研究課題/領域番号 |
23K06621
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
佐久間 圭一朗 近畿大学, 農学部, 教授 (90402891)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 大腸がん / 転移 / p120-カテニン / アイソフォーム |
研究開始時の研究の概要 |
p120-カテニンはCTNND1遺伝子によってコードされるタンパクである。p120-カテニンには32種類にも及ぶアイソフォームが存在するが、その機能的な棲み分けは未解明の点が多い。研究代表者は、大腸がん細胞の上皮間葉転換に伴ってp120-カテニンのアイソフォーム3ABの減少とアイソフォーム3Aの増加を認めること、アイソフォーム3Aはがん細胞の浸潤を促進することを見出した。 本研究の目的は、①p120-カテニンのアイソフォーム変換による浸潤促進機序を明らかにすること、②アイソフォーム3Aの治療標的としての有効性を検証することである。
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研究実績の概要 |
大腸がん細胞の上皮間葉転換に伴い、p120-カテニンのアイソフォーム3AB(以下p120ctn-3AB)の割合が減少し、アイソフォーム3A(以下p120ctn-3A)の割合が増加する。p120ctn-3Aは大腸がん細胞のleading edgeやprotruding edgeへの局在を示すこと、p120ctn-3Aを特異的にノックアウトすると大腸がん細胞のマトリゲル浸潤能が有意に減少することから、本研究課題ではp120ctn-3Aによる浸潤促進機序の解明を目指している。
当該年度は、p120ctn-3Aがleading edgeやprotruding edgeに局在するメカニズムの解明に取り組んだ。p120ctn-3Aとp120ctn-3ABのアミノ酸配列の相違はエクソンBのみに依存することから、同エクソンのアミノ酸配列中に存在するモチーフをELM resourceを用いて検索した。さらに、検出された候補モチーフの中でp120ctn-3Aの全長中に検出されないものに絞り込んだところ、①核外移行シグナルのコンセンサス配列ならびに、②アダプタータンパクと結合が予測される配列が抽出された。
p120ctn-3Aのleading edgeやprotruding edgeへの局在をもたらす要因として、①よりも②の関与が大きいと予想された。そこで、②で検出されたアミノ酸配列の一部にELMでアダプタータンパク結合配列として検出されなくなるような変異を導入し、蛍光タンパクAcGFPを融合したmutant p120ctn-3AB-AcGFPを大腸がん細胞株DLD-1に強制発現して局在を観察した。結果、高率にleading edgeやprotruding edgeへの局在が認められた。以上の結果から、p120ctn-3Aとp120ctn-3ABの局在の違いに②が関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究成果は本申請課題の目標の1つであるp120ctn-3Aの特徴的な局在のメカニズム解明につながる発見であると考えられるため、研究初年度の進展状況としては順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で述べた通り、p120ctn-3Aのleading edgeやprotruding edgeへの特異的な局在は、p120ctnのエクソンBのアミノ酸配列が内包するアダプタータンパク結合予測部位に依存することが示唆された。
次年度は、当該部位によるp120ctn-3Aの局在制御がアダプタータンパクに依存するものかどうかを解明する。アダプタータンパクは4つのタンパクから構成される複合体であり、AP1からAP5の5種類が報告されている。それぞれの複合体とp120ctn-3ABとの結合や、ノックアウトによるp120ctn-3ABの局在変化などを検討する。
アダプタータンパクとp120ctnエクソンBの結合自体はp120ctn-3ABがleading edgeやprotruding edgeに局在しない理由を説明するものではあり得ても、p120ctn-3Aが同部位に局在する理由を直接説明するものではない。1つの作業仮説として、アダプタータンパクとエクソンBの結合が、p120ctnをleading edgeやprotruding edgeへ移行させるのに必要なタンパクとの結合を阻害している可能性を想定している。次年度は、この作業仮説についても検証を進めたい。
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