研究課題/領域番号 |
23K06500
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
|
研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
武田 和也 東北医科薬科大学, 医学部, 助教 (40393160)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | タイラーマウス脳脊髄炎ウイルス / タイラーウイルス / 多発性硬化症 / 脱髄疾患 / シアル酸 / インテグリン / 受容体 / 病態制御 / 糖鎖修飾 |
研究開始時の研究の概要 |
タイラーマウス脳脊髄炎ウイルス(TMEV)感染による脱髄疾患(TMEV-IDD)は多発性硬化症(MS)の動物モデルとして知られるが、その発症機序については感染に関与するTMEV受容体(TMEVR)を含めて未知の部分が多い。筆者は最近、シアル酸修飾や、ある種の金属イオンがTMEVとの結合に寄与するTMEVRを見出した(投稿中)。 本研究計画では、これら修飾糖鎖や金属イオンの影響の観点からTMEV-IDD発症におけるTMEVRの役割を明らかにする。さらに、これらを標的としたTMEV-IDDの制御やMSの新たな予防/治療法への応用の可能性を探る。
|
研究実績の概要 |
タイラーマウス脳脊髄炎ウイルス(TMEV)感染により引き起こされる中枢神経系の脱髄疾患(TMEV-IDD)は多発性硬化症(MS)の動物(マウス)モデルとして知られるが、その発症機序については感染に関与するTMEV受容体(TMEVR)を含めて未知の部分が多い。TMEVが細胞に結合・侵入する際、細胞表面の糖鎖末端に存在するシアル酸が重要であることは知られていたが、その糖鎖が結合しているTMEVRは不明であった。筆者は最近、細胞表面に存在し、他の細胞や細胞外基質との結合・接着に関与するタンパク質であるインテグリンがTMEVRとして機能すること、またマグネシウムなどの金属イオンがTMEVの細胞表面への結合量に影響することを見出した(Takeda K, et al. Eur J Immunol. 2023 Oct;53(10))。 今年度は、TMEVとインテグリンの細胞での共局在を共焦点顕微鏡で解析するなど、当該論文の追加実験に加えて、研究計画の「TMEV持続感染/脱髄発症における金属イオンの寄与の解明」について、マウス由来のマクロファージや従来型樹状細胞、株化培養細胞を用いて、金属イオン濃度の制御によりTMEVの結合量、増殖率が変化するかどうか検討した。マグネシウムイオン存在下ではマクロファージなどへのTMEV結合量は増大し、ウイルスの増加量も亢進した。今後、TMEV-IDD発症におけるマグネシウムイオンの効果を明らかにする実験を進める。 本研究計画では、これら修飾糖鎖や金属イオンによる、TMEV結合性の変化に着目してTMEV-IDD発症におけるインテグリンの役割を明らかにし、これらを標的としたTMEV-IDDの制御やMSの新たな予防/治療法への応用の可能性を探る。本研究計画により、同じTMEV感染モデルである心筋炎や、てんかん発作モデルの理解が深まることも期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度前半は、投稿中のTMEV受容体に関しての論文の査読・修正において要求された追加実験を優先して実施したため(当該論文は査読を経て出版された)、研究計画の「TMEV持続感染/脱髄発症における金属イオンの寄与の解明」についての、マウス個体を用いた実験の実施が予定よりも遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、TMEV-IDD感受性マウスの給水において、金属イオン含量の異なる群に分け、それぞれにTMEV-IDDを誘導して発症時期、発症率、重篤度を比較する。これにより、飲水中の金属イオン濃度がTMEVの持続感染/脱髄発症に影響するかどうかを明らかにする。また研究計画の「TMEV持続感染/脱髄発症におけるTMEVRの寄与の解明」について、TMEVRに結合し、TMEV結合を阻害するペプチドの頭蓋内接種がTMEV-IDDの病態を変化させるかどうかを検討する。接種時期はTMEV接種と同時、前後、脱髄発症前で行い、解析は同様に行う。 令和7年度は、研究計画の「TMEV持続感染/脱髄発症におけるシアル酸結合糖鎖の寄与の解明」を中心に、シアル酸転移酵素ST3GAL5 KOマウスおよびその由来細胞を用いて、TMEV感染/増殖について解析する。またノイラミニダーゼ処理によりTMEV結合量が低下することはin vitroでは既知であるので、TMEV接種前後のノイラミニダーゼの頭蓋内接種がTMEV-IDDを制御しうるかどうか解析を行う。以上、三つの実験を行い、金属イオンやシアル酸結合型糖鎖、ペプチドのTMEV持続感染や脱髄発症への寄与を明らかにし、TMEVRが感染制御や、疾患の予防/治療の標的となる可能性を探る。
|