研究課題
基盤研究(C)
IL-26は主にTh17細胞が産生する炎症性サイトカインで、様々な炎症性疾患で発現増加が報告されているが、齧歯類には欠損した遺伝子であるため従来のマウス疾患モデルでは見逃されていた因子であり、機能や病気の悪化にいかに関わっているのかについてはまだ不明な点が非常に多い。本研究では新たに開発した薬剤誘導性ヒトIL-26強制発現マウスを用いて、IL-26が好中球のエフェクター機能に及ぼす影響、臓器線維化の分子メカニズムの詳細を解明し、IL-26抗体が難治性の慢性炎症性疾患や線維化関連疾患に対する革新的な治療薬として臨床応用されるための基盤となるデータを得る。
IL-26は主にTh17細胞が産生する炎症性サイトカインで、様々な炎症性疾患で発現増加が報告されているが、齧歯類には欠損した遺伝子であるため従来のマウス疾患モデルでは見逃されていた因子であり、解明すべき点は非常に多い。研究代表者らはこれまでにヒトIL-26がマウスの細胞にも作用することを確認し、ヒトIL-26のプロモーターを含む遺伝子領域を組み込んだバクテリア人工染色体(BAC)トランスジェニック(Tg)マウスを樹立して、様々な炎症性疾患モデルでin vivoでのIL-26の多様な役割を明らかにしてきた。このBAC TgマウスはIL-26自身のプロモーターを使っているため、ヒトと同様にIL-26の産生能を持つ細胞が炎症誘発時など活性化した際にIL-26の発現が誘導される点が利点である。一方で、ヒトの細胞と比較してこのTgマウスのヒトIL-26の発現は1/10-1/100程度と弱い問題もある。そこで、この問題を解決すべく、Cre/loxPシステムを用いてタモキシフェン投与時に限りヒトIL-26の高発現が誘導される新たなTgマウスを開発した。これにより、炎症病態におけるIL-26の本来の機能を解明でき、IL-26抗体が難治性慢性炎症性疾患に対する革新的な治療薬として臨床応用されるための基盤となるデータを得ることができる。今年度は新たなIL-26高発現マウスを用いると、デキストラン硫酸ナトリウム誘発性の大腸炎やブレオマイシン誘発性の肺障害が従来のBAC Tgマウス以上に激しく起こることを確認し、好中球遊走や好中球遊走ケモカインの発現が顕著に亢進していることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
タモキシフェン投与時に活性化したヒト細胞が産生するのと同等のレベルでヒトIL-26の高発現が誘導されるTgマウスの樹立に成功し、このマウスを用いることで今まで用いていたヒトIL-26 BAC Tgマウス以上に、炎症の悪化が起こることをデキストラン硫酸ナトリウム誘発性大腸炎モデルやブレオマイシン誘発性肺障害モデルで明らかにした。ヒトIL-26 BAC Tgマウスを用いた際に見られていた上記の疾患モデルでの炎症部位への好中球浸潤も、新しいTgマウスではより顕著に認められ、IL-26による好中球を介した炎症増悪化ならびに臓器線維化のメカニズム解析に適していると考えられる。
ヒトIL-26によって炎症部位への好中球浸潤が亢進することは、これまでの様々な炎症疾患モデルで確認できているが、ヒトIL-26によって増加した好中球がコントロールマウスの好中球と比較して特徴的な機能・遺伝子発現を獲得している可能性を検討する。また、ヒトIL-26TgマウスとIL-26を発現しないコントロールマウスとで、浸潤する免疫細胞や間質細胞の数や遺伝子発現、活性化シグナルの違いを明らかにし、IL-26によって臓器線維化が亢進するメカニズムの詳細についても解析を進める。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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