研究課題/領域番号 |
23K06430
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山ノ井 一裕 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80464965)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | αGlcNAc / TFF2 / MUC6 / 糖鎖 / 粘性 / glycosylation / mucin / carcinoma |
研究開始時の研究の概要 |
αGlcNAc糖鎖修飾を介した幽門腺型粘液のがん抑制の分子生物学的なメカニ ズムをさらに明らかにし、また、気管分泌物や膵液、胆汁などにおいて粘液中にふくまれ るαGlcNAcやMUC6を計測するツールを開発し、組織生検だけでなく、より低侵襲に採取で きる細胞診や排出体液材料を用いた、早期がんの診断に応用することで、粘液に着目したがんの早期診断法を生み出し、さらに、新たな癌悪性化の機序を明らかにしたい。
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研究実績の概要 |
我々は、これまでの研究で、幽門腺粘液を形成する糖蛋白では、その終末にαGlcNAcと呼ばれる糖鎖が特異的にみられ, 幽門腺粘液産生細胞が腫瘍化すると、その悪性度が増すにつれて糖鎖修飾が失われることを明らかにしてきた。 αGlcNAcの消失がどのような機序で細胞の悪性化に寄与しているのか検討する中で、in vitroにおいてαGlcNAcに特異的に会合することが明らかにされている、小型の蛋白であるTFF2に着目した。TFF2とαGlcNAcの発現をヒトの十二指腸の幽門腺型腺腫で検討したところ、低異型度の腫瘍ではTFF2とαGlcNAcはともに発現がみられるが、高異型度になると、両者ともに消失することが明らかになった。なお、幽門腺型粘液を常に産生している既存のブルンネル腺では、両者とも発現がみられた。 このことから、幽門腺型粘液産生腫瘍において、悪性度の亢進とともにαGlcNAcが消失し、それにあわせて、αGlcNAcに会合していたTFF2も消失することが明らかになった。これらの結果は、日本癌学会にて発表するとともに、Scientific Reportsにも報告した。 さらに、我々は、TFF2によるαGlcNAcとの会合により、幽門腺型粘液を形成する糖蛋白が架橋され、その働きが増強されることにより、細胞の腫瘍化を阻止しているのではないかという仮説をたて、それを検証するために、αGlcNAc欠損マウスを用いた実験にて、マウスの胃粘液の粘性とTFF2の発現の関連を確認し、上記の仮説の検証を今後進めていく予定である。 本研究遂行のため、マウスを有している信州大学医学部分子病理学教室との共同研究を今後さらに進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床検体を用いた研究について、臨床科との良好な協力関係が築けられており、予定通り研究が進められている。
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今後の研究の推進方策 |
αGlcNAc欠損マウスの胃粘液の粘性について、粘度計を用いた測定を行う。また、同マウスにおいてもαGlcNAcと会合する可能性のあるTFF2が欠損マウスでは消失がみられるかどうか、免疫組織化学的手法を用いて検討する。 さらに、ヒトの胃における粘性についての検討も行いたいが、直接胃液を採取する方法ではなかなか検討が難しい。ただし、内視鏡検査ではインジゴカルミンの散布により、腫瘍部では同色素が消失しやすいことが既に知られている。我々は、粘性の低下によりこの色素が消失しやすくなっている可能性を考え、内視鏡検査にてインジゴカルミンの消失した部位におけるαGlcNAcの発現やTFF2の発現を検討することで、ヒトでの上記の仮説についてさらに検証を進める予定である。
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