研究課題/領域番号 |
23K06442
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
赤澤 祐子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80582113)
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研究分担者 |
松田 勝也 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 准教授 (20380967)
宮明 寿光 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (20437891)
中島 正洋 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (50284683)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 放射線 / DNA instability / Epitheilum / colitic cancer / ulcerative colitis / Colitic cancer |
研究開始時の研究の概要 |
潰瘍性大腸炎の長期罹患による大腸癌(colitic cancer)病理診断はしばしば難しく、発癌リスクの予測は困難である。多段階発癌にはゲノム不安定性が寄与しており、その存在は組織中のDNA損傷応答蛋白p53 binding protein 1(53BP1)核内フォーカス解析により推定可能である。さ本研究の目的は腸管幹細胞における53BP1核内フォーカスを、in situでの空間的・経時的なゲノム不安定性としてキャプチャーし、炎症性発癌診断補助および早期リスク予測のマーカーとしての基盤を確立することである。
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研究実績の概要 |
潰瘍性大腸炎(UC)は、大腸の慢性炎症と潰瘍に特徴付けられ、長期間にわたり大腸がんを発症するリスクがある。DNA損傷応答はUCにおける炎症と発がんの両方に関与する。しかし、潰瘍性大腸炎における上皮内のDNA損傷応答およびその炎症状態と異形成との関連は不明である。p53結合タンパク質1(53BP1)は、二本鎖切断部位に蓄積し核焦点を形成し、これによりDNA損傷応答の分子マーカーとして機能する。本年度の目的は、UC標本における53BP1核焦点発現パターンを可視化し、53BP1発現パターンと臨床学的・病理学的特徴との関連を評価することである。UCの病理標本をを用いて検討した。3個以上の以上の53BP1 nuclear focusと/または直径1μm以上のnuclear focusを有する発現パターンを異常なパターンと定義した(Akazawa et al、Modern pathology、2019年)。その後、各ケースの臨床情報(年齢、性別、疾患期間、炎症活動など)と53BP1の各発現パターンの割合を評価した。さらに、増殖状態でのDNA損傷応答の異常なタイミングを示す53BP1とKi67の共局在を、UC4例、異形成4例、大腸癌3例の標本で53BP1、Ki67、およびAE1/AE3の3重免疫蛍光検査によって測定した。本年度の検討では53BP1異常パターンの発生率は、UC(異形成なし)群とコントロール群を比較して有意に増加していた。 UC内での異常な53BP1発現の割合は、CRP(p=0.0296)、Mayo内視鏡スコア(MES、p=0.0122)、Mayoスコア(p=0.0050)、および組織学的重症度(p=0.0054)と正の相関を認めた。一方、Ki67/53BPの co-localization の頻度は低かった。これらのことより、潰瘍性大腸炎の53BP1発現は重症度予測に寄与する可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
潰瘍性大腸炎(UC)は、大腸の慢性炎症と潰瘍に特徴付けられ、長期間にわたり大腸がんを発症するリスクがある。DNA損傷応答はUCにおける炎症と発がんの両方に関与する。しかし、潰瘍性大腸炎における上皮内のDNA損傷応答およびその炎症状態と異形成との関連は不明である。p53結合タンパク質1(53BP1)は、二本鎖切断部位に蓄積し核焦点を形成し、これによりDNA損傷応答の分子マーカーとして機能する。本年度の目的は、UC標本における53BP1核焦点発現パターンを可視化し、53BP1発現パターンと臨床学的・病理学的特徴との関連を評価することである。本年度の検討では53BP1異常パターンの発生率は、UC(異形成なし)群とコントロール群を比較して有意に増加していた。 UC内での異常な53BP1発現の割合は、CRP(p=0.0296)、Mayo内視鏡スコア(MES、p=0.0122)、Mayoスコア(p=0.0050)、および組織学的重症度(p=0.0054)と正の相関を認めた。潰瘍性大腸炎の重症度予測に53BP1発現は寄与する可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
消化管では慢性炎症を背景とした発癌が見られ、潰瘍性大腸炎の長期罹患による大腸癌(colitic cancer)はその代表例である。しかし、炎症性腸疾患に生じた異形成およびcolitic cancerの病理診断はしばしば難しく、発癌リスクの予測は困難である。多段階発癌にはゲノム不安定性が寄与しており、その存在は組織中のDNA損傷応答蛋白p53 binding protein 1(53BP1)核内フォーカス解析により推定可能である。さらに近年、G-protein-coupled receptor (Lgr5)+腸管上皮幹細胞の自律増殖が大腸発癌につながることが明らかになった。しかし、ヒト組織中の腸管幹細胞におけるDNA損傷応答の可視化に着目した研究はほとんどない。本研究の目的は腸管幹細胞における53BP1核内フォーカスを、in situでの空間的・経時的なゲノム不安定性としてキャプチャーし、炎症性発癌診断補助および早期リスク予測のマーカーとしての基盤を確立することである。
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