研究課題/領域番号 |
23K06576
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49060:ウイルス学関連
|
研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
冨田 有里子 国立感染症研究所, インフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センター, 主任研究官 (90447342)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
|
キーワード | 薬剤耐性ウイルス / 宿主因子 / 新型コロナウイルス |
研究開始時の研究の概要 |
新型コロナウイルスに対し、培養細胞で抗ウイルス効果のある薬剤が複数報告された。これらの薬剤の作用機序や標的ウイルスタンパク質は多くが未解明である。申請者は、薬剤に対する耐性ウイルスを単離することができれば、その機能を詳細に解析することにより、薬剤の作用機序を明らかにできるだけでなく、宿主因子を含めたウイルス増殖機構解明に役立つと考えた。そこで本研究では、抗ウイルス薬に対する耐性ウイルスを複数単離し、変異の入った場所を指標に薬剤作用点の決定を行う。複数の薬剤について検証することで、作用機序の異なる薬剤を組み合わせた治療法の開発や、特異性の高い抗ウイルス薬開発に活用できる基盤情報取得が期待できる。
|
研究実績の概要 |
新型コロナウイルスの増殖機構に重要な宿主因子は不明な点が多く、抗ウイルス薬の開発を困難なものにしている。申請者は、培養細胞において抗ウイルス活性を持つ薬剤に対し耐性ウイルスを取得することができれば、その性状を詳細に調べることにより薬剤の作用機序のみならず、宿主因子を含めたウイルス増殖機構の理解に役立つのではないかと考えた。本研究課題1年目では、すでに抗ウイルス薬として認可されたモルヌピラビルに対する耐性ウイルスの分離を行った。まず、VeroE6TMPRSS2細胞を用いて細胞毒性の検証と薬剤の至適濃度を決定した。予備的結果から、オリジナルの野生型株を用いてパッセージを開始しても、耐性ウイルスは作出しづらいことが分かっていた。そのため、SARS-CoV-2に対して抗ウイルス活性のないファビピラビルや5-フルオロウラシル添加培地を用いて一定期間培養したウイルスストックを用いることで、オリジナルの野生型株に変異を導入し、多数の疑似的集団(quasi-species)にしたものをパッセージの開始材料とした。モルヌピラビル濃度を10μMから40μMまで段階的に増加させながら、ウイルスを9代までパッセージすることで、オリジナルの野生型株と比較して耐性を示すウイルスバルク集団を得た。得られたウイルスバルク集団からRNAを回収し、NGS解析を行ったところ、ウイルスゲノム上に複数のアミノ酸置換を伴う変異が蓄積すること、その数はパッセージの回数に伴い増加することが分かった。今後、詳細な性状解析を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目はウイルスポリメラーゼ阻害活性を持つモルヌピラビルに対する耐性ウイルス作出を行った。SARS-CoV-2に対して増殖阻害効果のない変異原、ファビピラビルや5-フルオロウラシル存在下で培養しquasi-speciesにしたウイルス集団を開始材料とし、VeroE6TMPRSS2細胞に感染させた。モルヌピラビルの濃度は、10μMから開始し、25μM、40μMと段階的に増加させながら、計9回のパッセージを実施し、モルヌピラビルに対して耐性を示すウイルスバルク集団を得た。今後、限界希釈法により分離したウイルスを用いて詳細な性状解析を行う。1年目の成果により、最適なウイルスパッセージの方法を策定できた半面、モルヌピラビル以外の薬剤に対する耐性ウイルス作出が手薄になった。2年目以降は、ゾコーバ、パキロビット等の薬剤についても耐性ウイルス作出を進める。
|
今後の研究の推進方策 |
モルヌピラビル以外の候補薬剤については、細胞毒性と至適濃度を決定後、耐性ウイルス作出を行う。パッセージはオリジナルの変異株の他、あらかじめ変異原で処理しquasi-speciesにしたウイルスストックを開始材料とする。薬剤濃度を段階的に引き上げながらパッセージを行い、耐性ウイルスを得る。1年目で取得したモルヌピラビル耐性ウイルスのバルクストックについては、限界希釈法により、単一のウイルスをクローニングし、原因変異を同定する。必要であれば、リバースジェネティクスにより単一の変異を持ったウイルス株の作製を行う。ウイルスの性状解析では、変異遺伝子の機能から推察される増殖ステップに焦点を当て、薬剤存在下でのウイルスタンパク質の局在や機能変化を検証する。薬剤依存的な挙動変化がみられる場合は、阻害される機能を特定し、増殖ステップを絞り込む。一方、挙動変化がみられない場合は、間接的な薬剤作用の可能性を考慮し、関連するウイルスタンパク質や宿主因子の局在・発現を調べる。また、挙動変化がみられないウイルスタンパク質については、ウイルスタンパク質の機能から推察される増殖ステップ以降に薬剤が作用する可能性も考慮した上で解析を進める。
|