研究課題/領域番号 |
23K06464
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
倉田 美恵 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 講師 (80423440)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
|
キーワード | 自然炎症 / インフラマソーム / 心不全 / 自然免疫 |
研究開始時の研究の概要 |
心不全の原因はさまざまであるが、その一つに慢性炎症の関与がある。NLRP3インフラマソームはIL-1βを活性化する細胞質内タンパク質複合体の一つであることから、心不全に関与していることが予想されるが、「心不全の発症にNLRP3インフラマソームがどのように関与しているのか」という本研究課題の核心をなす学術的「問い」への答えは明らかではない。そこで応募者は、心不全が原因で亡くなったとされる剖検症例の動脈や心筋などの責任病巣でのNLRP3インフラマソームの発現の意義を明らかにする目的で、インフラマソームが恒常的に活性化しているモデルマウスを用いて、心不全を発症するまでのNLRP3インフラマソームの寄与を明らかにしたい。
|
研究実績の概要 |
申請者は、循環器系疾患の病態には慢性炎症があり、長期的な経過で動脈硬化症や心不全に悪影響を及ぼすことを臨床の場で体感してきた。その病態解明のため、NLRP3 インフラマソームが恒常的に活性化しているモデルマウス)を用いることで動脈硬化におけるNLRP3 インフラマソームの関与を評価できると考えた。 私たちが樹立したNLRP3活性型モデルマウスでは、末梢血中の好中球増多、生後約3 日目から好中球浸潤を主体とした無菌性急性炎症が認められ、心筋内に好中球浸潤を主体とした無菌性急性炎症像が生じる。本マウスは予想と反し動脈硬化を生じなかった一方で、経時的に心肥大が生じ機能的にも心不全となり自然死することが明らかとなった。 本マウスとASC 機能的欠失マウスとの交配によって、長期生存率は野生型マウスと同等となっり、premature deathが抑制できることを確認した。かつ、組織学的には全身性に生じていた無菌性急性炎症が抑制されることを組織学的に確認した。さらに、flow cytometryによる血球分画は、好中球比率は野生型と同等にまで改善している事、骨髄像も過剰な「右方移動」が改善している事を見出した。 動脈硬化にもNLRP3インフラマソームが深くかかわっているとの報告が多いが、心不全は異なる機序で発症していることがモデルマウスの長期観察によって明らかになった。さらに、ASC欠失によりNLRP3シグナルが伝わらないことでその病態を軽減できることを意味している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
NLRP3活性型モデルマウス、ASC欠失マウス、野生型マウスにおいて、それぞれの生体を用いた長期観察・心エコーを含む循環機能的・全身の組織学的解析はほぼ終了し順調に進捗した。白血球分画の確認も終え、それぞれの系統におけるインフラマソーム活性を評価する予定である。 当初2023年度にヒト検体における検討として、心不全剖検症例における不全心筋でのNLRP3インフラマソーム構成分子の発現解析当教室に保存されて剖検例から臨床的に心不全死が指摘されていた症例、指摘されていなかった症例それぞれの左心室を選出し、NLRP3インフラマソームの構成分子である、NLRP3, ASC, caspase-1, IL-1bの発現を免疫組織学的に明らかにすることを目標としたが、剖検心を用いたインフラマソーム免疫染色を予定していたが、死後時間経過、不適切な固定状況などサンプルとして不適な症例が多く症例集めに時間がかかっている。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続きヒト検体のサンプル策定を行う。 また、私たちは既に東大創薬機構から提供されたコアライブラリーを用いてNLRP3インフラマソームのみを細胞外に再構成したコムギ胚芽無細胞インフラマソーム再構成系を用いて探索し、NLRP3インフラマソームのみを標的とした化合物を同定している。申請者が同定した化合物、MCC950のNLRP3阻害薬を若年時から投与し下記を行う。骨髄好中球活性化、寿命の変化をLPSで刺激した後に、最大48時間培養し、FITC標識Annexin Vを用いて蛍光染色したのちにflow cytometryでアポトーシス細胞を検出する。機能評価として心臓超音波検査で心機能、病理学的に線維化を定量し心不全に対する効果を比較する。
|