研究課題/領域番号 |
23K06429
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
堀江 良一 神奈川工科大学, 健康医療科学部, 研究員 (80229228)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | CD30 / HTLV-1 / ゲノム異常 / PD-L1 / NF-κB阻害薬 / ATL / NF-κB |
研究開始時の研究の概要 |
これまでの研究でCD30がHTLV-1感染細胞の一部に発現してゲノム異常を誘発、感染細胞は病態の進行とともに増加、ATL発症に重要な役割を果たしていることを示した。その後の研究でCD30によるNF-κB活性化の誘導がゲノム異常細胞の生存や増殖に密接に関与している可能性を見出した。 本研究ではCD30によるHTLV-1感染細胞の腫瘍化・進展にはゲノム異常の誘発のみならず、NF-κB活性化によるゲノム異常細胞の「細胞死阻止と免疫回避」が重要であることを示し、分子標的としてのNF-κBの重要性を示す。成果は本研究で予定している特異的NF-κB 阻害薬開発と合わせてATLの発症予防と治療に寄与しうる。
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研究実績の概要 |
HTLV-1感染細胞株、ATN-1とTL-Om1におけるCD30の発現をフローサイトメトリーにより確認し、CD30L/CHOまたはvec/CHOと共培養(CD30刺激ありまたはなし)した後にHTLV-1感染細胞株を回収した。生細胞数のカウントではCD30刺激により生細胞数の減少を認めた。抗γ-H2AX抗体によるDNA二本鎖切断の検出ではCD30刺激によりDNA二本鎖切断の増加を認めた。PD-L1の発現誘導の検討を抗PD-L1抗体を用いた蛍光免疫染色により行ったところ、CD30刺激でPD-L1の発現が誘導された。以上のことより、CD30刺激はHTLV-1感染細胞株に対してゲノム異常と増殖抑制を誘発すること、免疫回避に関与する分子であるPD-L1の発現を誘導することが示された。 NF-κBのN末端に直接結合して核移行を阻害する新規NF-κB阻害薬のスクリーニングを、AMEDの生命科学・創薬研究支援基盤事業(BINDS)より入手した天然化合物ライブラリーを用いて行った。天然化合物ライブラリーは約800種類の化合物からなるが、スクリーニングにより約10種類の候補化合物を得ることができた。スクリーニングは当初予定していた系をそのまま変更せずに用いて問題なく進めることができた。候補化合物の中には開発を加速化できる可能性のあるものが含まれていた。候補化合物についてはHTLV-1感染細胞株を用いてNF-κB阻害や細胞増殖抑制におけるED50について検討を行った。これらの結果を踏まえて、候補化合物の構造と特性について検討を行うと同時に誘導体の合成も含めてさらに検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HTLV-1感染細胞株に対するCD30刺激の影響については、ゲノム異常の誘発や免疫回避に関与するPD-L1の誘導を示すことができた。化合物ライブラリーのスクリーニングによる新規NF-κB阻害薬の開発については、AMEDの生命科学・創薬研究支援基盤事業(BINDS)から入手した天然化合物ライブラリーを用いて順調にスクリーニングを行うことができ、複数の候補化合物を得た。当初計画した予定を引き続き継続することが可能であり、本研究課題はおおむね予定通りに進捗していると考えることができる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はHTLV-1感染細胞株に対するCD30刺激の影響について、ゲノム異常の誘発や免疫回避に関与するPD-L1の誘導を示すことができたが、この過程におけるNF-κB活性化の関与についてさらに検討を進めていく。CD30刺激によるゲノム異常の誘発についてはCGHによる解析を行うことにより、ゲノムDNAの増幅や欠損を検出していく。PD-L1プロモーターにはNF-κB結合領域が存在することを既に確認している。CD30刺激によるPD-L1誘導におけるNF-κB活性化の関与について詳細な検討を行う。 新規NF-κB阻害薬のスクリーニングは、AMEDの生命科学・創薬研究支援基盤事業(BINDS)から入手した天然化合物ライブラリーを用いて順調に進めることができ、約10種類の候補化合物を得ることができた。候補化合物の中には開発を加速化できる可能性のあるものが含まれていた。候補化合物については構造と特性についての検討を踏まえて、誘導体の合成などを行い研究を進めていく。前臨床への展開にはさらなる資金が必要となる。本研究課題の成果をさらに展開していくためには製薬企業等との連携が重要であり努力をしていく。製薬企業等に対してNF-κB阻害薬の開発が、がんのみならず炎症、免疫異常に伴う疾患に対しても有用で、創薬対象として開発のメリットがあることをアピールして行きたい。
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