研究課題/領域番号 |
23K06544
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49050:細菌学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野澤 敦子 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (60824159)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ストレプトリジンO / 受容体 / CD59 / SLO / コレステロール / A群レンサ球菌 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、A群レンサ球菌膜孔形成毒素SLOの “細胞内受容体”に焦点を絞り、その同定を目的としている。具体的な研究計画としては、① SLOの細胞内受容体候補分子の網羅的探索、② SLOの細胞内受容体の同定、③ マウスモデルを用いた病原性解析の3つに分けられる。①では、近接依存性標識法またはPull down法を用いて目的のタンパク質を精製し、質量分析により候補分子の同定を行う。②では、この候補分子のノックアウト細胞等を用いてSLOの細胞内受容体として機能しているのかを検証する。③では、同定された受容体分子のノックアウトマウスや上記の受容体結合部位変異体を用いた病原性解析を行う。
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研究実績の概要 |
当該年度はSLOによるエンドソーム膜傷害が溶血活性と同様にコレステロールを受容体として用いているのかを実際に検証すること、およびに、コレステロールが受容体でなかった場合はその未知のの受容体の同定方法を検証した。 SLOのコレステロール認識モチーフを変異させた(コレステロールと結合しない)変異体(SLO L565G)をHeLa細胞に感染させ、エンドソームへの膜傷害のマーカーとして用いられるGalectin3の細胞内局在について経時的に調べたがいづれの時間においても影響がなかった。つまり、エンドソーム膜傷害に関してはコレステロールはエンドソーム膜傷害に関与しないことが明らかになった。また、Streptococcus intermediusが分泌するintermedilylysin(ILY)はSLOと同様にコレステロール依存性の膜孔形成毒素であるが、赤血球膜表面に存在するヒトのCD59に特異的に結合し溶血を促進するとこが報告されているので、CD59がSLOの受容体として用いられているのかどうかを調べた。CD59のノックアウト細胞を作製しGalectin3の細胞内局在について観察したが、野生型のHeLa細胞と比較して影響が見られなかった。つまり、CD59もエンドソーム膜傷害に関与しないことが明らかになった。これらのことから、SLOはエンドソーム膜傷害の際にはコレステロールやCD59を受容体として用いていないと判断した。 次に、SLOの細胞内受容体候補分子の網羅的探索を行う上で近接依存性標識法を用いるためにGASの遺伝子組み換え系を用いて、GASゲノム上のSLO配列にビオチンリガーゼ酵素を挿入する予定であったが、ビオチンリガーゼ酵素を挿入するとSLOの発現が消失してしまうことがわかった。つまり、近接依存性標識法は今回の解析には適応が難しいことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、A群レンサ球菌膜孔形成毒素SLOの “細胞内受容体”に焦点を絞り、その同定を目的としているが、SLOのコレステロール認識モチーフを変異させた(コレステロールと結合しない)変異体(SLO L565G)を用いた解析およびCD59ノックアウト細胞を用いた解析からSLOはエンドソーム膜傷害の際にはコレステロールやCD59を受容体として用いてはおらず、未知の受容体分子が存在することが強く示唆された。この点については研究計画や想定通りの結果であったが、SLOの細胞内受容体候補分子の網羅的探索を行う上で近接依存性標識法を用いるためにGASの遺伝子組み換え系を用いて、GASゲノム上のSLO配列にビオチンリガーゼ酵素を挿入する予定であったが、ビオチンリガーゼ酵素を挿入するとSLOの発現が消失してしまうことがわかった。この点については想定外の結果ではあったものの、現在は代替案であるpull down法で解析を行うための準備に取り掛かっている。具体的には、大腸菌を用いて組み換えタンパク質のSLOを作製して、精製を行い、このSLOの組み換えタンパク質に培養細胞溶解液を反応させて精製し(Pull down法)、精製産物をSDS-PAGEで分離、染色(銀染色など)し目的のバンドのタンパク質を質量分析により決定する予定である。以上のことを踏まえ、想定外の結果があったものの、研究計画通りの進行状態ではあるため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
SLOの細胞内受容体候補分子の網羅的探索を行う上で近接依存性標識法を用いる予定であったが、この系はうまくいかないことがわかったので、今後は組み換えタンパク質であるSLOに細胞溶解液を反応させin vitroの結合反応(pull down Assay)によりSLOの細胞内受容体候補分子の網羅的探索を行う予定である。具体的には、pGEX-6P-1ベクターにSLO遺伝子を挿入したベクターを作製し、大腸菌に形質転換をする。この大腸菌においてSLOタンパク質の発現誘導を行い、得られたSLOをGlutathion Separoseで精製を行う。この精製SLOに適切な量の細胞溶解液を反応させる。この反応はどれくらいのSLOと細胞溶解液が必要なのかは今のとこをわかっておらず、条件検討等が必要である。この条件が決まったら、SLOの結合タンパク質をSDS-PAGEで分離、染色(銀染色など)し目的のバンドのタンパク質を質量分析により決定する予定である。 その後は当初の研究計画通り、上記の方法で決定したSLO細胞内受容体候補分子は複数ある可能性があるが、特にリソソームに局在するタンパク質に焦点を当て解析を進める。所属研究室で確立済みのゲノム編集法を用いノックアウト細胞を作製する。それが不可能な場合はsiRNAなどを用いたノックダウン細胞を使用して、GASを感染させた場合のエンドソーム膜傷害が起こるかどうかをエンドソーム膜傷害のマーカーとして知られているGalectin 3の細胞内局在を観察することで調べる。さらに、SLOと受容体分子は細胞内で結合することが予想されることから、免疫沈降等による細胞内での結合アッセイや、近接ライゲーション法による結合位置の解析を行う。
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