研究課題/領域番号 |
23K06560
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49060:ウイルス学関連
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
亀井 加恵子 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 教授 (00214544)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | バクテリオファージ / ウイルス粒子構造の解析 / 感染受容体の解析 / Podoviridae / 溶菌機構 / 粒子構造 |
研究開始時の研究の概要 |
我々ファが単離したバクテリオファージであるSal/Eco ファージKIT07はサルモネラ菌と大腸菌の両方を溶菌できる。全ゲノム配列は、他のファージとのゲノム配列上の同一性はほとんど認められず、極めて稀な新規ファージである。 本研究では、Sal/Eco ファージKIT07 の粒子構造や感染機構等を解明する。これによって、本課題の学術的問い、すなわちSal/Eco ファージKIT07 は何者なのか?どのように感染し、バクテリアを溶菌するのか?に答え、ファージ研究に新たな知見を与える。
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研究実績の概要 |
大腸菌およびサルモネラ菌を溶菌するバクテリオオファージSal/EcoファージKIT07は、他のファージゲノムとの同一性は極めて低いゲノムを持つ新規ファージである。本研究は、KIT-07の粒子構造や感染機構を解明することを目的としている。 これまでの電子顕微鏡観察では、ファージKIT07は尾部が観察されなかったが、ゲノム配列の解析からは頭部キャプシドおよび尾部両方のタンパク質が存在することが推定された。再度、電子顕微鏡観察を行った結果、KIT07は細長い頭部(長径118nm、短径 52 nm) と短い尾部(長さ19 nm)を持つことを確認した。したがって、KIT07はPodoviridae科のC3形態型をとることを確認した。 ファージKIT07の構成タンパク質を明らかにするために、プロテオミクスの手法を用いた解析を進めている。すなわち、SDS-PAGEでファージタンパク質を分離後、トリプシンを用いてゲル内消化した。分解産物を質量分析し、ゲノム配列から推定したORFのトリプシン消化物の理論分子量と比較し、タンパク質の同定を試みている。現時点で、キャプシドタンパク質は同定できたが、他のたんぱく質については解析が完了しておらず、継続して解析をおこなっている。 感染受容体を解析するため、サルモネラのリポ多糖(LPS)変異株を用いた解析実験を実施している。予備的な結果では、ファージKIT-07は、LPS中のO-抗原多糖を欠失したLPSを持つサルモネラ菌に溶菌活性を示さなかった。一方、O-抗原多糖を欠失しているにもかかわらず、コアオリゴ糖主鎖に結合した分岐糖を欠失したLPSを持つサルモネラ菌に対しては、完全なLPSを持つ株に対してよりも高い溶菌活性を示した。したがって、ファージKIT07はLPSを感染受容体として認識するが、その認識機構は複雑であり、より詳細な解析が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ファージKIT07の電子顕微鏡での形態観察は完了し、形態学的な分類ができた。また、感染受容体の可能性としてリポ多糖の可能性を見出した。これらの研究に関しては、当初の計画以上に研究が進展している。 一方、ウイルスタンパク質のプロテオミクスの手法を用いた解析では、主要なキャプシドタンパク質の同定には成功したものの、含有量の少ないタンパク質の同定には至らなかった。次世代型シークエンシング法によるファージゲノムの解析結果が間違っている可能性を考慮して、ダイデオキシ法によるゲノム解析を実施したところ、これまでに明らかにしたファージゲノムの解析結果は正しいことを確認した。したがって、プロテオミクス解析の手法に問題がある可能性を考え、現在、再解析を試しているところである。 以上より、計画以上に進展している実験と遅れている実験とがあることから、全体としては概ね順調に研究が進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の学術的問い「Sal/Eco ファージKIT07 は何者なのか?」に答えるためには、ファージを構成するタンパク質の同定は不可欠であることから、今後もタンパク質の解析を進める。これまでは、トリプシン消化物のマス解析の結果を、ゲノム配列から推定されるORFの配列と比較することで、タンパク質の同定を進めてきた。今後は、de novoシーケンス解析も取り入れてタンパク質同定をできるだけ早く完了させる。 また、感染受容体としてLPSの可能性を見出しているので、新たにLPSによる感染阻害実験を実施し、感染受容体としてのLPSの構造を確定する。 次に、タンパク質の解析結果に基づいて、溶菌酵素と推定される酵素を明らかにし、サルモネラ菌への感染の成立から、溶菌に至るまでの機構を明らかにする。
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