研究課題/領域番号 |
23K06528
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49050:細菌学関連
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村瀬 一典 京都大学, 医学研究科, 助教 (40710869)
|
研究分担者 |
野澤 孝志 京都大学, 医学研究科, 准教授 (10598858)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 細胞外小胞 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞外小胞(EVs)は、細菌が細胞外に放出する球状の構造体であり、その産生は細菌全体に備わっている生物学的プロセスである。また、EVsは病原因子のデリバリーシステムとしての役割も担っており、宿主に対する感染戦略において非常に重要な因子であると考えられている。申請者は、先行研究から、大腸菌由来のEVsがA群レンサ球菌や黄色ブドウ球菌の増殖を著しく抑制することを明らかにした。これは、異菌種間における競合・共生関係においてEVsが重要な役割を担っていることを示す結果であると同時に、EVsの病原細菌に対する増殖抑制効果を利用することで、細菌感染症に対する新たな創薬基盤技術の開発に繋がると考えられる。
|
研究実績の概要 |
本年度は以下の2つの研究項目について実施した。 1. EVsの構成及び、内包分子の同定 2. 大腸菌EVsによるA群レンサ球菌及びMRSAへの増殖抑制メカニズムの解明 項目1について、small RNA seq及び、プロテオーム解析を実施し、EVの内包もしくは構成分子を網羅的に解析した。プロテオーム解析の結果、EVに含まれるタンパク質は計630(本菌株の全CDS数は4315)であり、菌株が有する全タンパク質の約14-15%がEVによって、細胞外に放出されていることが明らかとなった。本解析では定性的な観点からのみ実施しているため、野生株からのEVのプロテオームを実施し、比較定量することにより、EV過剰産生株由来のEVにおける各タンパク質の存在比率についても今後検討していく必要がある。次に、small RNAについては、現在、得られたシークエンスデータの解析を進めているところであり、解析が完了次第、配列のバリエーション等、次年度以降も解析する予定である。 次に、項目2について、トランスクリプトームの解析の結果、細胞分裂に関与する遺伝子群に加え、病原性に関わる複数の遺伝子の発現低下が確認された。細胞分裂関連の遺伝子群のうち、分裂環形成に必須のftsZも含まれており、この発現変動が先行研究で確認された分裂環の異常形成による増殖阻害に繋がっていると考えられる。また、A群レンサ球菌の主要な病原因子である溶血毒素や莢膜多糖合成に関わる遺伝子の低下とin vitroでの活性の低下もしくは消失も確認された。以上のことから、大腸菌由来のEVは、A群レンサ球菌に対して、何らかのメカニズムを介して増殖阻害や病原性低下を転写レベルで引き起こしていると推察される。大腸菌EVsによるA群レンサ球菌及びMRSAへの増殖抑制メカニズムの詳細な解明のために、本解析についても、次年度以降、引き続き進めていく必要がる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度内に実施を予定していたリピドーム解析が進んでいないため、次年度以降に改めて解析を行う必要がある。一方で、実施済みのプロテオーム解析やトランスクリプトーム解析、病原性評価試験については非常に有益な結果が得られ、次年度の実施計画につながる成果になったと思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、「大腸菌EVsによるA群レンサ球菌及びMRSAへの増殖抑制メカニズムの解明」に加えて、「In vitroにおける増殖抑制効果の検証」についても研究分担者とともに研究計画を遂行する。また、本年度実施済みのプロテオーム解析やトランスクリプトーム解析の結果から、病原性評価試験について新たに対象とする病原因子を追加する予定である。
|