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BMPシグナル異常に起因する難治性血管疾患のモデルマウス解析

研究課題

研究課題/領域番号 23K06488
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分49030:実験病理学関連
研究機関東京薬科大学

研究代表者

伊東 史子  東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (70502582)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
キーワードTGF-β / BMP / 難治性血管疾患 / 遺伝子改変マウス / 肺高血圧 / 腫瘍転移 / 血栓
研究開始時の研究の概要

TGF-βファミリーのシグナル異常は、肺動脈性肺高血圧症(PAH)、オスラー病、マルファン症候群などの難治性血管疾患の原因である。しかしながら、これら疾患の発症メカニズムおよび病態解明は不十分であり、有効な治療法は存在しない。これまでに、TGF-βシグナル系分子の遺伝子改変マウスがPAHモデルマウスとなること、血管の恒常性破綻と血栓形成憎悪には過剰なTGF-βが関与すること、を見出しており、本研究では過剰なTGF-βシグナルに起因する血管機能破綻と病態の関連を明らかにし、難治性血管疾患の病態解明、治療薬さらに腫瘍転移抑制薬のシーズ獲得を目指す。

研究実績の概要

Transforming growth factor-β (TGF-β)、BMP、アクチビンなどを含むTGF-βファミリーは生体の恒常性維持に必須であり、そのシグナル異常は、難治性血管疾患の原因となることが知られている。疾患の原因遺伝子の背景から、血管におけるBMPシグナル対TGF-β/アクチビンシグナルのバランス異常が病態発症に関与すると予測された。そこで、血管内皮細胞のBMPシグナルまたはTGF-βシグナルを遮断したマウスを作成して血管機能に与える影響を検証した。
内皮細胞特異的にTGF-βシグナルを遮断したマウスでは、タモキシフェン投与による遺伝子欠損後も長期間生存可能であり、顕著な異常は認められなかった。そこで担がんマウスを作成し、腫瘍転移に与える影響を検証したところ、TGF-β遮断により血行性転移が抑制された。この原因として、転移臓器の血管内皮細胞においてTGF-βの標的分子Xが血行性転移に関わることを明らかにし、現在論文投稿中である。
内皮細胞特異的なBMPシグナル欠損マウスでは、血管内皮細胞におけるBMPシグナル対TGF-β/アクチビンシグナルのバランス異常が病態発症に関わることを生体で証明した。さらに、TGF-βシグナルを抑制する分子、Smad7のヘテロノックアウトマウスがTGF-βシグナル亢進モデルマウスとして有用であることを見出した。Smad7ヘテロノックアウトマウスでは、敗血症モデルマウスの血栓形成を増悪させており、血管におけるTGF-βシグナルの亢進が血管機能破綻に関与する可能性を示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

がん微小環境において豊富に存在するTGF-βが転移経路となる血管やリンパ管に与える影響は解析が難しかった。今回、遺伝子改変マウスを利用して内皮細胞特異的にTGF-βシグナルを遮断して生体で解析することができたため、TGF-βが腫瘍血管の成熟を促すシグナルであることが明らかとなった。さらに転移臓器の血管内皮細胞に対しては、がん細胞の生着を促して腫瘍血行性転移を促進することを明らかにした。このメカニズムとして、TGF-βシグナルの標的である分子Xの発現が上昇し、がん細胞と血管内皮細胞の接着を促進しすることを明らかにできた。この成果を現在論文投稿中である。さらに、TGF-βシグナル亢進モデルマウスとしての有用性が確認でき、現在論文2報の投稿準備を進めており、予定通り研究が進展している。

