研究課題/領域番号 |
23K06676
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
藤村 篤史 岡山大学, 医歯薬学域, 研究准教授 (10771082)
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研究分担者 |
増本 年男 鳥取大学, 医学部, 助教 (40715083)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | メカノトランスダクション / 翻訳制御機構 / 腫瘍生物学 / 創薬標的 / メカノバイオロジー / 乳癌 |
研究開始時の研究の概要 |
メカノトランスダクションは細胞の性質に大きな影響を与える要素である。これまでに、メカニカルストレスがどのようなシグナルを惹起するのか、また、どのような転写因子が表現型を決定づけるのかについて深く広く研究がなされてきたが、転写と同様に重要な翻訳過程とメカニカルストレスとの関連については、十分に理解されていない。本研究では、メカノトランスダクションによる遺伝子発現過程における翻訳機構の関与を解析し、その詳細な分子機構とがん進展における影響を検証し、さらに、それに基づく制癌戦略の構築を試みる。
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研究実績の概要 |
本研究においては、メカノトランスダクションによる遺伝子発現過程において翻訳制御機構がどの程度関与するのかを、分子生物学的および生化学的手法を駆使して、その詳細な分子機構とがんの進展に与える影響を検証することを目的としている。主な研究対象は乳がんを想定している。さらに、本研究で解明した分子機構にがん特異性が見出せるか否かを慎重に解析し、可能であればそれを標的とした抗がん剤の開発に着手することを目指す。令和5年度までに取り組んだ研究によって、メカノストレスによって制御を受ける翻訳因子を同定することに成功している。また、その活性を規定する周囲の分子機構についても解析が進められている。例えば、当該翻訳関連因子が実際に細胞骨格とどのような相互作用をしているのかといった内容を、電子顕微鏡を駆使した生化学的なアプローチによって解析している。さらに、上記の翻訳関連因子およびその関連分子機構に関して、実際にそれらががん細胞において有効に機能していることを、乳がん細胞株を用いて実証できている。全体を通して、当初の研究計画以上に順調な進捗が得られており、最終年度までに当初の目標を達成できる見込みである。令和6年度以降は、令和5年度までに得られた知見に基づき、我々の発見した翻訳制御機構にがん特異性があるか否かを検証し、創薬標的としての妥当性が十分に高いと判断できれば、主に低分子化合物ライブラリを念頭に、スクリーニング系の構築を目指す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の核心をなす学術的な「問い」として、(1)メカノ応答性シグナルによる翻訳過程の制御機構の中心的分子は何か? (2) 翻訳機構の効率がメカノ応答性シグナルを修飾することはあるか? (3) 翻訳機構ーメカノトランスダクション連関は制癌戦略の構築に寄与するか?の3点が設定されている。令和5年度には、主に、「メカニカルストレスと翻訳過程とが相互連間する分子機構の解明」と「メカニカルストレスによって翻訳制御を受ける遺伝子の機能解析」に取り組んでいる。前者の進捗状況としては、メカニカルストレスがメカノ応答性シグナルを惹起し特定の表現型を発現させる因子として、特定の細胞骨格に着目し、実際に、それらの細胞骨格に対する阻害剤の処置によって、特定のmRNAの翻訳効率が著しく減弱することを確認している。さらに、その中心因子である特定の翻訳関連因子について、truncated mutantsを作成し、どの領域がメカノ応答性に関与しているのかを確認している。さらに、電子顕微鏡を用いて、それらの直接的な相互作用を解析することに成功している。後者の進捗状況としては、メカノ応答性に翻訳制御を受けるmRNA群の一部に関して、siRNA等を用いてノックダウン実験を行い、細胞の振る舞いについて解析を進めた。その結果、細胞増殖や細胞浸潤、あるいは細胞運動能が影響を受けていることが確認された。令和6年度以降は、これらの知見をさらに確認する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度以降は、令和5年度までに明らかにした知見に基づき、さらにその詳細な分子機構を解明することを目指す。すなわち、「メカニカルストレスと翻訳過程とが相互連関する分子機構の解明」に関しては、我々がすでに同定している翻訳関連因子と特定の細胞骨格との連関について、具体的な結合様式を分子生物学的および生化学的手法を駆使して解析を進める。また、「メカニカルストレスによって翻訳制御を受ける遺伝子の機能解析」に関しては、これまでに解析を進めてきたmRNA以外にも解析の対象を広げ、実際に機能的な分子制御を受ける遺伝子群を抽出することに努める。これらの遺伝子群に関して、特にがん進展で重要と思われるものを複数ピックアップし、それらのノックダウンあるいはノックアウト細胞を樹立し、それらのin vitro解析を進めるほか、xenograftモデルマウスを作成してin vivoでの機能を網羅的に解析することを目指す。さらに、前述の2項目を受けて、令和6年度内に「解明した分子機構に基づく制癌戦略の構築が可能か否かの検証」に着手することを目指す。この項目を進めるために重要な要素は、メカノトランスダクションと翻訳機構の相互連間を規定する分子機構において、いかにがん特異性を見出せるかということである。これを解析するために、例えば、我々がすでに同定した翻訳関連因子に関して、その翻訳後修飾の様式を、正常細胞と癌細胞とで比較することなどを想定している。
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