研究課題
基盤研究(C)
唾液腺導管癌(SDC)は,悪性度の高い希少癌である。我々はアンドロゲン受容体とHER2が高率に発現するという特性に着目して,新規治療法(複合アンドロゲン遮断療法と抗HER2療法)を施行し,高い奏効率を得た。しかし,これらの治療効果予測因子は明らかになっていない。一方,癌の進展や免疫チェックポイント阻害剤の治療効果予測因子として注目されている癌免疫微小環境についても,本腫瘍では未だ不明である。本研究では,約300例のSDC標本を用いて,病理組織学的検討,免疫組織化学的検索,および遺伝子解析を行い,予後因子,新規治療の効果予測因子,および免疫逃避分子機構の解明とそれらに基づく治療法の確立を目指す。
当該年度では唾液腺導管癌(SDC)におけるHER2の機能解析を主に行った。HER2陽性局所進行・再発転移SDCに対してはトラスツマブ+ドセタキセル(Tmab+DTX)療法が施行されるが、治療抵抗性を示す症例が存在している。今回我々は、種々の臨床病理学的因子が、HER2陽性SDCに対するTmab+DTX療法の治療効果に与える影響を検討した。国際医療福祉大学三田病院でTmab+DTX療法が行われたHER2陽性SDC症例100例を対象とした。HER2増幅はDISH/FISH法、腫瘍内不均一性はIHC・DISH法で解析した。HER2コピー数はDISH法で12.6±4.20、FISH法で10.6±5.55、またHER2/CEP17比はDISH法で7.76±2.84、FISH法で5.32±2.73であり、これら2つの解析方法による値は有意に相関していた。さらに、HER2腫瘍内不均一性は100例中13例(13%)に認められた。HRAS及びBRAFに変異を有する症例はなく、PIK3CA変異は2例、PTENホモ欠損は6例であった。HER2コピー数、HER2/CEP17比、HER2腫瘍内不均一性、PI3K/AKT/mTOR経路に関連する蛋白/遺伝子の異常、TIL、CD8陽性細胞割合のいずれもが奏効率やPFSとの有意な関連性はなかった。一方、タキサン系薬の治療歴を有する群は有意にPFSが短く、DTXの相対用量強度が0.7未満の群でも有意に奏効率が低かった。HER2陽性SDCにおいて、今回検討した分子病理学的因子とTmab+DTX療法の治療成績との関連は明らかでなかった。しかし、臨床的因子の解析から、本治療法の効果を向上させるには、投与時期やDTX投与量を適切に考慮する必要性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
申請書に記載した研究内容の約1/3程度を実施し、これらの成果を国際誌に投稿準備中である。
来年度は唾液線導管癌のp53遺伝子変異に着目し引き続き解析を行う方針であり、その成果を順次、国際誌に英語論文として報告する。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (29件) (うち国際共著 3件、 査読あり 24件、 オープンアクセス 17件) 学会発表 (43件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 図書 (10件)
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