研究課題/領域番号 |
23K06531
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49050:細菌学関連
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
桑江 朝臣 北里大学, 感染制御科学府, 准教授 (60337996)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 百日咳 / III型分泌装置 / エフェクター / 百日咳菌 |
研究開始時の研究の概要 |
多くのグラム陰性病原菌はIII型分泌装置と呼ばれる病原因子分泌装置を有している.百日咳菌を含むボルデテラ属細菌はBteAと呼ばれるタンパク質を菌体内から宿主である哺乳類細胞質内へIII型分泌装置を介して移行させる.宿主細胞内へ移行したBteAは膜破壊を伴う細胞死を誘導するが,その分子メカニズムは不明である.これまでの我々の研究によってBteAによって誘導される細胞死にはアクチン重合が必要であることが明らかにされている.アクチン重合を必要とする細胞死についてはほとんど研究されておらず,BteAは未同定の経路により細胞死を誘導していることが考えられ,本研究ではその分子メカニズムを明らかにする.
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研究実績の概要 |
ボルデテラ属細菌は多くのグラム陰性病原菌が産生するIII型分泌機構を有している.本研究ではボルデテラ属細菌のIII型分泌装置から分泌されるBteAと呼ばれるタンパク質の機能解析を行っている.これまでにBteAが菌体内から宿主細胞内へ移行することが示されており,そのBteAの移行にBopNと呼ばれるIII型分泌装置から分泌されるタンパク質との相互作用が重要であることが示唆されていたが,BteAの宿主細胞内移行に関する詳細な移行のメカニズムは不明であった.そこでBteAのいずれの領域が,BopNによる宿主細胞内移行制御を受けるのかを解析するために,BteAの様々な部分欠失変異体をコードするプラスミドをBopN産生株とBopN非産生株に導入した.BteAの部分欠失変異体の産生および分泌を確認した後,部分欠失変異体の宿主細胞内への移行を解析したところ,BteAの中央部分とC末端部分の2箇所においてBopNによる移行制御を受けることが示唆された.AlphaFold2を用いて,BteAとBopNの相互作用に重要なBteA内のアミノ酸を予想し,アラニンによって置換した変異体を産生する菌株を用いて,BteAの移行試験を行ったところ,BopNによる移行制御に重要なアミノ酸が複数箇所見出された.BteAとBopNが菌体内で相互作用を行っているか解析を行うために,大腸菌内で組換え型のBteAとBopNを産生させ,タンパク質の精製を行った.その結果,BteAの中央領域とBopNが相互作用していることが強く示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初はプルダウンアッセイにおいてBteAが非特異的にセファロースビーズに吸着してしまい,相互作用試験が困難であったため,GSTタグの下流にTurbo 3Cプロテアーゼの認識配列を有するBopNとの融合タンパク質を大腸菌に産生させ,プルダウンアッセイを試みた.Turbo 3CプロテアーゼによりBopNと相互作用しているBteAを上清中に遊離させることにより,非特異的にセファロースビーズに吸着しているBteAを除去することに成功した.その結果,BopNがBteAの中央領域と相互作用することが強く示唆された. 部分欠失変異体を用いた試験では変異体の構造が野生型の構造と大きく異なっている可能性があるため,非特異的な相互作用を検出してしまう可能性が考えられる.そこで,構造を大きく変化させることを避けるため,BteAの点変異体の作製を行った.点変異体のボルテテラ属細菌における産生および分泌量は野生型と同様であったが,宿主細胞内移行が認められない点変異体をえることに成功した.
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今後の研究の推進方策 |
他機関との共同研究等を通して,BteAとBopNの相互作用を構造学的に予測し,互いのタンパク質内で相互作用に必要なアミノ酸をより詳細に解析する.現在までに得られている宿主細胞内への移行能を喪失したBteAの点変異体がBopNと相互作用するのか否か,確認を行う.BopNとBteAが菌体内のみではなく,宿主細胞内においても相互作用をするのか否か,培養細胞を用いた試験を行う.具体的にはBteAとBopNを培養細胞に共発現させた後,BteAとBopNの局在を蛍光顕微鏡を用いて解析を行う.これらの培養細胞から溶解液を調製し,プルダウンアッセイを行うことにより,相互作用が認められるかウエスタンブロットにより解析を行う. BteAが宿主細胞内に移行した後に,いずれの宿主側因子と相互作用するのか,引き続き解析を進める.今後は,共同研究を通してタンパク質の相互作用データベースの情報を用いて,機械学習によってBteAと相互作用するタンパク質の同定を試みる.現在までに予想されている相互作用因子や,新たに相互作用することが予想されたタンパク質とBteAのプルダウン試験を行う.またそれらの因子をノックアウトした細胞を作製し,BteA依存的な細胞死が誘導されるか否かを解析する.
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