研究課題/領域番号 |
23K06484
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
市戸 義久 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80452978)
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研究分担者 |
三高 俊広 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50231618)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 肝幹・前駆細胞 / Thy1陽性間葉系細胞 / EVs / CINC-2 / miR-199a-5p / 肝再生 / 細胞外小胞 (EVs) / デザイナー細胞 / 肝前駆細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
デザイナー細胞とは「細胞にデザイン(人工改変)を実施し、治療につながる機能強化を施したもの」と定義される。我々は、ラット骨髄由来間葉系細胞(BM-MCs)が分泌する細胞外小胞(EVs)に含まれる肝再生促進因子としてmiR-146a-5pを同定し、強制発現させたBM-MCsから抽出したEVsを障害肝モデルに投与すると内在性肝前駆細胞が増大し肝再生が促進することを見出した。この知見はmiR-146a-5pを強制発現させたBM-MCsはデザイナー細胞として高い可能性を秘めていることを示唆する。本研究は、新たな再生誘導因子の探索とその再生機序を解析し、デザイナー細胞による創薬に繋げたい。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は骨髄間葉系細胞や肝幹・前駆細胞由来の細胞外小胞(Extracellular vesicles; EVs)による再生誘導機序の解析、及び新たな肝前駆細胞の増殖促進因子、成熟化誘導因子の探索とその再生誘導機序の解明、そして急性肝炎モデルやNASHモデルへの治療有効性の検討であり、同定した因子をBM-MCsや肝幹・前駆細胞に強制発現させ、デザイナー細胞を作製し、培養上清(Conditioned medium: CM)から抽出したEVsを重症肝疾患治療の創薬に繋げることである。2023年度の本研究において、Galactosamine投与ラット障害肝臓から単離したThy1陽性間葉系細胞を、肝細胞の増殖を抑制した後に肝臓の2/3を切除したラット肝臓に移植すると、移植したドナー細胞が分泌するEVsに含まれるCytokine-induced neutrophil chemoattractant-2 (CINC-2)が類洞内皮細胞(Sinusoidal endothelial cells; SECs)に対し、Interleukin(IL)-17Bを誘導すること、またmiR-199a-5pを含むEVsが肝臓のマクロファージであるクッパー細胞( Kuppfer cells; KCs)を活性化させることで、レシピエント肝臓に元々存在する肝前駆細胞を活性化させ、肝再生を促進する、という肝再生メカニズムを解明した。本研究成果は国際科学誌Stem Cell Research & Therapyに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)Thy1-EVs由来miRNAの解析: Thy1陽性細胞由来EVsに含まれる因子をmiRNA アレイ解析を行い、発現の高い6因子を抽出、Realtime PCRで確認出来たものとしてmiR-125b-5p, miR-145-5p, miR-199a-5p, miR-451-5pの4因子を同定した。microRNAのmimicをSHs培養液に添加し、増殖能を検討したところ、miR-125b-5p とmiR-199a-5pがSHsの増植を有意に促進した。miR-125b-5p とmiR-199a-5pをレンチウイルスを用いてThy1陽性細胞に強制発現させると、miR-199a-5p を発現させた細胞にのみ分泌EVs中に含まれるmiR-199a-5pの量が約20倍高まったが、miR-125b-5pは強制発現できなかった。次にmiR-199a-5pを強制発現した細胞と分泌したEVsをRetrorsine(Ret)/部分肝切除(PH)モデルにそれぞれ移植したところ、細胞を移植した場合においてのみSHPCsが増大したが、EVsにはその効果は認められなかった。
2)Thy1-EVs由来サイトカインの解析 Thy1-EVsのサイトカインアレイ解析の結果、CINC-2とMonocyte chemotactic protein 1 (MCP-1)の2因子を抽出した。この2因子をそれぞれSHs培養液に添加し、増殖能を検討したところ、共にSHsの増殖を促進しなかったが、正常ラット肝臓から単離したSE-1陽性SECsとCD68陽性KCsにCINC-2とMCP-1を投与したところ、CINC-2を投与した場合でのみ、IL17bが有意に誘導された。次に、Thy1-EVsを正常肝臓由来CD68陽性KCsに投与することで、Cinc-2,IL25, miR-199a-5pの発現が有意に誘導された。
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今後の研究の推進方策 |
Thy1陽性細胞は肝障害時に一過性に出現する細胞であるため、臨床応用のための細胞単離が難しい。また、そのThy1陽性細胞の起源とその活性化機序はまだ明らかになっていないので、Thy1陽性細胞の起源について検討を行なっている。 GalN投与3日目(GalN-D3)の肝臓では小葉内にThy1陽性細胞が浸潤しているが、正常肝臓では門脈周囲と小葉内の一部にしか発現していない。そこで、門脈周囲のThy1陽性細胞をPortal-Thy1, 小葉内のThy1陽性細胞をLobular-Thy1とし、正常ラット肝臓に対しコラゲナーゼ灌流を行い、非実質細胞の分画からLobular-Thy1を、残った胆管を含む組織片からPortal-Thy1細胞を磁気ビーズ付き抗体で単離し、12-wellプレートに播種した。播種3時間後、炎症性サイトカインとして知られる、IL-1β, IL-6, Tumor necrosis factor-α(TNFα)を添加した培地に交換・培養し、これまでに同定したCinc-2及びIl17bの遺伝子発現をRealtime PCRで検討した。結果、Portal-Thy1細胞に対し、TNF-αを投与した場合において、Cinc-2及びIl17bの発現が誘導された。この結果は、門脈周囲のThy1陽性細胞が肝前駆細胞誘導を制御する細胞であることを示唆している。TNF-αは主にKCsやマクロファージが発現すると知られていることから、塩化ガドリニウム(Gd)やクロドロン酸リポソーム(Cld)の投与によるマクロファージ抑制と前駆細胞誘導の影響を検討している。 また今回、miR-125b-5pの強制発現ができなかったため、その機能を検討できなかった。現在、miR-125b-5pのmimicを直接Ret/PHモデルに投与することでSHPCsが増大するか検討する実験を計画している。
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