研究課題/領域番号 |
23K06540
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49050:細菌学関連
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
橋野 正紀 国立感染症研究所, 病原体ゲノム解析研究センター, 主任研究官 (30783633)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | Streptococcus / 7型分泌装置 / 細菌感染性深部臓器膿瘍 / S. intermedius / 深部臓器膿瘍 / 脳膿瘍 |
研究開始時の研究の概要 |
Streptococcus intermedius (SI)は、深部臓器膿瘍の原因菌の一つとして考えているが関連する病原因子は未解明であり、SI感染性深部臓器膿瘍の制御・予防法の確立の障害となっている。本研究では、小児脳膿瘍の原因菌として分離されたSI TYG1620株を用いて、Type 7 Secretion Systemに着目しSI感染性深部臓器膿瘍誘導機序の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
Streptococcus intermedius(SI)は口腔内等に存在する常在菌の1菌種であるが、脳膿瘍・肝膿瘍の病変部より高率に分離され、深部臓器膿瘍の原因菌と考えられている。しかしながら、膿瘍形成に関連する病原因子は未解明である。本研究では、小児脳膿瘍患者より分離されたSI TYG1620株を用いて、TYG1620株の保有するType 7 Secretion System(T7SS)及び分泌タンパク質に着目した深部臓器膿瘍誘導機序の解明に取組んでいる。 in vitroでの事前研究において、T7SS依存的分泌タンパク質である細胞傷害性関連因子を同定している。本年度は、TYG1620株とTYG1620株を親株として作製した細胞傷害性関連因子欠損変異株を使用してマウス皮下膿瘍誘導能への影響を検討した。TYG1620株及び欠損変異株をマウス背部皮下に投与後皮下膿瘍誘導の有無を確認した結果、TYG1620株投与マウスでは高率に皮下膿瘍形成が誘導されるのに対して、欠損変異株投与マウスでは皮下膿瘍形成個体数は顕著に減少した。この結果から、T7SS依存的に分泌される細胞傷害性関連因子が、in vitroにおける細胞傷害性のみならずin vivoにおける膿瘍形成にも寄与することが考えられた。 また、事前研究において細胞傷害性関連因子は単体ではなく他のT7SS依存的分泌タンパク質と共に機能し細胞傷害性に寄与していることが示唆されている。本年度は新規細胞傷害性因子候補に対して、無細胞系タンパク質合成法を用いて候補タンパク質の合成を試みた。標的タンパク質の合成は確認できたもののタンパク質の可溶化に課題が残り実験に供試できる水準のタンパク質を得ることができなかった。このため、候補タンパク質の合成・精製は次年度以降引続き検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、Type 7 Secretion System(T7SS)依存的分泌タンパク質である細胞傷害性関連因子がマウス皮下膿瘍形成に関連性を有することが示唆される結果を得た。これまでにin vitroにおいて細胞傷害性への寄与が確認されているT7SS及び細胞傷害性関連因子が生体内において膿瘍形成に関与することが示唆されるものであり研究推進に重要な役割を果たすものである。加えて、次年度以降の新規細胞傷害性因子候補の解析においても、本年度実施した皮下膿瘍誘導マウス感染実験を用いることで膿瘍形成との関連性の検討が可能となり、比較解析における有用な基礎データとなることが考えられる。一方で、新規細胞傷害性因子候補の合成については合成タンパク質の可溶化が課題となったが、事前準備において相同組換え法を用いた遺伝子欠損変異株作製法を樹立しているため、新規細胞傷害性因子候補の機能解析の推進は可能である。このような状況をふまえ、「おおむね順調に進展している」を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果により、in vitro実験により細胞傷害性に寄与することが確認されている因子がマウス皮下膿瘍の誘導にも関与することが示唆された。一方で細胞傷害性関連因子は他のType 7 Secretion System(T7SS)依存的分泌タンパク質と共に機能することが示唆されている。次年度以降は、新規細胞傷害性因子候補の欠損変異株を作製し、マウスを用いた皮下膿瘍誘導実験に供試し膿瘍形成との関連性を検討する、加えて作製した欠損変異株におけるT7SSを介したタンパク質分泌機能について、Secretome解析用いた網羅的タンパク質同定を実施し新規細胞傷害性因子候補とT7SSとの関連性についての解析を行う。また、新規細胞傷害性因子候補に関して合成タンパク質作製の検討を行う、合成タンパク質の可溶化を達成したのちにはin vitroでの細胞傷害性能の評価を実施するとともに、同定済みの細胞傷害性関連因子との結合の有無等の相互作用に関する解析を進める。
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