研究課題/領域番号 |
23K06613
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
布川 朋也 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 講師 (70564342)
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研究分担者 |
大豆本 圭 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (10745516)
佐々木 雄太郎 徳島大学, 病院, 助教 (10866156)
二川 健 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (20263824)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | がん悪液質 / 悪液質 / エクソソーム |
研究開始時の研究の概要 |
がん悪液質は、がん治療に対する抵抗性、有害事象の発生に関与し、治療成績向上の大きな障害となっている。がん悪液質に対する有効な治療法は確立されておらず、その発症機序の解明と新たな治療法の開発が喫緊の課題となっている。 申請者らは、先の研究で筋細胞内における代謝変化が悪液質における筋萎縮の発生に深く関与することを証明したが、これらの代謝変化が発生する機序は解明されていない。 本研究では、がん細胞増殖の過程で起こる代謝変化がエクソソームを介して筋細胞内代謝に与える影響を明らかにし、その成果を基に、がん悪液質に対する新たな治療法の開発などの臨床応用につなげることを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、がん悪液質の誘導因子としてエクソソームに着目している。 まず、がん細胞株由来エクソソームが筋細胞に与える影響について検証した。ヒト骨格筋細胞を分化誘導したのちに、悪液質誘導腎がん細胞株(RXF393)と悪液質非誘導腎がん細胞株由来のエクソソームを添加し、がん細胞由来エクソソームが筋萎縮を誘発するか検証した。その結果、RXF393細胞由来エクソソームの添加により筋管の萎縮が認められた。また、RXF393細胞由来エクソソームの添加により、筋細胞のミトコンドリア内におけるROS発生の亢進が確認された。続いて、ミトコンドリア内代謝変化を確認するためにクエン酸回路に対するがん細胞株由来エクソソームの影響を検証した。その結果、RXF393細胞由来エクソソームの添加時のみ、筋細胞内のクエン酸回路中の代謝酵素であるイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(Isocitrate dehydrogenase 2:IDH2)の発現低下が認められた。また、エクソソーム内の悪液質を誘導する因子の同定を目的にmiRNA解析を行った。その結果、悪液質誘導腎がん細胞株由来のエクソソームで発現が上昇しており、また、IDH2の発現低下を誘導する可能性のある因子としてmiR-1260bを同定した。筋細胞にmiR-1260b mimicを添加した結果、RXF393細胞由来エクソソームを添加した場合と同様に、IDH2の発現低下が認められた。一方で、RXF393細胞由来のエクソソームとmiR-1260b inhibitorを同時に添加した場合には、エクソソームによるIDH2発現低下の回復が認められた。加えて、筋細胞にmiR-1260b mimicを添加したところ、筋細胞の筋管萎縮が認められた。 以上の結果から、がん細胞から分泌されるエクソソーム内因子によるIDH2発現制御を介したがん悪液質発症への関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
エクソソームによる筋細胞内代謝の変化ががん悪液質における筋萎縮につながっていることを示すことができている。また、その仲介分子としてのmiRNAの同定も進んでいる。一方で、薬物スクリーニングも基礎とした薬物による治療法の開発に向けての試みは順調には進展しておらず、全体としての進捗状況はやや遅れていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究にて明らかになったミトコンドリア内代謝変化とROSの発生の関連についての検証を行い、筋細胞内ミトコンドリア代謝変化による筋萎縮発症メカニズムについて明らかにする。 がん由来エクソソーム内のmiRNAによる筋萎縮への影響を明らかにするために臨床検体を用いたmiRNA解析を行い、悪液質発症との関連について明らかにする。 本研究で認められた筋細胞ミトコンドリア内代謝変化を悪液質動物モデルを用いて検証する。
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