研究課題/領域番号 |
23K06571
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49060:ウイルス学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 瑞生 東京大学, 医科学研究所, 特任講師 (90750365)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | SARS-CoV-2 / metalloprotease / membrane fusion / viral entry / coronavirus infection |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では高病原性コロナウイルスの中でもSARS-CoV-2に特異的に重要なメタロプロテアーゼ依存性感染経路に着目して遺伝子欠損やウイルス遺伝子の組み換え技術を用い、感染に関与するメタロプロテアーゼ群の同定、その阻害因子TIMPファミリー分子の影響の解析、Sタンパク質側の必要領域の特定を行う。 これらの解析により細胞種特異的かつSARS-CoV-2特異的な侵入機構を明らかにし、病態への関与や本感染経路を標的とした治療法検討のための基盤構築を目指す。
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研究実績の概要 |
SARS-CoV-2により発症するCOVID-19は過去に感染拡大した高病原性コロナウイルス感染症であるSARSやMERSと比較して全身性の複雑な病態を示し、感染標的となる細胞種の多様性等が注目されている。コロナウイルスは、エンベロープ上のSpike(S)タンパク質が受容体と結合し、宿主細胞のプロテアーゼによって部分切断されることでウイルス膜と細胞膜の膜融合を誘導して感染を成立させる。このプロテアーゼとして気道上皮細胞等に発現する膜型セリンプロテアーゼTMPRSS2と様々な細胞種のエンドソームに局在するシステインプロテアーゼCathepsin B/Lが知られていたが、最近申請者らは細胞種特異的かつ高病原性コロナウイルスの中でSARS-CoV-2特異的にADAM10を含むメタロプロテアーゼが感染を誘導することを見出した。本研究ではこのメタロプロテアーゼ依存性感染経路に着目して、感染に関与するメタロプロテアーゼ群の同定、その阻害因子TIMPファミリー分子の影響の解析、Sタンパク質側の必要領域の特定、を行うことで細胞種特異的かつSARS-CoV-2特異的な侵入機構を解明し、病態への関与や本感染経路を標的とした治療法検討のための基盤構築を目指して解析を行った。 R5年度には、メタロプロテアーゼ依存性感染経路を持つ子宮内膜由来HEC50B細胞を用いてCRISPR/Cas9による遺伝子ノックアウトを行い、感染に関与するメタロプロテアーゼ群の解析を進めた。さらにR6年度に計画としているタンパク質側の配列特異性の解析のためにSARS-CoVとSARS-CoV-2でSタンパク質のドメインを入れ替えた複数のキメラSタンパク質の作成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R5年度の目標として、メタロプロテアーゼ依存性感染経路を持つ子宮内膜由来HEC50B細胞にCRISPR/Cas9と共にMMP/ADAM/ADAMTS遺伝子に対する各3種類のgRNAをレンチウイルスベクターを用いて導入し、各遺伝子を欠損した細胞株を樹立した。これらの細胞にSタンパク質を持つシュードウイルスを感染させシュードウイルスが持つルシフェラーゼ遺伝子の発現変化を定量的に解析することで、感染に関与するメタロプロテアーゼ群の解析を進めた。さらにメタロプロテアーゼ阻害分子TIMPについても同様に遺伝子欠損やリコンビナントタンパク質の添加による感染への影響を評価した。以上の方法でメタロプロテアーゼ群とその阻害タンパク質のSARS-CoV-2感染における役割を体系的に評価した結果、感染に関与する複数のメタロプロテアーゼ活性化カスケードのSARS-CoV-2感染への関与が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後はR5年度に明らかにしたメタロプロテアーゼ関連遺伝子のSARS-CoV-2感染における役割を他の細胞株を用いて検討する。 また、キメラSタンパク質を用いたSタンパク質側の機能的領域の探索を進める。これまでの申請者らの解析からメタロプロテアーゼ依存性感染経路にはSARS-CoV-2 Sタンパク質のS2ドメインが重要であり、メタロプロテアーゼの結合や切断に重要な領域がS2に含まれることが示唆される。そこで本感染経路を持つSARS-CoV-2と本感染経路を持たないSARS-CoVのS2のアミノ酸配列の違いに着目して本感染経路に重要な領域を絞り込む。具体的にはSARS-CoV-2とSARS-CoVのS2を機能的な領域ごとにスワップした複数のキメラSタンパク質を作成し、シュードウイルスや膜融合アッセイを用いて本感染経路の有無を評価する。重要な領域を絞り込めた場合はさらに領域内のアミノ酸配列の相違に着目してスワップを行いSARS-CoV-2特異的に本感染経路を持つ原因配列を同定する。R5年の解析から得られた感染関連メタロプロテアーゼ群のSタンパク質との結合やSタンパク質の切断活性を評価する際にこのアミノ酸領域の変異体を作成してその影響を評価し、分子機序の解明を進める。 更に、メタロプロテアーゼ依存性感染経路の標的細胞の解析と阻害法の検討として、前年までの解析から同定されたメタロプロテアーゼ群と阻害タンパク質の発現プロファイルをThe Human Protein Atlas (https://www.proteinatlas.org/)等のデータベースを用いて解析し本感染経路を持つ組織や細胞種を推定して、その組織に由来する細胞株や初代培養細胞等を用いて本感染経路の有無を評価する。
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