研究課題/領域番号 |
23K06565
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49060:ウイルス学関連
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
高瀬 明 創価大学, 糖鎖生命システム融合研究所, 教授 (60236221)
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研究分担者 |
古川 潤一 名古屋大学, 糖鎖生命コア研究所, 特任教授 (30374193)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | インフルエンザウイルス / 受容体 / レセプター / ヘマグルチニン / 糖鎖 / 感染 / 構造解析 |
研究開始時の研究の概要 |
インフルエンザAウイルス(IAV)はヘマグルチニン(HA)を介して細胞表面のシアル酸含有糖鎖に結合し感染が始まる。2009年以降のヒトIAVのHAは、それ以前とは異なり、長い糖鎖や分岐構造を持つ糖鎖分子に強く結合することが、固相結合試験により分かってきた。本研究では、細胞レベルで、2009年以降のヒトIAVの新たな侵入受容体の構造を解明する。本研究で得られる、新規侵入受容体を過剰発現した細胞はワクチン製造や臨床株の分離に活用される。また、HAのアミノ酸配列情報から新規侵入受容体への結合能を予測することが可能となり、新型IAVのヒトへの感染リスク評価に貢献できる。
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研究実績の概要 |
2009年以降のヒトのインフルエンザAウイルス(IAV)のヘマグルチニン(HA)は、長い糖鎖や分岐構造を持つシアル酸含有糖鎖に強く結合することが、固相結合試験により分かってきた。しかし、これらの糖鎖分子が、細胞表面でウイルスが吸着し侵入するための受容体として機能するかは不明である。本研究では、申請者らの糖鎖改変細胞の作製技術、及び細胞の全糖鎖構造解析技術を用いて、細胞レベルで、2009年以降のヒトIAVの新たな侵入受容体の構造を解明する。 ポリラクトサミン(pLN)合成酵素遺伝子導入細胞(B2/MDCK)、分岐鎖合成酵素遺伝子導入細胞(M5/MDCK)、両酵素遺伝子導入細胞(B2M5/MDCK)のうち、B2/MDCK とB2M5/MDCK でpLNを認識するレクチンの結合が増加している集団が見られた。細胞集団を分取し、本レクチンの結合量が多い細胞(B2-high、B2M5-high)と少ない細胞(B2-low、B2M5-low)に分けた。これらの細胞に対する種々の遺伝子組換えHA(rHA)の結合を測定した結果、カモ由来H5亜型IAVのrHAは、B2-high及びB2M5-highに対して、高い結合性を示した。また、ニワトリ由来H6亜型IAV及び豚由来H1亜型IAVのrHAは、B2-lowとB2-highに対する結合性に大きな差は見られなかったが、B2M5-low に比べてB2M5-highに対する結合性が高い傾向が見られた。以上の結果から、①カモ由来H5亜型IAVは細胞表面のpLN含有糖鎖に結合すること、②ニワトリ由来H6亜型IAV及び豚由来H1亜型IAVの細胞への結合には、受容体の分岐構造が重要であることが示唆された。なお、2009年以降のヒトH1亜型IAVのrHAの糖鎖改変細胞に対する結合性を調べたが結合が検出されなかったため、今後検討を続ける予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、種々の糖鎖改変細胞の作製が最も重要な要素となる。本年度は、pLN合成酵素遺伝子と分岐鎖合成酵素遺伝子を導入し、pLNを認識するレクチンの結合が高い細胞集団と低い細胞集団について、セルソーターを用いて分取を繰り返すことことにより、IAVのHAの結合性が異なる細胞集団を得ることができた。 本年度は鳥及び豚由来のIAVのHAについて、糖鎖改変細胞への結合性を解析した。野鳥のIAVが直接、又は家禽等を介して豚に伝播し、豚で増殖する間にヒトIAV受容体に親和性を持つIAVが選択され、ヒトに感染できるIAVが出現することが報告されている。最近、営巣湖沼のカモやその他の野鳥にも高病原性鳥H5亜型IAVが広がってきており、このウイルスが豚に感染すればヒトIAV受容体に親和性を持つIAVが選択され、ヒトでのパンデミックに繋がる可能性があり警戒されている。従って、鳥及び豚由来のIAVの受容体結合特異性の解析は、新型ヒトIAVの出現機構を理解する上で重要である。 以上の理由により、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得た、鳥及び豚由来のIAVのHAの結合性が異なる細胞集団について、細胞表面の全糖鎖構造解析を行い、HAの結合に関わる糖鎖構造を明らかにする。また、2009年以降のヒトIAVのrHAの糖鎖改変細胞に対する結合性を検出する方法を見出し、種々の糖鎖改変細胞への結合性を調べた後、細胞表面の全糖鎖構造解析を行いHAの結合に関わる糖鎖構造を明らかにする。 さらに、「感染増強に寄与する糖鎖構造が促進するウイルス増殖過程の解明」「ヒト気道組織における受容体の発現分布の解明」「侵入受容体との相互作用に寄与するHAのアミノ酸残基の同定」「データベースによるHAのアミノ酸配列と受容体結合特異性の相関性の解析」を予定通り進める。
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