研究課題/領域番号 |
23K06671
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
佐々木 宗一郎 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (50583473)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 乳がん / 骨転移 / 線維芽細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
乳がん骨転移過程でのB細胞の病態生理学的役割と、B細胞をはじめとする骨内の正常細胞とがん細胞との局在と相互作用の解明を目指す。具体的には、骨髄内がん直接接種モデルを用いて病態生理学的役割を明らかにし、臨床検体の結果と合わせて生理学的な意味づけを行う。 これまでの解析から骨転移において重要な細胞集団である線維芽細胞の集積にもB細胞が関与している可能性があるため、その点からも解析を行う。 さらに組織透明化技術を用いて3次元的な骨転移微小環境の解析を行い、骨転移における正常細胞と腫瘍細胞との相互作用の包括的な解析を行う。
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研究実績の概要 |
骨転移は進行期の乳がん患者に好発するが、現在の治療法は対症療法にとどまり腫瘍細胞を直接的に障害する新たな治療法の開発が強く望まれている。研究代表者は、自らが確立したマウス乳がん自然骨転移モデルの解析から、骨内における乳がん細胞と線維芽細胞との相互作用が骨転移形成過程に重要な役割を果たしていることを明らかにした。骨髄内への線維芽細胞の集積機構に着目して解析を進めたところ、線維芽細胞の制御に重要な役割を果たしている細胞集団としてB細胞を見出した。そこで本研究ではB細胞による骨髄内への線維芽細胞の集積機構に着目し、骨転移過程におけるB細胞の役割を明らかにすることを目的とした。 まず臨床的に多くの骨転移を併発するルミナール型の細胞株であるE0771細胞を用いて新たな骨内接種モデルの条件検討を行った。既存の方法と比較して骨髄内での腫瘍増殖速度が緩やかとなり、生理的な骨転移発症に近い条件での検討が可能になると考えられた。 このモデルを用いて腫瘍接種後にB細胞を枯渇し、B細胞が骨内の腫瘍増殖へ与える影響を検討したところ、B細胞枯渇によって骨髄内での腫瘍増殖は亢進した。腫瘍増殖へのB細胞を介した直接的な関与を明らかとするために、全骨髄細胞からB細胞集団をフローサイトメトリー法にて回収し腫瘍細胞と共培養を行った。B細胞との共培養による腫瘍増殖促進効果は確認されなかった一方、B細胞枯渇によってI型コラーゲンを発現する細胞の骨髄内への集積促進が確認された。 以上の結果は、骨転移過程に確認された骨髄内への線維芽細胞集積において、B細胞が重要な役割を果たしていることを示唆していた。一方、B細胞による直接的な腫瘍増殖促進への関与は認められなかった。現在、B細胞を介した骨内への線維芽細胞集積機構についての解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4T1を使用したこれまでの骨転移モデルでは骨転移発症までの期間が短く、転移初期における骨微小環境との相互作用の検討が困難であった。より臨床的な条件に近い骨転移モデルでの検討を行うために、ルミナール型のマウス乳がん細胞株であるE0771細胞株を用いて、新たな骨髄内腫瘍接種モデルを樹立した。このモデルではの4T1細胞株を使用した骨転移モデルに比べ骨転移巣形成までより長い時間を要するために、骨微小環境の影響を強く反映した骨転移過程の検討が可能となった。 新たなモデルを用いた結果より、骨髄内のB細胞が骨転移巣形成に抑制的に機能していることが示唆された。さらに、骨髄内のB細胞は、骨転移巣形成時に見られる骨髄内への線維芽細胞集積を負に制御している可能性が示唆された。 一方、骨髄内から分離したB細胞を用いて腫瘍細胞と共培養を行ったが直接的な腫瘍増殖への関与は認められず、B細胞による腫瘍増殖能への寄与は明らかとなっていない。 以上の解析はB細胞との骨転移との解析を進めるために、初年度に実施を予定していた研究計画に準ずる。したがって、本研究は当初に予定していた実験計画におおむね沿った進行具合であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討より、骨転移巣形成時に確認される骨髄内への線維芽細胞の集積に対し、B細胞が直接または間接的に負の制御をしていることが示唆された。今後は、以下の検討を中心に検討を行う。 1. 成熟B細胞を欠損したμMTマウスを用いた検討 2. CXCL12-CXCR4の制御による成熟B細胞の骨髄内からの排出ならびに骨髄内への滞留制御による検討 上記の動物モデルによって、B細胞の骨転移巣形成への関与に加え、線維芽細胞の骨内集積への関与も検討する。B細胞による腫瘍増殖への関与をより明確にするために、線維芽細胞・腫瘍細胞との共培養系での検討を行う。骨類似環境である、低酸素・低栄養・足場非依存などの培養条件を追加することで、生理的に近い条件下での検討も行う。 B細胞の機能解析については、フローサイトメトリー法にてB細胞を回収後に、包括的な遺伝子解析を行い、B細胞と線維芽細胞の相互作用の可能性を明らかにする。 以上の解析より乳癌の骨転移におけるB細胞、線維芽細胞、腫瘍細胞との相互作用ならびに関連分子の分子機構を明らかにし、骨転移に対する新規治療法開発への足掛かりとする。
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