今後の研究の推進方策

腫瘍転移において、TGF-βシグナルの阻害または分子Xの阻害が腫瘍転移抑制につながる可能性が示されたため、今後はTGF-βや分子Xを治療標的とした分子標的薬やPROTACの開発を行う。TGF-β受容体Fcが候補となるが、TGF-β受容体のI型、II型のどちらを標的とすればよいのか、また1価のFc製剤を作成してその抑制効果を検証する。特にTGF-β阻害剤の開発は、血栓症予防効果も期待できるため、阻害薬の効果を敗血症モデルマウスにおいても検証する。
BMPシグナル遮断マウスがPAHを発症するメカニズムを明らかにするために、肺組織のシングルセル解析を行い、発症初期の分子メカニズムを明らかにする。発症初期の解析を人で行うことは難しいため、発症極初期のPAHモデルマウスの解析により、新規治療薬の開発だけでなく早期診断薬の開発を行う。さらに、BMPシグナルvsTGF-β/アクチビンシグナルのバランスを制御するマウスの交配を進めて、バランスの重要性を生体レベルで明らかにする。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (11件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [国際共同研究] KU Leuvern(ベルギー)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [国際共同研究] Iceland University(その他の国・地域)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] A MAP1B?cortactin?Tks5 axis regulates TNBC invasion and tumorigenesis2024

    • 著者名/発表者名
      Inoue Hiroki、Kanda Taku、Hayashi Gakuto、Munenaga Ryota、Yoshida Masayuki、Hasegawa Kana、Miyagawa Takuya、Kurumada Yukiya、Hasegawa Jumpei、Wada Tomoyuki、Horiuchi Motoi、Yoshimatsu Yasuhiro、Itoh Fumiko、Maemoto Yuki、Arasaki Kohei、Wakana Yuichi、Watabe Tetsuro、Matsushita Hiromichi、Harada Hironori、Tagaya Mitsuo
    • 雑誌名

      Journal of Cell Biology

      巻: 223 号: 3 ページ: 1-19

    • DOI

      10.1083/jcb.202303102

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] <scp>CD40</scp> is expressed in the subsets of endothelial cells undergoing partial endothelial?mesenchymal transition in tumor microenvironment2023

    • 著者名/発表者名
      Takahashi Kazuki、Kobayashi Miho、Katsumata Hisae、Tokizaki Shiori、Anzai Tatsuhiko、Ikeda Yukinori、Alcaide Daniel M.、Maeda Kentaro、Ishihara Makoto、Tahara Katsutoshi、Kubota Yoshiaki、Itoh Fumiko、Park Jihwan、Takahashi Kunihiko、Matsunaga Yukiko T.、Yoshimatsu Yasuhiro、Podyma‐Inoue Katarzyna A.、Watabe Tetsuro
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 115 号: 2 ページ: 490-506

    • DOI

      10.1111/cas.16045

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 腫瘍転移過程におけるTGF-βシグナルの内皮細胞の作用2024

    • 著者名/発表者名
      伊東史子
    • 学会等名
      第5回がん三次元培養研究会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] TGF-βシグナルによるリンパ管内皮細胞制御.2023

    • 著者名/発表者名
      花田 賀子,齋藤 裕紀,久保田 義顕,平位 秀世,伊東 史子.
    • 学会等名
      第47回日本リンパ学会総会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 血行性高転移株 LLC-GFP(BM3)を利用した血行性転移促進メカニズムの解析2023

    • 著者名/発表者名
      今井 柊,渡橋 弘貴,花田 賀子,平位 秀世,伊東 史子.
    • 学会等名
      第83回日本癌学会学術総会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 内皮細胞特異的TGF-β II型受容体欠損は腫瘍転移を抑制する.2023

    • 著者名/発表者名
      花田 賀子,齋藤 裕紀,久保田 義顕,平位 秀世,伊東 史子.
    • 学会等名
      第31回日本血管生物医学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 血管内皮細胞特異的Dicer欠損が造血系に与える影響2023

    • 著者名/発表者名
      郷 光葵,深沢 勲平, 平位 秀世,横田 明日美,伊東 進, Fruttiger Marcus, 伊東 史子.
    • 学会等名
      第31回日本血管生物医学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Physiological analysis of TGF-β/BMP signaling in endothelial cells.2023

    • 著者名/発表者名
      Fumiko Itoh
    • 学会等名
      TGF-β Meeting in Uppsala.
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Impact of TGF-β superfamily signaling on vascular function and cardiovascular disease.2023

    • 著者名/発表者名
      Fumiko Itoh
    • 学会等名
      Asia-Australia Vascular Biology 2023. Seoul, Korea.
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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