研究課題/領域番号 |
23K06642
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
中田 晋 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (80590695)
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研究分担者 |
飯居 宏美 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (00597768)
藤田 貢 近畿大学, 医学部, 准教授 (40609997)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 膠芽腫 / 膠芽腫幹細胞 / GGCT / Notch1 / がん幹細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
膠芽腫の予後は極めて不良であり、グルタチオン代謝に関与するγ-グルタミル回路を構成する酵素GGCTの遺伝子座増幅が報告されている。我々は、独自に樹立したマウス膠芽腫由来幹細胞においてGGCTを阻害すると、Notch経路を含む幹細胞制御経路因子の発現が抑制され、腫瘍形成能が顕著に抑制される新規知見を見出してきた。これらの結果は、膠芽腫幹細胞の増殖と腫瘍形成能にGGCTが必須であることを示している。本研究では、膠芽腫幹細胞のGGCT阻害によるNotch経路因子の抑制メカニズムを解明し、GGCT阻害による膠芽腫幹細胞を攻撃する新規治療戦略を創出する。
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研究実績の概要 |
GGCT遺伝子増幅が報告されている膠芽腫に着目し、マウス膠芽腫発がんモデルを用いてGGCT阻害による発がん抑制能の検討をin vivoで行った。その結果、GGCTの安定的ノックダウンは、本膠芽腫幹細胞の腫瘍形成能を阻害することを明らかにした。また、独自のマウス膠芽腫発がんモデル由来幹細胞を用い、GGCTノックダウンによりNotch1発現が低下が、その表現型に対する直接的寄与を実証を試みた。その結果、Notch1の単独ノックダウンは本膠芽腫幹細胞の増殖を有意に抑制することを明らかにした。さらに、Notch1の細胞内ドメインであるNICDを安定的に強制発現する系を確立し、GGCTノックダウンによる増殖抑制を回復させることを実証した。これらの結果は、Notch1タンパク質の減少が、GGCTのノックダウンによる増殖抑制効果という表現型に対して、実質的に貢献していることを示している。現在、GGCT阻害によるシステイン枯渇に関する解析を行っている。GGCTは、システインを含むγグルタミルジペプチドから細胞内アミノ酸を供給するサルベージ回路を構成する。従って、GGCT阻害によるシステイン枯渇が細胞内アミノ酸代謝ストレスを惹起しており、幹細胞制御経路因子のタンパク質合成を障害していることが実証できれば、全く新しいがん代謝を標的とした治療戦略に繋がる可能性がある。そこで、質量分析技術を用いた細胞内システインの測定を鋭意進めている。さらに現在、新たなる展開として、がん細胞におけるGGCTの高発現の原因となっている転写因子を探索し、GGCTプロモーターに対する影響の解析を進めている。その結果、GGCTの発現は、NRas変異体のノックダウンで減少すること、Ras下流のAP1転写因子群によって制御を受けることを明らかにしており、現在GGCTプロモーターへの直接的影響の解析を鋭意進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス膠芽腫発がんモデルを用いてGGCT阻害による発がん抑制能の検討をin vivoで行なって、GGCTの安定的ノックダウンが本膠芽腫幹細胞の腫瘍形成能を阻害することを明らかにした。また、独自のマウス膠芽腫発がんモデル由来幹細胞を用い、GGCTノックダウンによりNotch1発現が低下が、その表現型に対する直接的寄与を実証を試みて、Notch1の単独ノックダウンは本膠芽腫幹細胞の増殖を有意に抑制することを明らかにした。さらに、Notch1の細胞内ドメインであるNICDを安定的に強制発現する系を確立し、GGCTノックダウンによる増殖抑制を回復させることを実証した。これらの結果は、Notch1タンパク質の減少が、GGCTのノックダウンによる増殖抑制効果という表現型に対して、実質的に貢献していることを示している。さらに現在、新たなる展開として、がん細胞におけるGGCTの高発現の原因となっている、Rasがん遺伝子下流の転写因子について探索し、GGCTプロモーターに対する制御機構の解析を進めている。その結果、GGCTの発現は、NRas変異体のノックダウンで減少すること、Ras下流のAP1転写因子群によって、促進性の制御を受けることを明らかにしており、これによるGGCTプロモーターへの直接的影響の解析を鋭意進めている。これらの実験遂行状況と成果から、概ね順調に推移していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、がん細胞におけるGGCTの高発現の原因となっている、Rasがん遺伝子下流の転写因子について探索し、GGCTプロモーターに対する制御機構の解析を進めている。その結果、GGCTの発現は、NRas変異体のノックダウンで減少すること、Ras下流のAP1転写因子群によって、促進性の制御を受けることを明らかにしており、これによるGGCTプロモーターへの直接的影響の解析を鋭意進めている。一方、Notch1強制発現によって影響を受けるシグナル伝達系に対する介入を行い、その寄与を明らかにする。予備実験で見いだしているHedgehog経路、AMPK、FoxO3a等の代謝変容への適応に寄与する因子の、Notch1発現制御への貢献度を検証し、インフォマティクスの成果に応じて解析対象を拡大する。さらに、システイン枯渇に伴う活性酸素(ROS)代謝の破綻による細胞ストレスについて解析を行う。この根拠となるのが、GGCTの阻害によってAMPKの活性化が生じる点である。AMPKはミトコンドリア代謝障害によるROSの増加によって活性化を受けるため、この関与について検証し、GGCT枯渇によるROS代謝破綻を実証する。マウス膠芽腫発がんモデルを用いて、GGCT阻害剤の全身投与による治療効果の検討をin vivoで進め、病理組織学的検討により、生体内腫瘍組織におけるNotch経路阻害を実証する。特に、核内NICDタンパク質発現量の解析と、さらにバイオインフォマティクスでみいだした新規下流標的遺伝子のタンパク質発現の変動について解析し、GGCT阻害による新規治療戦略の確立に繋げる。
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