研究課題/領域番号 |
23K06654
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
工藤 道弘 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (20804264)
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研究分担者 |
大辻 英吾 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20244600)
塩崎 敦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40568086)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 癌幹細胞 / ミトコンドリア / 癌標的治療 / イオン輸送体 / カルシウムイオン / 大腸癌 |
研究開始時の研究の概要 |
大腸癌細胞の中に少数含まれる癌幹細胞は再発や悪性度に関与するとされるが、化学、放射線療法などに耐性を示すとされる。当研究室では、癌幹細胞で細胞内の細胞死に関与する器官であるミトコンドリアの表面に、MCUBというタンパクが高発現していることをつきとめた。MCUBはMCUというカルシウムイオンの調整に関連するトランスポーターの1構成タンパクであり、MCUの発現を抑制する作用を持つ。MCUは細胞死に強く関与することから、癌幹細胞の治療抵抗性にMCUBが強く関与しているという仮説を構築した。本研究は、これらMCUやMCUBを標的とした、癌幹細胞標的治療が実現できないかを試みることを目的としている。
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研究実績の概要 |
大腸癌幹細胞においてMCUBが細胞死耐性に関与しているという本研究の仮説を裏付けるため、他癌腫においてもMCUBの発現強度が上昇していることを調査することとした。まず食道癌、胃癌、肝癌における癌幹細胞を網羅的遺伝子解析に提出、解析データはすでに獲得している。さらに胆道癌においても、癌幹細胞株を樹立するため、胆道癌細胞株における、CD44陽性細胞をcell sorterで抽出し、新たに胆道癌細胞株由来の癌幹細胞を樹立、これを網羅的遺伝子解析に提出した。すべての遺伝子解析結果が判明次第、MCUBのみだけではなく、MCU, MCUR1, EMREなどの関連遺伝子の発現が変化しているかどうかを検討する予定である。 一方で不随研究として、カルシウムイオンが大腸癌に重要な役割を果たすかの調査を進めていたところ、カルシウムイオン輸送体であるCACNA2D1が大腸癌幹細胞で高発現しており、これが癌周囲の間質成分の分布と強く関与しており、癌周囲のmicroenvironmentに関連していることが判明した。癌幹細胞とmicroenvironmentとの関連性は以前から広く報告されており、これもカルシウムイオンが癌幹細胞の悪性度に関与している一因となっているのではないかと推測される。 今後は、癌幹細胞の各癌腫の遺伝子解析を確認した後、実際のMCUBの解析に移る予定であり、MCUBの大腸癌組織検体に対する免疫染色や、 MCUB siRNA,plasmidを用いてknockdown overexpressionするassayから進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記載した研究内容の項目はこれから本格的に開始していく予定であるが、一方で前述した新たな癌幹細胞での樹立や、新たな遺伝子解析のデータがすでに存在し、背景の確認に必要なデータがそろいつつある。さらには、他遺伝子とはなるがカルシウムイオンの重要性を示唆する様な研究結果も判明し、そのデータについては論文化にも成功している。したがって、おおむね順調にすすんでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
背景のデータがそろいつつあるため、癌幹細胞標的治療の実現のため本格的な薬剤投与までの実験を次の1年間で進めたいと考えている。 まずはMCUBの大腸癌組織検体における免疫染色を行い、この発現と臨床因子との関連性の評価を行う。また癌幹細胞におけるMCUBの発現調整を行った際の細胞生存性の評価も行う。 今回の仮説において最も重要な点はMCU complexを標的とするフラボノイドの一種であるKampferolを使用した際に、癌幹細胞の治療抵抗性が解除され化学療法の効果の相乗効果が得られるという点であり、これは臨床的使用も検討できる薬剤である。このKampferolの薬剤使用にあたり、濃度設定や薬物容量曲線などの作成を行う準備を進める必要がある。in vitroでの濃度設定、使用の検討、さらにはin vivoでの使用も考慮しており、ヌードマウスの使用における条件設定などを平行して進め、実験系の確立を進める。 これらの計画を十分に実験担当者と少なくとも1月単位でカンファレンスを行いながら、スムーズに実験検証を進め、最終的に学会報告や論文報告を目指す予定である。
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