると考えられる。
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研究実績の概要 |
Ascの作用とM1マクロファージへの分極ならびにその特性との関連を明らかにするために, 野生型と (Asc合成能が約10%に低下している) Akr1a欠損(±Asc補給) マウスにLPSを投与して敗血症モデルを作製した。フローサイトメトリー解析でM1マクロファージへの分極の程度と炎症性サイトカインの産生量を調べた。サイトカイン産生量はAsc欠乏で増加したが, M1マクロファージへの分極は予想に反し低下した。次に, 抗炎症に働くイタコン酸・ポリアミンの産生量がAscにより増加するか調べるために, 肝臓・肺や血漿中の代謝産物をLC-MS解析した。Asc欠乏マウスでは顕著に肺のイタコン酸, スペルミジン, プトレシンが増加した。さらに, 肝臓抽出物, 肺抽出物, 血漿タンパク質を網羅的に定量比較した。Asc欠乏マウスの血漿はLPS刺激で22種類のタンパク質が増加し, 8種類のタンパク質が減少した。ほとんどのタンパク質は野生型マウス, あるいはAsc補給欠損マウスでのLPS刺激の応答と挙動が一致していた。Asc欠乏マウスの肝臓はLPS刺激で19種類のタンパク質が増加し, 7種類のタンパク質が減少した。このうち17種類のタンパク質はAsc欠乏マウスの肝臓でのみLPS刺激で増加し, 4種類のタンパク質はAsc欠乏マウスの肝臓でのみLPS刺激で減少した。GO解析の結果増加タンパク質は血液凝固関連タンパク質, 減少タンパク質は細胞接着タンパク質だった。Asc欠乏マウスの肺はLPS刺激で17種類のタンパク質が増加し, 5種類のタンパク質が減少した。このうち12種類のタンパク質はAsc欠乏マウスの肝臓でのみLPS刺激で増加し, 5種類のタンパク質はAsc欠乏マウスの肝臓でのみLPS刺激で減少した。GO解析の結果増加タンパク質は血液凝固関連タンパク質, 減少タンパク質は細胞接着タンパク質だった。
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今後の研究の推進方策 |
予想に反してAsc欠乏マウスではM1マクロファージへの分極が低下していたのでM2マクロファージへの分極と比較して割合が変化しているか検討する。また, Asc欠損マウスの肺ではイタコン酸, スペルミジン, プトレシンが増加していたのでポリアミン合成系を含めた検討を行う。また, 当初の予定に沿って, クエン酸回路・尿素回路に関する検討, Ascが腸内細菌叢に与える影響の検討を行う。
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