研究課題/領域番号 |
23K06475
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
蔦 幸治 関西医科大学, 医学部, 教授 (00392332)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 迅速細胞診 / 腫瘍細胞 / 核酸抽出 / 分子病理学 |
研究開始時の研究の概要 |
悪性腫瘍の治療には分子標的治療の導入が必須な時代となってきている。分子診断の成否には、十分な腫瘍量の確保が必須条件である。腫瘍量の確認にはベッドサイドで行われる迅速細胞診(rapid on-site cytologic evaluation; ROSE)が導入され、診断成績の向上や、合併症の減少報告されてきている。 今回我々は、液状検体の採取検体量がリアルタイムに確認可能な、位相差顕微鏡を応用したMobile ROSEが十分量の検体確保に対する有用性の評価と画像の人工知能解析などの情報を付加することでより精度が高く簡便なROSEをサポートする機器の開発を行う事を目的としている。
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研究実績の概要 |
穿刺吸引細胞診での3大サンプリングエラーは、細胞数過小・乾燥・血液混入である。これらを軽減する目的で行われる迅速細胞診(rapid on-site cytologic evaluation: ROSE)は検体採取を行う患者のベッドサイドで、穿刺吸引物から染色標本を作製し、検査士または医師が検鏡することで、腫瘍細胞の有無を判断する手法である。多機能一体型顕微鏡Mobile Rose(yamachu社)は、ROSE下でのサンプリングエラーを低減するために開発された機器であり、細胞が適正に採取できたか否かは判断できるものの、採取検体の定量性や腫瘍細胞の有無までは判断できない。 本研究では、3種類のヒト細胞株(HEK293AD、SCC25、T47D)を用いて、一定細胞数(1×10^5、3×10^5、1×10^6個)のMobile Rose画像を取得した後、核酸抽出キットを使用してDNAおよびRNAを同時精製し、定量化を試みた。その結果、「細胞数」「Mobile Rose画像」「DNA・RNA量」には相関関係があることを確認した。今後、Mobile Rose画像のpixel定量化を実施し、検体のMobile Rose画像から採取可能な核酸量を予測するシステムの開発を行う予定である。その他、上述の細胞株を5-アミノレブリン酸(5-ALA)溶液に37℃で2時間反応させたところ、腫瘍細胞特異的に5-ALA代謝産物であるプロトポルフィリンIX(PpIX)が蓄積し、375-445 nm励起により600-740 nmの赤色蛍光を発することを確認した。培養細胞では、細胞数を正確に調製できる利点がある一方、細胞診検体を模倣した細胞塊を調製するのが困難であるため、現在、患者由来オルガノイドを用いた同様の解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の令和5年度研究計画は、培養細胞(ヒト細胞株)を用いて「Mobile Rose画像」および「DNA・RNA量」の相関関係を検討することである。3種類のヒト細胞株(HEK293AD、SCC25、T47D)を用いて、一定細胞数(1×10^5、3×10^5、1×10^6個)のMobile Rose画像を取得した後、核酸抽出キットを使用してDNAおよびRNAを抽出・精製し、定量化を実施した。その結果、正の相関関係を認めたことから、Mobile Rose画像に基づく細胞のpixel定量化以外、ほぼ計画通りに遂行できた。一方、培養細胞(ヒト細胞株)を用いた5-ALAの迅速染色条件の検討については、37℃で30分以上2時間の反応により腫瘍細胞特異的に5-ALA取り込みとPpIX蓄積が起こることを確認したが、プロベネシド添加により15分以下に短縮できるか否かは十分な検証に至らず、さらなる解析が必要である。その他、令和6年度研究計画の患者検体を用いた解析について、前倒しで乳癌オルガノイドのMobile Rose画像取得および核酸抽出用サンプルの準備が進んでおり、総合的に判断して本研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞(ヒト細胞株)で得られた結果に基づき、Mobile Rose画像からDNAおよびRNA量を予測するシステムの開発を行う。具体的には、Mobile Rose画像のpixel定量化を実施した後、細胞のpixel数とDNAないしRNA量の紐付けを行う。ヒト細胞株のデータに加え、細胞塊であるオルガノイドのデータを集積することにより、精度を向上させる。そして、最終的には細胞診検体を用いて、予測システムと実測値がどの程度一致しているか検証を行う。 迅速に腫瘍細胞の有無を評価するシステムの開発に関しては、引き続き5-ALA取り込みとPpIX蓄積を促進する条件を検討する。具体例として、5-ALA代謝経路に着目し、PpIX排出経路の阻害剤添加などを試みる。その他、5-ALA以外の腫瘍特異的に標識できる物質および方法の探索を行う。
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