研究課題/領域番号 |
23K06553
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49050:細菌学関連
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
中山 浩伸 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (40369989)
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研究分担者 |
森田 明広 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 准教授 (20382228)
田口 博明 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (20549068)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ステロール / 真菌感染症 / 脂質輸送 / トランスポーター / 薬剤耐性 / カンジダ / 標的分子 |
研究開始時の研究の概要 |
病原性真菌は、コレステロールを宿主血清から取り込み、自身のステロールとして利用している。この生理的意義を明らかにするため、種々の実験手法が確立している病原性真菌カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)を用いて、遺伝学的解析や生化学・細胞生物学的解析から、宿主血清コレステロールの取り込みや細胞内の輸送機構の構成因子の同定と機能解析を行う。機能解析では、感染モデルを用いた実験も行い、同定した因子の宿主感染における位置づけについても確認する。そして、得られた知見から抗真菌薬の標的分子の選出を試み、その機能を阻害する化合物の探索に繋げる。
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研究実績の概要 |
病原性真菌は、コレステロールを宿主血清から取り込み、自身のステロールとして利用している。この生理的意義を明らかにするため、種々の実験手法が確立しているカンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)を用いて、宿主血清コレステロールの取り込みや細胞内の輸送機構の構成因子の同定と機能解析を行っている。真菌は通常の培養条件で外部ステロールを取り込まず、また、ステロール取り込み因子(AUS1、TIR3)を強制発現させても、ほとんど取り込まないことを明らかにしてきた。本年度は、コレステロールの取り込み・輸送に関与する因子を同定するために、AUS1、TIR3の発現を制御する転写因子、UPC2A、UPC2Bの強制発現株(tet-UPC2A、tet-UPC2B)を作製し、細胞外ステロールの取り込みを調べた。tet-UPC2Bでは、コレステロールを培地に添加するとステロール合成阻害剤のフルコナゾールの感受性が著しく低下し、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS/MS)による分析で、コレステロールの取り込みが確認できた。しかし、LC-MS/MSの分析では、フルコナゾールを添加しない培地でtet-UPC2Bを培養した場合、コレステロールは検出されなかった。また、tet-UPC2Bを親株としてステロール合成に関わる酵素(ERG9)遺伝子を破壊した株(この株ではステロール骨格をもつ物質は合成されない)を嫌気条件で作製し、コレステロール存在下の好気条件での生育を観察したが、ほとんど生育しなかった。このことから、外部ステロール取り込みは、ステロールの枯渇ではなく、細胞内の異常ステロールの蓄積がスイッチとなる可能性が示唆されたと考えられる。 また、カイコを用いて、UPC2A、UPC2Bの欠損株の病原性を検討したところ、UPC2Aの欠損株や2重欠損株で、有意な病原性の低下が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
作製した株におけるミトコンドリアやエンドソームの機能解析が十分に行えておらず、このため、UPC2A、UPC2Bの細胞内の脂質輸送機構への解明が不十分な状況である。さらに、ステロールを恒常的に取り込む能力をもつ株の作製にも成功しておらず、追加の研究が必要である。そのため、蛍光コレステロールアナログの取り込みを阻害する化合物のスクリーニング系のセットアップが未着手である。これらの課題により、研究全体の進捗がやや遅れていることを認識している。今後は、これらの問題点を解決するための具体的な対策を講じ、研究の進展を図る予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ステロールを恒常的に取り込む株の作製の目指し、UPC2A、UPC2Bの機能亢進変異株の作製を試みる。並行して、tet-UPC2B株におけるミトコンドリアおよびエンドソームの機能解析を進める。ミトコンドリアに関しては、呼吸活性の測定、蛍光標識を用いた形状観察、膜電位の測定を行い、その機能状態を詳しく解析する。また、エンドソーム輸送に関しても、蛍光標識を用いて観察し、野生株と異なる挙動を示すかどうかを確認する。さらに、ステロール取り込みや細胞内の輸送機構の構成因子は、アゾール系薬剤の耐性機構と強い関連をもつため、薬剤排出ポンプの制御因子であるPDR1やSET4などの変異株を作製し、遺伝子発現解析やミトコンドリアやエンドソームの機能解析を行う。加えて、LC-MS/MSを用いたステロール分析を組み合わることで、ステロールの取り込み・輸送に関与する因子の同定を試みる。このほか、ステロール取り込みの本体となるABCトランスポーター、AUS1遺伝子の上流1 kbpにルシフェレース遺伝子をつなげたコンストラクトをカンジダ・グラブラータに挿入させた株を作製する。この株を用いて、AUS1遺伝子の発現が誘導される鉄欠乏培地で実験を行い、ルシフェレース活性を下げる化合物のスクリーニング系のセットアップに取り掛かる予定である。これにより、ステロール取り込みに関連する新たな制御因子や薬剤候補の発見を目指す。
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