研究課題/領域番号 |
23K06412
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49010:病態医化学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊藤 美佳子 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (60444402)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 微弱磁場 / ミトコンドリア / ELF / ラジカルペアメカニズム / うつ病 / 弱磁場 / 低周波磁場 |
研究開始時の研究の概要 |
現代社会では人は日常的に地磁気や電化製品などによる超低周波磁場にさらされているが、微弱な磁場が生体に影響を与える報告はほとんどない。我々は1-8 Hzで8秒間に変動する10 μTの超低周波微弱パルス磁場がマイトファジーを誘導後ミトコンドリア新生を促進し、ホルミシス効果によりミトコンドリアを活性化することを見出した。本研究ではパーキンソン病の神経精神疾患とミトコンドリア病に対する超低周波微弱パルス磁場の効果を、モデルマウス、患者由来Cybrid細胞、患者由来iPS細胞を用いて検証する。さらに、生物に対する作用機構が知られていない超微弱磁場の量子力学的作用機構を明らかにする。
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研究実績の概要 |
現在社会において人は地磁気や電化製品などによる超低周波磁場に日常的にさらされているが、微弱な磁場が生体に影響を与える方向はほとんどない。我々は1-8 Hzで8秒間に変動する10マイクロテスラの超低周波微弱パルス磁場(ELF-WMF)がマイトファジーを 誘導後ミトコンドリア新生を誘導し、ホルミシス効果によりミトコンドリア活性化すること見出している。 本研究の目的は、ELF-WMFの標的分子と作用メカニズム、病態効果に重点をおき、疾患への新たな非侵襲的治療法の開発を行うことである。 本年は、HEK293 細胞にELF-WMFの3 時間照射により、HSP70/90 のアセチル化を顕著に増加させ、HSP70/90 の HOP/STIP1 への結合を顕著に上昇させた。ELF-EMF はタンパク質凝集を減少させ、細胞生存率を向上させた。また、ミトコンドリアの最大酸素消費量を上昇させることを明らかにした(Huang Z, Ito M et al. Ecotoxicol Environ Saf. 2023) 。 ELF-WMFの臨床応用の対象として、うつ病患者においては中枢神経ミトコンドリア機能低下していることから、超微弱パルス磁場照射によるミトコンドリア恒常性上昇がうつを軽減することが期待できる。現在ELF-WMFをうつ病モデルマウスに照射し治療効果を検証しており、行動試験においていくつか効果を確認しているところである。さらに、生物に対する作用機構が全く知られていない超微弱磁場の、量子力学的作用機構を明らかにするため、ミトコンドリア電子伝達系複合体のラジカルペアメカニズムの量子もつれによる磁場効果の解明に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超低周波磁場はヒートショックタンパク質のアセチル化を誘導し、タンパク質の折り畳みを強化することを見出し、論文を発表することができた。病態に対するELFーWMFの効果は2種類のうつ病モデルマウスを作製し、効果の検証を行なっている。社会的敗北モデルにおいては、行動試験で効果がみられ、ミトコンドリアの活性化の傾向も見られる。慢性うつ病モデルに対しては、行動テストで効果がみられ、今後タンパク質や遺伝子発現レベルを調査する。 また、文部科学省 科学研究費 学術変革領域研究 『学術研究支援基盤形成』先端モデル実験プラットフォームでの生理機能解析支援に採択され、ELF-WMFを4週間照射した野生型マウスの行動・生理機能解析を支援いただいている。
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今後の研究の推進方策 |
2種類のうつ病モデルに対するELF-WMFの効果を、(i)行動試験によるうつ症状の評価、(ii)ストレスマーカーである血中コルチコステロンの測定、(iii)うつ病で変化する脳内神経伝達物質モノアミンの測定、(iv)脳組織の神経栄養因子BDNFシグナリングパスウェイの調査、(v)脳組織の細胞ミトコンドリア活性能をATP産生量・ミトコンドリア膜電位・タンパク量から評価する。さらに、(vi)海馬の網羅的な遺伝子発現解析を行い、超微弱パルス磁場による分子相互作用の解明に取り組む。 一方で、この特定条件の弱磁場がなぜミトコンドリアの恒常性に変化を与え、病態に効果を表すのかは不明である。磁場の細胞・生体への効果、さらには病態制御効果と臨床応用に繋げるためには、磁場の生体への作用メカニズムと細胞の反応パスウェイを明らかにすることは不可欠であり、分子作用機構は生物学レベルだけでなく、量子論レベルでこの現象の物理的原理を明らかにする必要がある。本研究で標的にしているミトコンドリアの磁場効果は、電子移動反応の際のラジカル対電子スピンの量子もつれによると考えており、ミトコンドリア活性測定を駆使して証明を目指す。
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