研究課題/領域番号 |
23K06572
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49060:ウイルス学関連
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
三宅 康之 名古屋大学, 医学系研究科, 特任准教授 (10452294)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | インフルエンザウイルス / 脱殻 / TNPO1 / M1 / VP40 / ナノボディー / vRNPs / RNAポリメラーゼ |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトの感染症を引き起こすインフルエンザ、エボラ、デング、ジカといった多くのエンベロープRNAウイルスは、細胞内にエンドサイトーシスで取り込まれ、pH依存的にエンドソーム膜に融合、脱殻することで、細胞質内へ侵入する。ウイルスの細胞内への侵入の素過程における宿主因子の動態および機能の理解は、RNAウイルスの細胞内侵入のメカニズムだけでなく、将来的に宿主因子を標的とした新たな抗ウイルス薬の開発につながる。また、ウイルスタンパク質とその脱殻因子の共 (結晶)構造解析は報告が少なく、新たな宿主因子を標的とした創薬基盤として重要になると考えている。
|
研究実績の概要 |
インフルエンザウイルスの殻を構成するM1タンパク質とウイルスゲノム複合体vRNPsを各分節に解離する宿主因子TNPO1タンパク質の複合体解明を目指し、複合体として昆虫細胞内で共発現・精製し、クライオ電子顕微鏡により二次元平均化を試みたが、はっきりとした構造をとるタンパク質複合体は得られなかった。TNPO1単独精製産物についてもクライオ電子顕微鏡により観察を試みたが、その構造を平均化することは困難であった。その原因としては分子量が小さいためと考えられた。大腸菌発現系を用いて、TNPO1及びM1タンパク質を個々に発現・精製し、精製標品を得た。精製M1タンパク質を用い、ウイルス殻を模倣するフィラメント形成反応を試み、電子顕微鏡下でフィラメント様構造が確認され、その再現性を確かめている。今後、TNPO1を加えた際にこのフィラメント構造に形態変化が生じるか、中性、酸性条件下で検討する。 エボラウイルスの殻を構成しているVP40タンパク質を大腸菌内で発現・精製した。さらにNiNTA精製産物をゲル濾過クロマトグラフィーにより分離、精製した。その結果、高分子領域にVP40のシグナルが観察されたため、電子顕微鏡下でその形状を観察したが、フィラメントではなく、均一性をもった凝集体として観察された。現在、精製TNPO1とVP40を用い、その分子間相互作用を免疫沈降法で確認している。 インフルエンザウイルスゲノム複合体をin vitroで精製し、8分節複合体として高速原子間力顕微鏡下で観察された。8分節複合体が末端に結合しているRNAポリメラーゼを介して相互作用している様子が観察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
VP40タンパク質は第四種病原体由来であるため、実験の遂行には大臣確認が必要である。大臣確認申請を行い、使用承認されるまで時間を要した。VP40タンパク質を大腸菌体内で発現・精製した。ゲル濾過精製画分を電子顕微鏡下で観察したところ、フィラメントは確認されていないが、発現タンパク質が凝集していることが明らかとなった。また、この凝集は不溶性の凝集体ではないため、現在、緩衝液の条件を検討することによりフィラメント形成能を調べている。HIV-1由来のCAカプシドタンパク質は精製できているが、フィラメント再構成反応を試してもフィラメントは観察されていない。 インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼに対するアルパカ由来抗体の抗原認識ドメインであるナノボディを大腸菌内で発現・精製した。このナノボディを用いて、免疫電子顕微鏡によりウイルスゲノム複合体上でのRNAポリメラーゼの局在を確認している。ナノボディのポリメラーゼへの結合力を確認するために、ウイルス抽出液またはインフルエンザ感染細胞抽出液にナノボディを加え、免疫沈降法を試みている。ウイルス抽出液に含まれるRNAポリメラーゼには強固に結合しないという結果を得た。また、インフルエンザウイルスのM1タンパク質に対する抗体を用い、免疫電子顕微鏡法によりウイルスゲノム複合体への結合様式の詳細を調べている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、精製したインフルエンザウイルスのM1タンパク質及びエボラウイルスVP40タンパク質を用いて、試験管内でフィラメント形成する条件を検討している。今後もフィラメント形成条件を検討するとともに、宿主TNPO1との直接的な分子間相互作用を免疫沈降法により検出を試みる。これまでに宿主因子TNPO1と相互作用することが知られている因子との全長複合体構造は明らかにされていない。つまりTNPO1との全長複合体構造解析は困難な可能性が予想される。そこで、TNPO1と結合すると考えられているGPxxモチーフのGlycineを含むM1タンパク質のペプチド断片を発現・精製し、その相互作用および複合体解析を行う。TNPO1と相互作用する因子の全長複合体解析が困難である場合、VP40タンパク質においてもGlycineを含むループ領域のペプチド断片を発現・精製することで、相互作用および構造解析を試みる。 エンドソームからの脱殻直後のウイルスゲノム複合体を試験管内で再構成し、TNPO1による解離反応を定量的に示す。精製したウイルスゲノム複合体にRNaseを反応させ、RNAを分解した時に、RNAポリメラーゼ複合体のみが残るのか、高速原子間力顕微鏡で検討する。 インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼに対する抗体またはナノボディを用いて免疫電子顕微鏡観察することで、分節複合体の結合様式を明らかにし、論文発表する。8分節複合体形成がウイルス粒子内の酸性化によるものか否かの詳細を定量的に確認する。
|