研究課題/領域番号 |
23K06635
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
住本 秀敏 滋賀医科大学, 医学部, 特任講師 (00306838)
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研究分担者 |
醍醐 弥太郎 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (30345029)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | EGFR / 肺癌 / ケモカイン / 免疫療法 / エピジェネティック |
研究開始時の研究の概要 |
EGFR変異肺癌における免疫チェックポイント阻害剤(ICI)への耐性克服法の開発を目指す。EGFR変異肺癌では腫瘍内CD8+ T細胞数の減少が耐性に関与する可能性があり、EGFRシグナルがHDAC活性を誘導する結果、肺癌細胞からのケモカイン産生をエピジェネティックな機構で抑制することより、これがCD8+ T細胞数減少に関与していると考えた。本研究では、この機構が生体内で腫瘍内CD8+ T細胞の減少に関連し、HDAC阻害剤とICIを併用することでCD8+ T細胞数の回復とICI耐性からの克服が可能であることを、EGFR変異腫瘍を用いたマウス治療モデルにより検証する。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、(1)「EGFR変異癌のマウス同系腫瘍モデルを用いた解析」と(2)「ヒトEGFR変異肺癌の免疫不全マウス移植腫瘍モデルを用いた解析」の構築に取り組んだ。 (1)に関しては、マウス大腸癌細胞株(CT-26, MC38)にヒト変異EGFR発現レトロウイルスベクターを感染させ、ヒト肺癌株と同様にケモカイン発現が、EGFRシグナルで抑制されるか検証した。ケモカイン発現はmock感染細胞よりEGFR発現細胞で抑制されていたが、EGFR-TKI処理により発現回復は得られなかった。異なるマウス細胞株(4T1(乳癌), EMT6(乳癌), RENCA(腎細胞癌))に拡張して検証したが、同様にヒト肺癌と同じ表現型は観察できなかった。そこで、ヒトEGFR下流のscaffold proteinであるPBXIP1がマウスで欠損していることが原因である可能性を考え、ヒトPBXIP1 cDNAを変異EGFR発現マウス癌細胞に導入後、EGFR-TKIによるケモカイン発現回復を検証したが、ヒト肺癌の表現型は再現できなかった。以上より、マウス癌細胞株にヒトEGFR遺伝子を発現させることでヒトと同様の性質を持たせることは困難と判断し、この実験系は断念した。 次に(2)の実験系の構築として、ヒト悪性黒色腫抗原のMART-1発現レトロウイルスベクターを構築し、ヒトEGFR変異肺癌細胞株PC-9へ感染させたが、MART-1は低発現だったため、標的抗原をNY-ESO-1へ変更した。NY-ESO-1を発現するレンチウイルスベクターを構築し、PC-9細胞へ感染後、良好な発現が確認できた。今後、HLA-A2拘束性のNY-ESO-1反応性T細胞受容体発現レトロウイルスベクターを構築し、ヒトCD8+T細胞へ感染させてNY-ESO-1+ PC-9細胞株への細胞傷害活性を確認し、動物モデルへ進む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記実績報告にあるようにマウス動物モデルの構築がまだ果たせていない。マウス同系腫瘍を用いた同様の先行研究があるが(Sci Immunol, 2020)、同じ癌細胞株(MC38)を用いても再現性は得られなかった。計5種類までマウス癌細胞株を拡張して検証したが単にEGFRを強制発現させるだけでは、表現型の再現は得られなかった。そこで、よりヒトのシグナル伝達系に近づけるためにEGFR下流のscaffold proteinのPBXIP1(シグナル伝達に必須とされる)の強制発現を試みたが、これでも叶わなかった。原因は不明であるが、de novoの肺癌とは異なる文脈で癌化した細胞に別のドライバー遺伝子を発現させても肺癌と同じではないものと考える。 別の実験系としてヒト肺癌細胞株に標的抗原を発現させて、それに対するCTLを用いた養子免疫療法の実験系の構築を並行して進めた。最初にMART-1を標的抗原とする系の構築を試みたが、レトロウイルスベクターでは発現が弱く、MART-1特異的CTL誘導も養子免疫に用いるには低頻度であり、MART-1 TCR発現系の構築もベクター入手困難のため、NY-ESO-1に抗原を変更して進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
NY-ESO-1を肺癌細胞株へ強制発現させることに成功したため、NY-ESO-1 TCRレトロウイルスベクター(入手済み)を用いてヒトCD8+T細胞への遺伝子導入を行い、NY-ESO-1特異的細胞傷害活性が得られることを検証する。さらに、免疫不全マウスの移植モデルの構築、NY-ESO-1特異的CD8+T細胞の養子免疫によるin vivoの実験系の構築へと進む。さらに、EGFR阻害やHDAC阻害に伴う肺癌細胞からのケモカイン発現回復が養子免疫による抗腫瘍効果を増強するか否か、さらにはPD-1抗体による治療効果を増強させるか否かの検証に進んでいく予定である。
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